※トップ画像:蜷川実花「道後温泉本館インスタレーション」作品イメージ。2017年10月1日~2018年5月31日公開。

道後温泉を訪れたことがなくとも、「道後オンセナート」のことはよく知っている、行ってみたいと思っていた、という人は多いだろう。

「道後オンセナート」とは、道後温泉という地域資源に「アート」という新たな魅力を加えることによって、多くの観光客や市民で地元を賑わす大規模な取り組みである。プロジェクトスタートのきっかけは、2014年に道後温泉本館が改築120周年の大還暦を迎えたこと。節目となる年にいかに道後を盛り上げるか? この問いに対して地元から出た答えが「道後オンセナート2014」という形になり、以降、「道後アート2015」「道後アート2016」として引き継がれていったのだ。

そしてプロジェクト開始から4年目となる今年、ふたたび“オンセナート”の名を冠した大祭が開催されている。その名も「道後オンセナート2018」。プロジェクトテーマには2014年と同じ「アートにのぼせろ ~温泉アートエンターテインメント~」を掲げ、道後という土地と人のエネルギーを浴びることで、心身ともにのぼせるほど夢中になってほしいというメッセージを全国に向けて発信している。

プレオープンは2017年9月。2018年4月のグランドオープンに向け、そして2019年2月のフィナーレまでより一層の盛り上がりをみせるべく熱気沸き立つ道後の地で、プロジェクトの仕掛人たちに話を伺った。

お話を伺った方々

・松波雄大さん
プロジェクトを運営する「道後アートプロジェクト」元代表
・清水淳子さん
「道後アートプロジェクト」地元広報担当
・鎌田めぐみさん・池田剛典さん
松山市産業経済部 道後温泉事務所

道後オンセナート2018

愛媛県松山市「道後温泉」で2017年9月より開催される大規模なアートプロジェクト。
2014年、道後温泉本館が改築120周年の大還暦を迎えたことを記念して開催された「道後オンセナート2014」以来、4年ぶりとなる大規模なアートフェスティバルとして展開される。
コンセプトテーマは2014年に引き続き、「アートにのぼせろ ~温泉アートエンターテイメント~」。
2017年9月のプレオープンを皮切りに、2018年4月のグランドオープン、2019年2月のフィナーレまでの18ヶ月間、ホテルや街中に設置される作品と多様なイベントを組み合わせて展開される。

「道後が求めているもの」「道後に残していくべきもの」を
踏まえていたことが選出理由

松波さん横顔

「サードフロア」代表 松波雄大さん

地域で主体となってプロジェクトを運営しているのは、松山市内で、ヒト、モノ、コトの接点となる新しい公共の場を提供している「サードフロア」代表の松波雄大さんをはじめとする数名と地域のNPOで構成された、コンソーシアム組織「道後アートプロジェクト」だ。行政、すなわち松山市産業経済部 道後温泉事務所はあくまで彼らのサポート役に徹している。なぜ彼らがプロジェクトの中心になることになったかというと、松波氏が、実行委員会によるプロポーザルに応募した結果、見事選ばれたから。

そこで、松波さん本人に選ばれた理由を尋ねたところ、

「理由についてははっきり言われませんでしたが、他の応募者より秀でていた点として伝えられたのは、圧倒的に企画がおもしろかったということです。加えて、ターゲットとしている年齢層、スタッフの年齢層が30代の若手中心で、事業を継続してこれからの道後をひっぱってくれる可能性が大きかった、とも言われました。」

これに対して、プロジェクトの「事務局」という役割を果たしている道後温泉事務所職員の鎌田めぐみさんは、「広告代理店など組織体制もしっかりしている応募者もいたのですが、松波君たちのチームのほうが、『道後が求めているもの』にぴったり合っていたんでしょう。道後の歴史を調べた上で、『これから先残していくもの』を企画に落とし込んでくれたことが、行政や地元の人の心に強く響きました」と明かす。

「道後でアートという事業を作ること自体が大きなチャレンジでしたが、同時に、これまで120年続いてきた歴史をこれから先の120年につなげるために、現代版の新しい観光地としての魅力を発信することも大事でした。そのためには、地元に受け入れられることが必須。事業継続のためにも、地元のコンセンサスを得ることにはかなり注力しました。」(松波)