創業150年を誇る酒蔵「竹下本店」。竹下登・元首相の生家でもある老舗酒蔵も、日本酒の市場縮小で生産量の縮小を余儀なくされていました。そこに、三菱商事・スタンフォードMBAを経た、日本酒応援団・代表取締役・古原忠直氏を始めとした4人の日本酒好きが、眠っていた酒蔵を復活させ、究極の日本酒造りに挑戦。そのビジネスモデルの裏にある、ファブレスの仕組みを紐解きます。

日本酒応援団株式会社 

「日本酒が、大好き!」強い思いで結成された、日本が誇る商品・文化として日本酒を応援する会社。2015年に株式会社化。掲げるミッションは「日本酒のあるライフスタイルを、世界中に。」
従業員数はまだ少数ながらも、世間でも注目を浴びるユニークなビジネスモデルと、本物の日本酒の味で、そのミッションの達成へと邁進している。

記事のポイント

  • 眠っていた酒蔵を復活させて仕込む、土地オリジナルの日本酒
  • ファブレス型の生産体制を全国に分散させ、増やしていく
  • 「純米・無ろ過・生・原酒」本当においしい日本酒で、日本酒市場そのものの拡大を目指す

眠っていた酒蔵を復活させて仕込む、土地オリジナルの日本酒

編集部スタッフがはじめて日本酒応援団に出会ったのは、2016年1月。場所は、竹下登・元首相の生家である酒蔵「竹下本店」でした。

竹下本店は、島根県の掛合(かけや)にある、150年の歴史を持つ老舗酒蔵です。しかし、近年日本酒市場は縮小しており、なんと1998年~2015年の間でなんと半減。国内出荷量は、2010年には1100万klだったものが、2015年にはその半分以下の550万klにまで減少しています。需要減に伴い、全国にある老舗の酒蔵でも出荷量を減らさざるを得ない状況が続いていると同時に、若者の日本酒離れ・杜氏(酒造りのプロフェッショナル)の高齢化にともなって、造り手そのものも大きく減っているのが現状です。

出典:「日本酒をめぐる状況」農林水産省 2016年

http://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/pdf/07shiryo_04.pdf

竹下本店で使われていない酒蔵が眠っているなら、それを活用して自分たちが飲みたい究極の日本酒を造りたい…そんな酒好きたちの想いから始まった「みんなで日本酒を作るクラウドファンディング」にたまたま参加したのが、日本酒応援団に出会うきっかけでした。日本酒応援団のメンバーと、クラウドファンディングで集った一般の参加者が、眠っていた酒蔵を復活させて作った3,000本のお酒は、わずか2カ月で完売。この反響で「本当においしい日本酒なら、若い人にも受け入れられる」という確信を持ち、法人化したという経緯をもつ珍しいスタートアップです。

日本酒応援団が面白いのは、スタートアップでありがちな、商品企画を手がけるだけ、販売するだけといったビジネスモデルではないこと。もう使われなくなってしまった眠った酒蔵を利用して自らが蔵人として造りの現場に入り新規に地元産の酒を製造し、日本酒の生産量そのものを増やす取り組みに注力しているのです。