読みやすいけど中身はハード。ライフ・シフトのバイブル的な一冊

「ココナラ」という、個人間でスキルを売買できるマーケットプレイスをご存知でしょうか? 
「得意を売り買い!」というキャッチコピーでテレビCMもやっていて、ユーザー数もすでに100万人を超えているということなのでかなり認知度もあると思います。本書の著者は、そのココナラの創業社長の南章行さんです。

「人生100年時代の〜」という一文を冠する書籍は、今、世の中にあふれています。
その中でも、体裁ふくめて”一見”さらっとスマートな感じの本書は、読み進めると、実は非常に中身の濃い、ぎっしり実の詰まったものでした。

2011年に、世の中の動きに先駆けて、スキルのC2Cマーケットを立ち上げた南さんは、正にその根幹となる価値観である「セルフリーダーシップ」が、これから最も重要になると綴っています。
自分の人生の主導権をにぎる。これは当たり前のようで難しいし、特にここ数十年の日本では、必ずしもそれを第一義的に考える風潮ではありませんでした。会社を中心とする組織に根ざす風土に、ある意味”身を委ねる”ことで、一定以上の幸せが待っているはずだという神話が世の中を覆っていました。それが、この10年前後で、本当に180度ひっくり返えったのです。

一方で、その兆しは、実は数十年前にすでに始まっていたのだと、南さんは指摘しています。
少子化は40年も前から議論されていたし、バブル崩壊直後に、終身雇用もやがて無くなると言われていたと。
それらがいよいよ現実化しているから、急に変化したと思われているだけだと。

まさにそのとおりだと思います。そんな中で、リンダ・グラットンさんが、決定的な著書を世に投じて、時代の方向性がより明らかになったともいえますね。未来は随分前から偏在していました。環境問題もそうですが、実感を伴わないと人は動けないものなのかもしれません。
でも南さんは、「別に焦ることはない。やり方は明らかなんだから」と言わんばかり。
「ここをこう鍛えれば、こういう筋肉がつくでしょ」と軽〜くアドバイスする、ジムのトレーナーのようです(笑)
元ラガーマンらしい一面なのかもしれません。でも、よくよく考えれば、これはフィジカルの優劣などは全く問われることではなく、誰もが自分で変化させられるはずの「頭の中」の話なのです。

「80歳まで働くにはどうすべきか。」
本書には、そこまで明確に目標を見定め、そのために必要なスタンスや、考え方、方法論やTIPSなどが散りばめられています。
銀行員からM&Aファンド、そこからなぜかNPOを経て起業と、かなりのジェットコースター的な人生を歩まれてきた御本人の経験談も、一般の感覚だとあまりにハードコアすぎて参考にするのは難しいですが(笑)、エッセンスが効いていて非常に面白いです。

『「個人の力」を発揮するには「スキル」と「価値観」と「リーダーシップ」の3大要素を、いかに自分だけのストーリーで綴っていくかにかかっている。』南さんは、そう断言されています。
それは、あちこちの地域で、人生に対する主体性を存分に発揮している「ライフ・シフトの達人」たちをを見てきて感じる自分の実感にも、非常にマッチするものでした。

時代の動きを感じてわかってはいても、もう少しだけ背中を押してほしい方にはうってつけの本だと思いました。オススメです!

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文:ネイティブ倉重

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