IKEUCHI ORGANIC 株式会社

全ての人を感じ、考えながら、安全と環境負荷に配慮し、オーガニックテキスタイルの企画・製造・販売を行う。(タオル、マフラー、ベッドリネン、インテリアファブリック、アパレル素材など)「今治タオル」のブランド力を持たずしても売れる商品作りに成功している今治のタオル製造者。
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池内 計司

1949年愛媛県今治市生まれ。一橋大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。家業であるタオルメーカー、池内タオルを引き継ぐため、今治に戻り83年に同社入社。第2代代表取締役社長に就任する。

「風で織るタオル」会社というのは親しみが込められたIKEUCHI ORGANIC株式会社の異名。100%オーガニックの商品づくりを目指し、タオルを織る工場の電気も風力発電を利用するなど、こだわりにこだわり抜いて作られた製品である。この商品の生みの親は池内計司さん。昨年、第一線の社長職を降り、同社の会長として今もなお、「ものづくり」に熱を注ぎ続ける。そのほとばしる情熱と池内さんの描く未来を伺った。

つくりたいものをつくる

「ものづくりは独善的になってしまうんです。」
ものづくりへの思いを、そう切り出した池内さん。

南青山にあるIKEUCHI ORGANIC TOKYO STORE

「作り手は作りたいものを作る。ただ作りたいものが売れるとは限らない。だからこそ、作りたいものが売れるという形が最高なんです。」

そんな池内さんが尊敬の念を抱くのは故スティーブ・ジョブス。
コンピューターをもっとパーソナルなものにできたら。音楽を持ち歩くことができたら。
常人なら思いもよらないような欲求を常に形にし、世に送り出してきた彼。
「私は、オーディオのプランナーでしたけど、あれを持ち歩こうなんて発想は当時思いつきもしませんでした。iPodの発表を聞いて腰を抜かしました。」

そんなスティーブ・ジョブスのような「ものづくり」を目指す池内さん。

「彼は作りたいものを作っただけです。人々のニーズを探るようなマーケティングなんてしていない。人々の欲しがるものを作っていただけではiPodは生まれなかったでしょうね。」

自分の作りたいものを作る。ただ、それが人々のニーズに当てはまるものでないと売れない。

「お客さんはこんなものが欲しいなんて具体的なアイディアはないんです。具体的なアイディアを先取りする人が作れるだけで。お客さんがあさって欲しいものを作る、それがものづくりなんです。」

明確に、「つくりたいもの」のイメージを持ち続ける池内さん。
「46年間、ものづくりに関わってきましたが、意識的に何を作りたいかっていうのを持っているトップというのはとても少ないんです。」
そんな、希少なものづくりのトップであり続けてきた。

好きなものへのただならぬ情熱

そんな池内さんの「ものづくり」の原点は、好きなものへの情熱にあった。

彼の「ものづくり」は、松下電器産業(現、パナソニック)のオーディオ事業部から始まる。大学卒業後、「神様のほんのいたずらで(笑)」、松下電器に就職することになった池内さん。当時は、英バンドグループ、ビートルズに夢中で真のオーディオマニア。そんな理由もあって、Technics(松下電器株式会社の音響機器向けブランド)でオーディオを作成する事業部署への配属志望した。

「当時、ステレオ事業部って51ある事業部の中で50番のboobyだったんです。だから、そんな不人気な事業部に配属されなかったらやめるという面白い男がいるぞと、当時は噂になりました(笑)」

念願叶って、ステレオ事業部に配属となった池内さんはそこで「ものづくり」の原点を学ぶ。そこでの経験は今に至るまで強い影響を受けたと振り返る。

「松下で教わったことが原点に有ります。その経験がなければ、今の私はないでしょう。よく今のうちの事業はTechnicsよりTechnicsらしいと言われます(笑)」