【しまね女子ブログ】 平野 宗香vol.5

島根県西部/石見(いわみ)地方ってどんな所?

歴史や伝統に触れると、その土地の土台、ルーツ、島根の根っこが見えてきます。田舎だからと侮るなかれッ^^

島根には島根なりの誇り、伝統があります。大きい小さいなんて関係ありません。どのようなカタチであれ、「人の想い」があるから「楽しい」から今もなお続いているのだと思っています。

素敵な素材や人材は田舎にも沢山「有ります」。

室谷の棚田(むろだにのたなだ/浜田市三隅「日本棚田百選」のひとつ

今回は継承されているモノに着目し、昔から続く伝統、そして「今の姿」について、ご紹介します。

◆プロローグ
その土地の歴史に関連するモノと聞くと、わかりやすいストーリーを持っているのはお寺や神社があるなぁと約12年間京都生活をしてきた私は思うのです。お陰でUターンしてから島根の神社仏閣に目が向くようになり、さらにそこから派生している伝統にも興味を持つようになりました。

例えば、津和野(つわの)の弥栄神社に伝わる「鷺舞(さぎまい)」。京都発祥ですが、伝承されて400年以上廃絶することなく奉納され続けられている唯一の古典芸能神事なんですよ!(まだ実際に見たことないので見てみたい!!!)

また、約100年前から仁和山八幡宮(浜田市弥栄町)に伝わる随身像(ずいじんぞう/神社の門に置かれた弓矢などの武器を持つ像)の2体は「長浜人形」という伝統工芸で作られています。地元のローカル新聞「山陰中央新報」で見て知りましたが、この土地には江戸時代から人形師が多く住んでいたようです。良質な粘土が取れる土地の強みが見えてきましたね。そしてこの強みが日本三大瓦のひとつ、赤茶色が特徴の「石州瓦(せきしゅうがわら)」へと繋がります。

石州瓦の鬼瓦部分

石州瓦の鬼瓦部分

 

あら不思議、どんどん伝統の土台がパズルの如く広がってきましたね。さぁ、この流れに乗っかりますよ!

その土から「石見焼」という、江戸時代から江津市を中心に焼かれた陶器も見逃せません。耐酸・耐塩・耐水にすぐれ、特に「大はんどう(大型水がめ)」は独特なものです。1994年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品に認定だってされています。
もちろん石見焼以外の焼き物もたくさんありますよ。
ただ、この陶器を作る窯は現代になればなるほど、ガスや電気のものが多くなっていますが、今もなお「登り窯」にこだわっている窯元さんもいらっしゃいます。

ではまず始めに、登り窯から見える石見地方の伝統と「今の姿」をどうぞ^^

長さ30mと20mの二基の登り窯が大田市温泉津にある

◆ 土から繋がる姿   椿窯 ~ 家族へ紡ぐ~
島根県大田市温泉津で温泉津焼を継承する3つの窯元があり、西日本最大級の登り窯を守り繋いでいます。実は戦後に窯元は次々と廃業していたのですが、島根所縁の作陶家・河井寛次郎さんを師事していた京都の作陶家・荒尾常蔵さんが1969年にIターンし、衰退していく温泉津焼に京都の風を取り入れ復興させました。そしてその経脈を受け継ぐ窯元や地域の人たちとで、33年前(2021年時点)から毎年春と秋の年2回「やきもの祭り」が開催され、年々賑わいを集めています。
今回はその窯元の一つ「椿窯」にズーム・イン!

2021年秋 登り窯で焼かれた窯変の作品と荒尾浩之さん

この窯元の当代(5代目)・荒尾 浩之(あらお ひろゆき)さんは、荒尾常蔵さんの長男の経脈を受け継ぐお方。父親である浩一さんに師事し、現在は息子さんへ背中で語りながら技と心を伝えていらっしゃいます。具体的な言葉で伝えるのではないという姿が、職人さんだなぁと感じずにはいられませんでした。
実はご縁いただき、当ブログVol.3で紹介したパキノさんと共に2021年秋「やきもの祭り」に出店させていただいていたのですが、その際にいろいろなお話を伺い、魅了されました。
亡きお父様との思い出話、細やかなデータの記録で図る技の話、火と釉薬で織りなす窯変(ようへん)という化学の面白さに挑戦される話…話をされている浩之さんの瞳はキラキラされていて私まで楽しくなっていました。

そんな話を聞いた後でNHK「小さな旅 ふるさとつなぐ ~島根県 温泉津町~」番組で取材されていた浩之さんを拝見し、一人しっとり涙したのはココだけのお話。
言葉で多くを教え伝えていなかった父・浩一さんが亡くなられた後に、浩一さんが残していた椿の図案を浩之さんが見つけ、“あぁ残してくれてたんや…”と、夜に涙したという話を涙ぐみながらお話されている場面が印象的でした。

カタチは違えど、職を親から子へ受け継ぐ同族としては心にグッとくるものがありましたね。親が子を想う優しさって見えないようでちゃんとカタチとしてあるんだなぁって…(自分の親には照れくさくてこんな話はできませんがw)

 

左:荒尾久美さん(曼荼羅など細やかな作風が特徴) 右:私 / 2021年秋 やきもの祭にて

このご縁を頂いたのは、浩之さんの奥様・久美さんとの出会いでした。いつの間にやらお知り合いになっていたのですが、久美さんは温泉津の「やきもの館」館長も務め、椿窯としても作品を作られる作陶家。結婚を機にIターンされた多彩な女性です。浩之さんも過去受賞されたことのある島根県総合美術展(県展)にて2021年金賞を受賞されました(過去2年も受賞歴あり)。芸術の才溢れる尊敬しているご家族さんです。

陶芸体験で作った菓子器に和菓子を添えて

やきもの館では陶芸体験もできます。私も体験しましたが楽しくてリピートしたくてたまりません。やきもの祭りにもまた出店させていただけるとのことですので、皆さんぜひご来場いただき、お会い出来たらなぁと思っています♪^^

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やきもの館の詳細はコチラをどうぞ^^
島根県大田市温泉津町温泉津イ22-2 / 駐車場あり
(平野屋から車で約45分)
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◆ 紙(神)から繋がる OROCHI名刺 ~未来へ紡ぐ~

演目「恵比寿(えびす)」さんのような笑顔で過ごしましょう^_^ 衣装や仮面も職人技です

2019年日本遺産に認定された「石見神楽(いわみかぐら)」は都会だけではなく、海外でも上演されるほど人気があります。日本神話を題材に独特な笛や太鼓の囃子に合わせて衣装や面をまとい舞う伝統芸能。さまざまな演目の中でも「大蛇(おろち)」は見ごたえ満点です。子どもの頃、私も食い入るように見ていた記憶があります。

今回のブログバナーの正体は、大蛇のドアップでした!

石見神楽の社中や学生さんたちが日々練習し、神社やイベントなどで演舞していますが、今回ココでご紹介するのは神楽そのものとは異なる「今の姿」=「OROCHI名刺」です。

大蛇の胴の部分と同じプリントがされている和紙(蛇胴紙)で作られた名刺を目の前でちぎって渡す斬新なスタイル。これをキッカケに石見神楽や石見地方に興味を持ってもらえたらと、そして石見神楽関係団体の応援になればと出来上がったカタチです。
田舎で面白い仕事を創り、繋げる事業を展開されている「おかもと商事」(浜田市金城町)が手掛けました。

どんな色、柄になるか⁉︎人も名刺も一期一会のご縁です

“茶道は人だけではなく、茶道具も語ります。”
いきなり何を言い出すかと思いますよね。茶道具の形や描かれた絵などによって、お茶会の趣旨が伝わり、会話のキッカケになったりするのですが、このOROCHI名刺はまさに茶道具と同様、語る名刺だと思いました。

縁あって実は私もこの名刺を作り、実際に名刺交換をしたのですが、初めましての方々と会話のキッカケが生まれ、笑いが生まれ、打ち解けやすい雰囲気になったのです。
(第一印象も掴めたはず(笑))

地元で育てられた和紙の原料「楮(こうぞ)」から伝わる人の想い、歴史ある神楽という土台の幹から派生した新たな枝葉たるカタチの名刺、それが今の姿、「これからの姿」なのだなぁと思いました。

人はみんな歴史という土台の上で今、生きていますからみんな等しい存在ですが、生まれ育った土地の土台からどんなことができるのかを考えていくことが大切なのだと教わったモノのひとつでした。

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OROCHI名刺の詳細はコチラをどうぞ^^
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◆ 建物から繋がる ~土地へ紡ぐ~
さて、石見地方の東から西へ移ってまいりますよ!お次は津和野です。実は津和野に「津和野今昔~百景図を歩く~」という日本遺産があります。そこに描かれた津和野藩の城下町の風情が残る本町通りには文化財の建物が今もなお多く存在しています。今回ご紹介するのは、2010年に国の有形文化財に登録された「俵種苗店」の代表・俵 志保(たわら しほ)さん。

明治前期創業 / 現在は植物の種、量り売りスパイス、食器、雑貨など志保さんセレクトが店内を彩る

志保さんは学生時代に京都で染織テキスタイルを学び、西陣織物金糸の会社、美術館の学芸業務、クラフトホテル立ち上げ…と様々な経験を経て、祖父母の店を継いでいらっしゃいます。この土地でこのお店をはじめた先祖の思いや130年以上繋いできたお店への誇りが土台にあり、そして次の世代へ引き継いでいくことが津和野の伝統や文化価値の向上に繋がると考えたことが、継ぐことを決めたキッカケのようです。

「老舗」繋がりで、共感する想いがあると同時に見習いたいなと志保さんのお話を聞いて思いました。そして、「これからの想い」について質問すると…

俵種苗店という看板を残しつつ、暮らしの根っこは「種」にあると考えていて、種から作物を育て、料理し、器に盛り、食卓を囲み、誰とどんなことを語らいながら過ごすのか。心地よい空間づくり、アートが溶け込む日常。そして社会や人、環境に配慮したエシカルな暮らしの提案。循環するお店づくりや地域の活性化を目指しています、と答えてくださいました。

その言葉のとおり、行動され、2021年7月「アートギャラリー&レンタルスペースSHIKINOKASHA」をオープンされました。ここから楽しい循環が動き出しているので、これからが楽しみで見逃せないスポットです。
想いが言葉へと宿り、行動に繋がる「今の姿」を見せていただきました。

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俵種苗店の詳細はコチラをどうぞ^^
島根県鹿足郡津和野町後田口212
(平野屋から車で約1時間30分/駐車場あり)
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◆ エピローグ
世界的に有名な日本の某アニメ映画に出てくる、千〇の父のセリフのように「住んで都にするしかないさ。」の「都」になるタイミングはいつでしょうか?

このセリフの表現からUターンした私が感じ取った意味合いは、なんだか受動的だなと…「住み慣れる」かもしれませんが「都」にはならない気が…なんとなく。
では、都にするにはどうしたら良いのかとふと考えた時、それは「地元に対する“覚悟”」が必要なんじゃないのかなと。

「地元」は「生まれ育った土地」の意味もありますが「今、自分の住んでいる土地」という意味もあります。

「これからココにずーっと住んでやる!楽しんでやる!」という“覚悟”。
精神論ではないのですが、覚悟が決まれば、行動が生まれてくると思っています。

私のモットー「楽しく生きる」ために
・その土地の人と交流したい
・その土地をよく知りたい
・その土地をより良くしたい
という気持ちが沸々と…

思い返せば、都会・京都へ上洛した時も同じような想いや行動をしていたように思います。
島根にUターンするときも、覚悟をもって戻ってきたからこそ「知りたい」欲が湧き上がり、行動となり、人と繋がっているように感じています。
そうすると愛着が湧き、そこが「都」になってきているように私は思うのです。

人によりけりだとは思いますし、合う合わないだってあります。自分自身が行動した先でしかわかりません。だからこそ、まずは「覚悟」が必要だと思っています。
気軽に「合えばラッキー」「合わなければ、そのときはそのとき」と気持ちの切り替えができたらいいのですが、移住は人生が変動するビックイベントです。

不安でしたら、まずは旅行感覚で遊びに来たり、オンラインイベントに参加したりして、いいなと思ったら、定住財団を経由してみる。のんびり楽しくその土地、そこに住む人たちと出会ってからでも遅くはないとも思います。
人生何があるか分かりませんので、その偶然も楽しむのもまたしかりかと、私は思ってUターンした節があります。

夕日が長く味わえ、星空もキレイに広がるロマンチックな島根で「好き」に出会ってみませんか^_^?

さて、今回は最終回を前にしてなのか、何やら物思いに語ってしまいましたね^^;
過去から現在の石見地方を見た今回、次回(最終回)は「現在から未来のカタチ」をご紹介いたします。
窓から移り変わる景色を眺めるように見ていってくださったら幸いです。

島根県西部/石見(いわみ)地方には、日本遺産以外にも文化財など調べると沢山あることに気付きました。その土地、それを守る人がいるからこそ出会える奇跡に「ありがとう」

※今回のブログに掲載している素敵なバナー、石見神楽、景色の写真は、浜田市のカメラレディ・村上 真由美(むらかみ まゆみ)さんからご提供いただきました。

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【ペンネーム】平野 宗香(ひらの そうこう)
【移住市町村】浜田市
【UターンorIターン】Uターン
【移住前の居住地】京都府
【年代】30代
【お仕事】お茶・茶道具(有)平野屋(江戸寛政年間創業)
茶に関する商品開発、茶調合、茶・茶道具販売、体験イベント
出張講座、茶道教室、出店等
【好きなこと】何か(和菓子、料理、もの)を作ること
美味しいものを食べること、「楽しい」を探すこと
【Love shimaneとしてひと言】
広い空と海を見渡しながら夕日を長く楽しめる贅沢。大人になってより一層楽しめる場所、島根。海と山の両方の素敵な素材も最高だけど、それを活かしている島根の人・場所とこれからもっと出会っていきたい!

◆HP 平野屋 / はじめての方 (hiranoya-tea.com)
◆Instagram お茶の平野屋(@hiranoya_tea_official) • Instagram写真と動画
◆Facebook お茶・茶道具 (有)平野屋 – ホーム | Facebook