「関係人口」を自由に思索するためのガイドブック

「関係人口」という言葉は、何かしらそれに関わる人にとってもまだフワッとした、ある意味厄介な言葉でもあります。
そんな人にとって、その思いや考えを巡らせるときに、ふと身近にあるといいかなと感じる一冊が、この「関係人口入門」です。

いつもの安定的な「ソトコト」の空気感はそのままに、沢山の人の事例を読みやすい文章と、それぞれの人の雰囲気が伝わる写真で綴られています。個人的には、もっと”ギラギラ”した人や、ある意味もっと”自分本位”の人もいていいかも…とも思いながら、実際に出会ったことのある方も何人かいて、楽しく読み進めることができました。なにか思考を方向付けられることもなく、受け止めかたは完全に読者に任されているので、決して「参考書」や「辞書」ではなく、やはり「ガイドブック」かなと思います。

「関係人口」という言葉は、その定義はまだ明確でなく、ややもすれば少しネガティブな印象もあるようです。新しい言葉は常にそういう宿命でもあります。差出編集長も、本書の中で「ブームで終わらせないためには、明確に定義づけないことも重要だ」とさえおっしゃっています。

確かにそういう側面もなくはないのですが、一方で、自分としてはこの言葉には、これからの時代の価値観の大きな変化の一端を担っているように思えてなりません。それが果たして表現として「関係人口」というワーディングが完璧なのかどうかは別にしてですが。

それは、人口減少社会のなかで、日本の各地は、その人口を「シェア」しながら社会を作っていかざるを得ないのが、一つ確かな理由かもしれません。
もっと言えば、技術革新によって時間と場所に縛られない生活も十分可能になる中、自らをとりまく経済圏すら多層化して複数の人生を並行して生きるようにもなり、さらには年に何度も激甚災害が起こるような環境のなかで生活していかねばならないこれからの時代に、必ず起こるであろう大きな社会構造の変化をどこか彷彿とさせるような言葉の響きがあるからかもしれません。

自分が高校生のときくらいから「高度情報化社会」という言葉が使われていたような気がしますが、その時は今のような世の中を具体的にイメージできる人は、ほとんどいませんでした。そして、今その言葉を使う人はいません。未来の社会が「関係人口社会(仮)」になるとすれば、もしかしたらそれと同じようになるのかもしれません。

指出編集長は「明確にしすぎないほうがいい」とはおっしゃっていますが、それがどんなものなのか、あれこれと思い巡らすなとは決しておっしゃっていないと思います。むしろそれは非常に重要なことではないかと。この本は、その思索のネタを拾うのにうってつけだと感じました。

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文:ネイティブ倉重

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