ここ数年、ちらほら聞くこのニュースに対して、コメントなどがある場合は、その反応はほとんどが「ネガティブ」なものです。”なんと嘆かわしい!” ”夢のない国だ”
公務員が”夢のない職業”という認識になったのは、いつ頃からなんでしょう?
想像ですが、自分の親の世代はそうではなかったのではないかと思います。むしろ尊敬されるというか、それどころか人格者で志も高く、周囲が一目おくような…そんなイメージで捉えられていたのではないかと。
我々世代には、かすかにそういうイメージが残っています。
ところが今は、全くそうとは言えません。これも想像ですが、もしかしたら「高度経済成長」の時代に、官民のイメージの逆転が起こったのではないでしょうか。
民間企業でバリバリ働いてどんどん稼いでいる方が、挑戦的で野心的で、しかも魅力的な人物だ…というイメージです。
ところが今は、そういう価値観すら薄れてきています。
現代の「サラリーマン」という言葉のイメージは、むしろそこからかけ離れたものです。それどころか、宮使いや、お役所仕事と言う言葉すら、むしろ民間で使われているほど。
この本のタイトルにも使われている「お役所仕事」というのは、果たしてどういう意味なのか?
そんな不思議な感覚すら持ちながら、この本を読み進めました。
読み進めるほど、「この本は決して”公務員”のためだけに書かれたものではないな」と言う想いを強くしました。
タイトル通りに受け取れば、「10人の破天荒な人たちが、お役所でイノベーションを起こした事例集」です。もちろん、それだけでも十分読み応えがあり、面白いのですが、この本の奥深さは、そこだけにとどまらないところにあります。
ここに登場する人たちは、確かにすごい人ばかり。パワフルで、ビジョナリーで、決して途中で諦めない。そしてその結果、ありえないくらいの結果を残しています。
しかし「お役所仕事」と言う言葉がが官民問わず使われる時代に、彼らが変えたその壁は、働いている人全てに当てはまる、とても普遍的なものに見えてなりません。
しかもその物語を追っていると、それが外部的障害と言うよりは、むしろ内的な壁のようにすら見えてきます。
というのも、彼らの物語には必ず「自分自身と深く向き合う」場面が出てきます。外的な理不尽な”壁”に対峙し、その攻略法に悩むというよりは、
むしろそこにいる自分自身の気持ちや姿勢自体に時間をかけて向き合っているように見えます。
その成果によって、民間のように、直接的な人事評価や昇級などがあるわけでもなく、売り上げや利益といったわかりやすい指標があるわけでもありません。
でも、やるべきことが見えて、そこに邁進するとき、彼らはその内なる「お役所」という呪縛を果敢に振り払って、
爆発的なエネルギーでことを成し遂げています。
その姿は、まさに『Heroes of Local Government』 です。
この名の通りのメディア「HOLG.jp」を立ち上げた加藤さんは、本当に面白いフィールドを見つけたな…とつくづく思います。
CSR(Corporate Social Responsibility) や、CSV (Creating Shared Value)、更には、SDG’s(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)などなど、一般の民間企業にこそ、社会的意義を当然のように求められる時代になってきました。
今、こういう時代だからこそ、公務員の仕事に注目する意義は大きいのではないかと、改めて感じました。
官民問わず、更には規模や立場にも関係なく、誰しもが向き合う可能性のある、内なる「お役所仕事」。仕事になにか引っかかるものを感じている人には、是非ともおすすめしたい一冊です!
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文:ネイティブ倉重
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【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。