いちき串木野市は、鹿児島県の西側にあり、海と山に囲まれた自然豊かな街です。 新鮮なまぐろをはじめ、海の幸を楽しむことができ、農作物も豊かで「食のまち」として注目されています。 温かい気候と地元の人々の暖かさが心地よく、穏やかな生活を求める方にぴったりの場所です。 また、3つのJR駅と、2つの高速インターチェンジがあり、都市部へのアクセスも良好。 歴史と文化が息づくこのまちは、新しい生活を始めるのにも優しい環境が整っています。 そんな、いちき串木野市に移住した方にお話を伺っています。

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埼玉県戸田市出身。
学生時代に発酵の面白さに出会い、酒造りの道へ進んだ戸田さん。

日本酒蔵での修行を重ねたのち、鹿児島へ移住。
いちき串木野市で蜂蜜酒「ミード」の醸造所を立ち上げ、現在は株式会社nobanaを設立。醸造家兼経営者として新たな挑戦を続けています。

移住して3年。
このまちでゼロから蔵をつくり、地域の人たちと関わりながら、自分の理想とする酒造りをかたちにしてきました。

発酵のロマンとともに歩んできた、戸田さんのこれまでと、いちき串木野市での今を伺いました。

ミードとは?:蜂蜜と水を発酵させて造るお酒で、ワインやビールよりも古い歴史を持つ「人類最古の酒」ともいわれています。

「お酒って、こんなに身近だったんだ」すべては、学生時代の実験から始まった

もともと大学では物理学科に所属していた戸田さん。
そんな中、ある実験が転機になりました。

「アルコール度数が1%未満なら清涼飲料として扱われるんです。それを知って試してみたんですよ」

蜂蜜水を発酵させた飲み物。
それが、のちに自分の人生を決定づける「ミード」でした。

「正直、材料も手に入りやすいし、加工も簡単だから、という軽い理由だったんですけど(笑)でも“お酒って自分で作れちゃうんだ、実はめちゃくちゃ身近なものだったんだ”って気づいたことが、最初の面白いなと思ったポイントで。」

それまでお酒は、どこか特別で、専門家だけが作るものだと思っていた。
でも、実は昔から人の暮らしのすぐそばで、自然に生まれていたものだった。

その「身近さ」に強く惹かれたといいます。

その後、 物理学科から生命科学科へ転科。発酵や微生物の世界へ、本格的に舵を切りました。

同じ米なのに、なぜ味が違う?発酵という“ブラックボックス”の魅力

お酒にのめり込んだもう一つのきっかけが、新潟の日本酒イベント「酒の陣」。
数多くの酒蔵が並び、飲み比べができるイベントでした。

「同じ“米”が出発点なのに、日本酒の味が全然違うんです。なんで?って。理屈で説明できない差が出てくる。そのブラックボックス感がめちゃくちゃ面白かった。」
飲む楽しさは、やがて「作る側になりたい」という欲求へ変わっていきました。

三軒茶屋のクラフトサケ醸造所でアルバイトを始め、その後、千葉や群馬の酒蔵で修行を重ねました。
そして杜氏として、酒造りの現場に立つようになります。

「人は思っている以上に、微生物と共に暮らしてきた」

発酵は、人が“管理する”ものではなく、“一緒に生きる”もの
その感覚に、強く心を打たれました。

再現しないから面白い。自然に委ねる酒造り

現代の食品製造は、再現性が重視されます。
いつ飲んでも同じ味、同じ品質。それを安定して実現できる技術。
戸田さん自身も、その精度の高さには強く惹かれているといいます。

「再現性が高く、きれいに揃った味をつくる技術は本当にすごい。でも、 微生物って生き物だから、毎回同じにはならないんですよ。昨日と今日で、発酵の進み方が全然違う。それが“生きてる”って感じがして、僕はそっちのほうがワクワクするんです」

思い通りにならないからこそ、生まれる個性がある。
その揺らぎこそが、発酵の魅力であり、酒のエネルギーだと戸田さんは言います。

だからこそ、戸田さんのミード醸造所には断熱材を入れていません。
外気温の影響を受ける。季節によって発酵の表情が変わる。
コントロールしすぎず自然の揺らぎを受け入れる

それが戸田さんのミード造りのスタイルです。

鹿児島との出会い、そして移住

鹿児島を訪れるようになったきっかけは、 いちき串木野市の焼酎蔵白石酒造さんの焼酎でした。
白石酒造さんの無肥料・無農薬で原料を育て、原料づくりから酒造りまで一貫して行う姿勢と、力強さのある味に強く惹かれたそうです。

「“こんな焼酎があるんだ”って衝撃でした。”焼酎に対してのイメージを全部変えられた”感覚。この人の近くで学びたい、って自然に思ったんです」

一般的に、肥料を入れれば芋は甘くなり、旨味も増し、生育も安定します。
「糖度を上げて“わかりやすい美味しさ”をつくることはできる。でもその分、酸味とか苦味とか、そういう迫力のある要素が削ぎ落とされてしまう気がして。生で食べたら、少し荒々しく感じるような味わいが、発酵すると逆に旨さに変わることがあるんです。そういう職人的な感覚の部分を、白石さんはグッと持っている方。」
その“反転”こそが、発酵の面白さだといいます。

さらに、鹿児島には信頼する養蜂家さんの存在も。ミードに欠かせない蜂蜜の生産者がいることも大きかった。

尊敬する蔵元、原料の生産者、応援してくれる取引先。
いくつものピースが揃った瞬間、「じゃあ行こう」と決めたそうです。

前編まとめ

学生時代の小さな実験から始まった、戸田さんの酒造りの道。
酒蔵での修行を経て鹿児島へ移住し、再現性よりも自然の揺らぎを大切にする酒造りを志して、いちき串木野市を新たな拠点に選びました。
後編では、移住後の醸造所の立ち上げや蔵づくりの裏側、そして地域の人たちとの関わりについて伺います。