「まるで村の鍛冶屋さんのように」

山口県山口市の「前小路ワークス」は、そんな小商いのスタイルで製作を続けるレザークラフトの作業場だ。バッグや財布、楽器のケースなど、代表の清水博文さんが作る品々は、使い勝手の良さと無駄のないデザインから着実に愛用者を増やしつつある。

手縫いだからこそ、生み出せるものがある

最大の特徴は、ミシンを使わず、すべて手縫いで仕上げている点。「そのほうが、理にかなった製品になるから」と清水さんは言う。

棚

清水博文さん。革だけでなく、ヨットのセールや着物の帯も使う

ミシンを使う場合、針を通すために縫い合わせる部分の革を1ミリ以下の薄さに漉(す)く必要がでてくる。当然、強度は落ちる。製品化には、デザイナーとは別の専門職のスキルも必要となる。

「そんな制約に合わせていたら、スッキリとした使いやすい製品は作れないですから」

例えば、こちらの長財布。

財布

一番手前のお札入れに縫い代(しろ)がないため、幅はお札の長さに最小限の革の厚みを加えただけ。しかも、カードが縦に入れられるという他にはないデザイン。無駄のなさと、利便性の高さから、一番の人気商品となっている。

「このカードケースの部分のような、オリジナルのアイデアを実現するには、多分誰もやってないよな? と思われるアクロバティックな縫い方も必要。『村の鍛冶屋』だからこそ作れるんです」

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東京で広告やマーケティングの仕事をしてきた経験を活かして商う清水さん。
「お客さんのわがままを具現化するアイデアとセンスで、どこにもない商品を作り続けていきたい」