日本において稀有な存在である「経洗塾」。それを築きあげたのは井上智央という男である。彼が、経洗塾を作り上げてまで、実現したい世界とは、そしてそこにある未来とは。

経洗塾

株式会社キャンバスプロジェクトが運営する、新規ビジネスを0からスタートする人向けの起業家塾。シードベンチャー創出に特化した独自のプログラムを展開。卒塾生は軒並み資金調達に成功しており、そのプログラムに注目が集まっている。

記事のポイント

  • アメリカと日本のビジネス上の違い
  • 日本におけるシードベンチャーの必要性
  • 誰もがフラットに野望を口に出せる世界

シードベンチャーが日本を変える

ーアメリカに長くおられたということですが、アメリカと日本では、ビジネス上の違いはどういうところにありますか?

一つはベンチャーファイナンスです。アメリカでは、日本ほどベンチャーのための間接金融*が身近な存在ではないです。売り上げと利益が出てないところには間接金融の融資がおりません。加えて、アメリカは少子高齢化の世界ではないので、融資したくないところに金融側の担当者が頑張って融資したり、ローカルの行政主導で創業率や創業数を上げたりする必要がないんですね。もちろん、国策としてのベンチャー育成に関してのアメリカは先進的ですが。
もう一つは、宗教です。キリスト教をベースに、周りに対してお金で助けることが宗教上の文化として存在しています。日本のように、金融機関だけがベンチャー的な考え、野心を持っている人を応援しているのではなく、国全体、国民全員投資家的な感じです。あとは、各教会に寄付・投資文化が成立していたり、大学毎にアルムナイという卒業生組織が、大学内で起業を志す学生に対して、投資家を探すコーディネートを行っていたりします。

*間接金融:「お金を貸す人」貸し手と「お金を借りる人」借り手の間に、第3者が存在する金融取引のこと

ー井上さんの信念として、アメリカ的な起業文化やビジネス感を日本に植えつけたいという思いはあるのですか?

特段、アメリカ的な起業文化やビジネス感を日本に根付かせたいわけではないですね。しかし、いろんなことを体系的に考えた時に、日本中にその地域の「シードベンチャー創出エコシステム」が必要だなとは感じています。例えば、国内大手企業が拠点を海外移転したり、人口減に伴う一人当たりの国家運営負担額が年々増加する現在、新産業、新経済を生み出す新しいエンジンを他国に比べて急激に作っていかなければならないと思っています。もっと国民全体が「ベンチャーの必要性、とくにシードベンチャーの必要性」を認識するべきだと感じていますが、全然認識していないっていうことのほうが問題で、文化論でアメリカ的なのがいいとか日本的なのを守っていくべきだとかというのは全く考えていません。そこは、あくまで現実的に考えています。

世界を飛び回る井上さん