利用するワーカーのメリットとしても、アクションを起こそうと思ったタイミングで、銀行の持っているファイナンスやリソースの紹介を受けることができ、安心感を持って事業の拡大ができる。

また、これからの取り組みとなるが、ワーカーは福岡銀行の取引先22万社が持つ課題を解決するためのかかわりや、行政がもつ地域課題を、仕事として受注することもできるようになる。つまりデスクを借りて、ただ代理店からの受託仕事をこなすだけではなく、地方を盛り上げていくための企業のプロジェクト型の仕事に参加することも可能だ。地域の企業や行政からしても、入居企業であるスタートアップや、クリエイターなどの知見を使って、今までにないアプローチや発想を持って課題を解決することができることは大きい。

たったの11人の会社ではあるが、パートナーとなる人材や企業と連携し、銀行のリソース、ワーカーのスキル、企業や行政の課題それらすべてを繋ぎ、お互いにとって利益を生み出し続けるスペースを運営していこうとしている、それが地方創生におけるスモールプレイヤーが乱立する中にあって、福岡移住計画の凄さであり、従来の場所と設備だけを提供するワークスペースと大きく異なる点である。

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DRTオープニングイベントの様子

一か所に留まらない、働き方とそれをサポートするスペース運営

「IT企業として、本質的な価値を見極めながら発信すること・繋ぐことは得意ですから、運営している全てのスペースをこれからスペース同士で繋がっていくようにしていこうと考えています。またワーカー同士や、スペース同士、その他オーナーが持つリソースや取引先など外部とのコミュニケーションの活発化をサポートするコミュニティーエディターというスタッフの存在がますます重要だと考えています。」

コミュニティマネージャー、エディターと呼ばれているスタッフは、例えば人材領域や、デザインなどそれぞれの専門領域を持ちながら副業として福岡移住計画と契約していることが多い。彼らの仕事は、イノベーションが生まれやすい環境づくりを行うこと。今期は、福岡移住計画が運営する、東京や福岡などの遠隔のワーキングスペース同士や、その中のワーカー同士も適切に繋ぐことで、可能性の創出や事業の活性化を手助けしていくつもりだと須賀さんはいう。

受付業務だけを担う人材を配置するだけでは意味がないと須賀さん。それぞれの場のコンセプトに応じて、専門領域を持つ優秀なワーカーをコミュニティに投じることで、コワーキングスペースは活性化する。ここには、福岡移住計画を運営する株式会社スマートデザインアソシエーション自体が15年間WEBマーケティングを本業としてコミュニティを形成してきたノウハウや人材の目利きが活かされているのだ。

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DRTのスタッフ

福岡移住計画が運営するスペースが全国6拠点となった今期は、これらのワークスペースを拠点に、新たな人材の流動、イノベーションなど様々な可能性を生み出すため、「+Wander」というサービスを打ち出した。月3万円支払えば、法人、個人共に、全国十数拠点、どこのオフィスでも使えるというサービスである。日本だけでなく、シンガポールを皮切りに、アジアのコワーキングスペースとの連携が拡大中である。このあたりのサービスは、先日日本にも進出し、話題となったWeworkとの類似点も感じられ、時代の流れの相性の良さから、今後更にスケールする可能性がある。
+Wander(プラスワンダーHP)

「最近では、海外のワーカーも利用してくれています。特に福岡の「SALT」は人気です。先日アメリカ人のエンジニアのカップルが滞在中に「SALT」で働いた様子をSNSにアップしてくれて。次の日にはカナダの友達が来てくれ、こんなにクールなオフィスは他にないと言われ嬉しかった。入居検討者にはヴィトンのデザイナーだったフランス人や大企業向けに海外の優秀なIT人材を紹介するアメリカ人などもいます。」

福岡移住計画が運営するオフィスに立ち寄ったことがある人は必ずいうのがその居心地の良さ。元々IT企業である彼らは、独自のネットワークで建築家や施工パートナーと連携し、空間デザインにも力をいれてきた。良い空間で働くことが、生産性をあげることは確実である。デザイナーのような感度の高い人々からも支持され始めていることが、福岡移住計画の手掛ける空間の質の高さを保証している。

更に海外のワーカーからの利用も促進するため、Airbnbと共同で、ホームシェアリングラボ九州を立ち上げ、福岡のワークスペース周辺の空き家を、従来の移住目的の人以外にも、宿泊目的の人にも提供をスタートさせている。クリエイターにとってのライフスタイル、ワークスタイルを一貫して提供して行こうというプラットフォームにしていこうと新たな動きを考えているのだ。

SALT外国人

「SALT」は海外のワーカーからも高評価を受けている

福岡移住計画の描く未来

他に類を見ない手厚いサポートが受けられる福岡移住計画のコワーキングスペースの需要は、ますます拡大してゆくだろう。須賀さんは、「2020年までに既存を含めて日本に50拠点まで拡大したいと考えています。人数ベースでは私達の運営するオフィスで、1,000人~2,000人のワーカーが働いていることが目標です。今後はハワイ、台北、香港、タイにベトナム、カンボジアなどの成長著しいアジア圏にも拠点を拡大していきたいと考えています。僕らのコワーキングスペースを拠点に、日本にとどまらず、世界の人材の流動や、新たな働き方そのものを生みだしたいですね。」と語ってくれた。

単なるコワーキングスペースならば、探せばどこにでもある時代。しかし、どこのワーキングスペースを利用するかが、ビジネスの結果を大きく左右することになる可能性がある。またコワーキングスペース乱立時代に、不動産オーナーもどの運営チームに任せるかでその未来は決まるのだ。小さなチームで時代を先取りする社会構想を形にしてサポート体制をつくり、ワークスペースを選ぶ必要性と、新たな働き方を提案しているのが福岡移住計画の凄さだろう。

取材・文:編集部
写真提供:スマートデザインアソシエーション

福岡移住計画 概要

名称
福岡移住計画(運営元:株式会社スマートデザインアソシエーション)
事業内容
シェアオフィス開発・運営、不動産・仲介、地域活性化支援
(Web制作・マーケティング、メディア運営、システム開発)
創業
2002年7月
住所
・東京オフィス
〒155-0031 東京都世田谷区北沢3-27-4 立木ビル2F
・福岡オフィス
〒819-0168 福岡県福岡市西区今宿駅前1-15-18 マリブ今宿シーサイドテラス3F

>福岡移住計画公式サイト