都農町インタビュー記事Vol.2。 前の記事Vol.1では、ふるさと納税の概要とそれまでの経緯を伺ってきました。今回は、都農町が現在取り組んでいる新たな挑戦について伺っていきます。

宮崎県 都農町

宮崎県中部に位置し、人口は約1万人。宮崎牛の名産地の一つでもあり、ぶどうやキウイなどの果物や、トマトの栽培が盛んで、また20年前から創業するワイナリーでは、海外からも高い評価を受けたワインを製造している、食と農業の町である。

●山本貴士(やまもと たかし) 
宮崎県都農町総合政策課  課長補佐 兼 まちづくり推進係長
2016年に都農町のふるさと納税の納税額を50億円にまで引き上げた立役者。同町は楽天市場「ショップ・オブ・ザ・イヤー2016」、「2017」で2年連続ふるさと納税部門の大賞を受賞。

●倉重宜弘(くらしげ よしひろ) 
ネイティブ株式会社 代表取締役 / 本記事のインタビュアー

新しい名物料理レシピ開発への挑戦

■宮崎県都農町は、現在、NHKエデュケーショナルのレシピサイト「みんなのきょうの料理」による地域の新しいレシピ開発企画「キセキのレシピ 都農町編」に取り組んでいる。
この企画は、料理好きのユーザーから地域の名産レシピを公募し、実際に飲食店で提供できるレベルのものを開発していくという主旨のもの。本企画で「牛肉とトマトを使った、ワインに合うレシピ」というお題のもと、約250件のレシピが集まり、11/25に開催された決勝大会では、上位3レシピがグランプリを競った。(※詳しい様子はこちらから。ネイティブ株式会社では、この企画の提案から実行までをご支援しています。)

倉重 今回、この「キセキのレシピ」の企画書を山本さんにお送りしたら、すぐにお電話いただきましたよね。そして自分も早速都農町にうかがって、一緒に議論しながら、「牛肉とトマトを使ったワインに合うレシピ」っていうアイデアもでて…。今も進行中のプロジェクトですが、ここまでの手応えは、いかがですか?

そもそも、どうしてやろうと思ったのかも伺いたいなと。

山本 そうですね。まずは「みんなのきょうの料理」ユーザーの皆さんの、この企画への反応も良く、イベントも盛況で、美味しいレシピをご提案いただいて、本当に良かったと思います。

倉重 ありがとうございます。

山本 企画として良さそうだなと思ったのは、やっぱりふるさと納税の経験からですね。例えば、都農町は質の高いトマトを作っているということで、マスコミにも取り上げられることも良くあるんですが、やっぱりそういう効果は一時的なんですよね。そういうPRへの反応や、経済的な効果をもう少し長く、もっと価値の高いものにするには、加工品というか、名物料理を作っていくしかないなと、ずっと考えていました。飲食店も儲かるようになれば、もっといいですしね。

倉重 それには、新しい「レシピ」が必要だということですね。

山本 そうなんです。ご提案にはすごく可能性を感じました。PR効果も同時に見込めますしね。勝算があるかといわれると、そこまでの確証はまだ無いんですが…。

「キセキのレシピ 都農町編」決勝大会の様子
(出典:「みんなのきょうの料理」キセキのレシピ都農町編)

倉重 私が言うのも何ですが、思い切りがいいですよね(笑)。

山本 よく「費用対効果はどうなんですか?」とか言うじゃないですか。

倉重 はい、すごくよく言われます。

山本 でも、前例の無いことでそんな議論していると、その間にどんどん他のとこにお客さん取られたりしちゃいますよね。であれば、思い切って先行してやって見たほうが、いろんなことをを勉強しながら次の手が打てると思うんですよね。

倉重 それがすごいですよ。

山本 手を出す前に色々考えて、結局尻すぼみになるよりずっといいですよ。あと、町長の決断の早さもありますよね。ああなると、私たちは町長に恥をかかせられない(笑)。

倉重 確かに。あの決断力は並大抵じゃないですよね。

山本 そうなんですよ。町長が決断した。じゃあ我々はそれをこういう方法で実現させよう…っていうことになる。まずは動いてみようと。もちろん企画に魅力があったからですけれども。

倉重 なかなかそういう風に考えて動く自治体って、本当に少ないと思うんですが。

山本 恵まれていると思います。

倉重 この間の決勝イベントはいかがでしたか? 本当に沢山のユーザーが都農町のレシピを考えてくれて、中にはすでに都農町のふるさと納税の経験者もいましたよね。実際にそういう方と出会って、どう思われましたか?

山本 いやもう、本当に嬉しかったですよ。「ふるさと納税して都農町のファンになりました」という声を聞いて、そういう方が本当にいてくださるのを実感しました。プレッシャーでもありますね(笑)。 

「キセキのレシピ 都農町編」決勝大会の様子
(出典:「みんなのきょうの料理」キセキのレシピ都農町編)

倉重 このレシピをこれからどうやってPRしていくか、どう飲食店で提供していくかですね。

山本 はい。こうした取り組みは、今回だけ終わるんじゃなくて2年、3年と続けていくから意味があるんだと思います。2020年の町制100周年に向けて、いろんな取り組みを考え
ているので、それにも合わせて新しいレシピや商品を開発できたらいいなと思ってます。デザートもいいなとか、魚介系もあるなとか、地元の商工会や、
生産者とどう絡めようかとかね…そういう話をどんどん膨らませていかないと意味がないと思っているんです。ほんとプレッシャーを感じながら帰りましたね(笑)。

倉重 町長は何ておっしゃってましたか?

山本 どんどん行けと(笑)。

倉重 すごいですね!

インタビューは、さらに都農町の今後の方向性について語られていきます。
「ふるさと納税のその先へ〜宮崎県都農町の挑戦〜 Vol.3」 へつづく

取材・文・撮影:編集部

写真提供:都農町