2017年10月27日、株式会社じげんで、地方創生について課題意識をもった学生がどんな行動を起こすべきかゲストと共に考えるイベント「ISSUEHUB LOCAL Meetup」が開催されました。

地方創生の仕掛け人として、最前線で活躍されている、プロフェッショナルなビジネスパーソン、学生起業家、学生団体の方をゲストとして迎えました。
ゲストのそれぞれの視点から地方創生とはそもそも何を目指すべきものか、具体的には何が課題なのかについて掘り下げ、本当に地方に必要なことは何か、これから地方創生を目指すためにどんなスキルが必要なのか、どんな行動ができるかディスカッション等を行いました。

記事のポイント

  • 話題性を追い求めて地方創生施策が陥りがちな「KOKO」
  • なぜ若者は地方で働かないのか
  • 課題は雇用がないことではなく採用力がないこと
  • 「地方創生」に貢献する人材になるためのファーストキャリア

地方創生に必要なことは話題性ではなく継続性。
その活動は「KOKO」に陥っていませんか?

前半のゲスト講演では日南市マーケティング専門官としてベンチャー企業との協業事業や、自治体のブランディング活動に取り組む田鹿倫基 氏(以下、田鹿氏)より国家課題からみた地方創生についてお話頂きました。

田鹿氏によれば、地方創生と国家全体の人口減少の課題は一緒に考えなければならない問題になっており、地方の活性化のためには若者の流出を防ぎ、定住させることが地方創生のカギとなるといいます。

さらに、田鹿氏は地方創生を試みる際に多くの自治体は「勘(K)、思い込み(O)、経験(K)、思い付き(O)」の「KOKO」に陥り、自治体のPRをバズらせることに注力しがちになっていることに警鐘を鳴らします。なぜならそうした活動は、一時的な認知度の向上に繋がるだけで、本質的な地方創生における課題解決にならないからです。

よくある例としては名産品のPR、ご当地キャラクターや、地方独特のユーモアをきかせた動画によるプロモーションがあります。知名度の向上にはつながりますが、それをきっかけに若者が移住して住みたいという動機にはなりません。

衰退した地方を活性化させるために重要なことは一時的な話題性だけでなく、継続的な取り組みが可能な行動が必要であると認識を深めました。


“プロジェクト”のままではダメ!
活動が地域で自走し根付くための取り組みを

イベント後半はパネルディスカッションにて継続性のある取り組みをするために必要なことは何か、ゲストと参加者からの質問を通して意見を出し合いました。

ゲストハウス運営している株式会社CARAVAN JAPAN CEOの近藤 佑太朗氏は一時的になってしまう理由は「”プロジェクト”として動いている」と分析し、プロジェクト自体がそもそも継続性のあるものではない、たとえば自分が行っていることは場づくりなのでなくなるということがない「とにかく根付く仕組みを作っていくことが大切」と語ります。

農業で地域おこしをしている東大むら塾副代表の梅澤優太氏は、活動する中で、地方創生というものが「客体的な存在にとどまっている」ことに問題意識を持っていました。というのも、梅澤氏の取り組みは学生が地方で何か取り組んでいる、ということにフォーカスを当てて話題にされることが多いといいます。しかしながら、地元の人たちが取り組み自体に関わり、自走していかなければ、本当の意味での地方創生にはならないということを、自身の活動を通じて強く感じているからだそうです。参加者の中には地方活性化に取り組む学生もおり、現場目線でのリアルな問題意識に熱心に耳を傾けていました。

継続性のある取り組みに加え、地方創生にとって必要な若者の雇用について、田鹿氏は「地方には雇用がないのではなく、採用力が低いことに問題がある。昔はハローワークに求人を出せばよかったのかもしれないけれども、今は地元の求人に魅力がないと感じた若者は都市に流出してしまう。仕事を魅力的に見せる工夫をしていかないといけない。」と指摘します。また、給与が低いから採用できないという問題についても「効率の悪い仕事をしている。たとえば、未だにパソコンがなかったりして、一瞬でできることに何時間もかかったり、1人でできることに何人もがかかりきりになったり。それでは1人あたりの給与はあげられない。仕事を効率化させて生産性をあげれば、その分、給与に還元できるのではないか。きちんとした収入が得られる魅力的な仕事だと発信できればUターン、Iターンは増えていく」と、課題解決の方向性についての考えを明示しました。

参加者が学生だったことから、将来、「地方創生」に貢献する人材になるためのファーストキャリアとは何か?ということに議論が展開。大事なのは「差別化」で、人がやらないこと、かつ将来必要とされることが何か考えて行動することが重要であると田鹿氏が語り、登壇者たちは頷き合いました。その際に、「東京で得られるスキルも地方にはない場合がほとんど。何もできない人がいるところにスキルをもった人が行くと価値がある。」そうで、実際に地方に行ってみて東京にはすでにあるもので、地方にはまだないものが何か見極めると良いといいます。将来地方で問題解決に取り組み活躍していくために、差別化できるスキルが何かを考え、そこから逆算してファーストステップとしてふさわしいキャリアを考えてみてほしいと学生達にエールを送りました。

その他にも参加者である学生から、自身の取り組む地域活性化の活動の課題についてより実践的な質問が寄せられ意見交換がなされるなど、インタラクティブで一体感のある場となり、実際の次のアクションにつなげていきたいと志を新たにする参加者の声が多く寄せられました。イベントの最後にはそれぞれのISSUE(=課題)をパネルに書き、全体に共有、盛況のうちに終了しました。


ゲストプロフィール

田鹿 倫基氏
日南市マーケティング専門官。
2009年宮崎大学教育文化学部を卒業後、株式会社リクルートに就職し、事業開発室にて新規事業開発を行う。
その後、上海に本社を置く広告会社、爱德威广告上海有限公司(アドウェイズ中国法人)に転職し、中国人スタッフとともに北京事務所の立ち上げを行う。2013年からは宮崎県日南市のマーケティング専門官として着任し、地域のマーケティング事業を行う。ベンチャー企業との協業事業や、自治体のブランディング活動。企業の誘致。起業家の育成・誘致。農林水産業の振興、地域の人口動態を踏まえた地方創生関連事業を行う。

近藤 佑太朗氏
株式会社CARAVAN JAPAN CEO
幼少期をルーマニアで過ごす。大学1年の夏に国際系の学生団体 NEIGHBORを創設。訪日外国人向けのツアープロデューサーも行う(Cool Tokyo Tour)。またクロアチアのビジネススクールで半年間観光学と経営学を勉強。帰国後、株式会社 The GuestでHoteling事業部を立ち上げる。2016年10月からは非日常を体験できるウェブサービスシェアチケットの立ち上げに携わる。2017年2月に株式会社 CARAVAN JAPANを創業。伊豆大島初のインバウンド向け CARAVAN (Social Stay をコンセプトにした宿泊施設)を立ち上げる。地域の方々と協力しながらグローカルの場をオフラインで構築中。

梅澤 優太氏
東大むら塾 副代表。
千葉県出身、東京大学経済学部2年。東大むら塾2期メンバーとして、1年生の頃から副代表を務める。
都心からわずか90分の相川地区で過疎化、高齢化等の問題が進行することに危機感を覚え、同地区で積極的な活動を行う。設立から3年で、わずか数人でスタートしたむら塾を70人規模にまで拡大させる。
地元の魅力と東大生のアイディア、発信力を組み合わせ全国に届ける「相川ブランドデザイン」などを考案し、今年は約1.4トンの米をいわゆる遊休農地で生産・ブランド化し販売にまでつなげる。

足立 大氏
株式会社じげん 経営戦略部。
京都大学卒、2015年4月、株式会社じげんに新卒4期生として入社。
入社後、経営戦略部(旧経営企画部)にて、M&A、IR、管理会計・予算統制、財務などコーポレート業務に従事。

取材・文・撮影:編集部