最近読んだ本の中で、この「ALLIANCE」は、本当に自分にとって大きなインパクトがありました。

きっかけは、少し前に当社の採用活動を始めたころから起こった出来事に遡ります。
創業して1年。なんとか会社として回り始め、いよいよ新しいことも始めて会社として次のステージを目指したいと思い、思い切って採用活動をはじめました。
その中で、ちょっと”変わった”相談をいただくようになりました。それは、かなり大手の企業の中堅以上、年齢にすると私と同世代、場合によっては5〜6年先輩の、しかもかなりのポジションにあるような方からの(もちろん、全く面識のない方からですが)打診です。それは、「自分も今までの経験を活かして、地域をテーマにした”事業”を立ち上げたいと思っている。そのための準備をしたいので、具体的にアドバイスを貰えないか?」とか、同様の状況で、「自分のアイデアのビジネスを一緒にスタートできないか?」というものでした。中には「ところで、あなたはこういう”地域”というテーマで、(しかも、この年齢で)どうやって起業したのか?」という問い合わせまでありました…。それも結構な数で、自分としては嬉しいような、ちょっと恥ずかしいようなw状況でした。もう一つ、同時期に頂いたのが、「自分はすでに地域で新しい事業を始めている。(もしくは始めようとしている)。同時に、ネイティブ社の事業にも興味があるし貢献できると思う。こういう状況でも一緒に仕事させてもらえないだろうか?」という打診。こちらも複数件いただきました。
これらの打診は、通常の採用活動を想定していた自分にとって、いい意味で「想定外」で、しかもこれ以上なく嬉しいことでした。こうしたご要望の全てにお答えできるほど、自分も会社も成熟していないのは申し訳ないくらいです。ただ、そのいくつかは非常に興味深いし、ぜひご一緒したいとも思いました。それより何より思ったのは、「地域」や「家族」というテーマで仕事をすることは、ほんとに多くの人にとって魅力的でやりがいをもたらす可能性があるんだということです。そういうお話を頂いた皆さんそれぞれ、進捗の差こそあれ、主体的で意欲に溢れた人ばかりでした。こういう人たちを、どうやって会社に取り込んでいくべきか…。どの企業にとっても「採用」は大きなテーマですが、私たちにとっては、それは単なる「採用活動」という以上の、まさに事業そのものとも言うべきものではないか、と考えるようになりました。そんな中で出会ったのが、先程の「ALLIANCE」だったのです。

この本は、あのLinkedinの創業者リード・ホフマン氏の著作で、しかも今自分が一番注目している「ほぼ日」のCFOの篠田真貴子氏が監訳という豪華メンバーで作られています。しかも2015年に初版が出版されているので、今更といえば今更なんですが、出会いはやはりタイミングです。自分が今このタイミングで出会わなければ、これほどのインパクトは受けなかったでしょう。以前から個人と企業の関係性は大きく変わるだろうというイメージはもちろんあったんですが、それを”超”具体的にすすめているLinkedinと、シリコンバレーに、これからの企業のありかたの本質を見た気がします。
その主旨は、簡単に言えば「お互いのミッションをしっかりと共有し、お互いの成長にどうコミットするかを、ある程度の期間を決めて確認すること」につきます。それは言葉では当たり前のようですが、制度としてどう落とすかは、かなりの難易度があります。とはいえ、我々はまだ創業1年のフワフワな会社。正直、大した制度もまだありません。逆に、せっかくこういう何にも縛られない状況だからこそ、この「ALLIANCE」の考え方を取り入れた制度を、まずは始めてみたい。そう強く考えるようになりました。

そこで、考えたのが、「地域起業家採用制度」です。地域で新たに何かを興したい、その具体的なイメージを持っている人と一緒に何ができるかを考え、お互いのミッションを共有し、お互いどう貢献するかを出来る限り明確にして、中長期にコミットメントを交わす採用の仕方です。それは、会社として「労働者」のスキルセットを見極めて、貢献してくれるかどうかを見極める…という従来のスタンスとは趣が異なります。「ALLIANCE」にも書いてあるように、お互いの方向性をじっくり話し、それぞれのビジョンを共有し、まずは2年程度の期間中での目標を共有します。現時点では、法的な契約内容自体は「業務委託契約」の範囲内ではありますが、こうしたプロセスを経ることで、その関係性は、ある意味「正社員」かそれ以上にもなりうるのではないかと考えました。もちろん、既存の社員との関係性も、同じような質のものに高めていくことも同時に行っています。個々の働き方への考え方はそれぞれまた異なりますし、もちろん変わることもあるでしょう。ですので、制度設計はあまり固定せず柔軟にしておきたいと思います。同時に会社としての方向性やビジョンは、どんな働き方であってをしっかりと共有できるようにしていきたいと思います。

そう考えていくと、この制度のネーミングも「〜採用制度」と付ける事自体が矛盾しているかなとも思いましたが、いきなり「〜ALLIANCE制度」というのも中々理解しづらいかなと思い、こういう呼称にしてみました。まだまだ未完成な制度ではありますが、すでに一人はこの制度で参画していただき、瀬戸内で大活躍中で、現在も複数の方と検討・相談中です。条件や事業の整合性も様々で、頂いた全てのご相談が成立するわけではないと思いますが、今後も機会があればそうした関係を結べる方と、一緒に仕事をしていきたいと思っています。そういう方との出会いの中で、この制度を熟成させていければ理想的です。この制度をうまく定着できれば、もしかしたら、「一度関わった人が、永久に退職しない会社」になるかもしれません。「ネイティブ」という社名自体が、所属する組織名というより、「仕事のテーマとそれにコミットする姿勢」の概念のようになるかもしれません。人生100年時代に、そうした「ネイティブ」な生き方にコミットする仲間を増やせたら、こんなに嬉しいことはないかもしれません。最近はそんな”妄想”に駆られながら、仕事をしています。

文: NATIV倉重

【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。