空き家の宿泊施設では、鍵の受け渡しに関する不安を解消する次世代型スマートキーボックス導入も

igloohomeの次世代スマートキーボックス

もちろん、いかにきちんと仕組みを整えようが不特定多数が出入りする宿泊施設運営には常に懸念材料はある。たとえば、空き家を利用した宿泊施設の場合、鍵の受け渡しは厄介だ。たとえば、数字4桁の組み合わせで施錠するアナログタイプのキーボックスを利用して受け渡しする場合、番号を記憶して何度も侵入する利用者がいないとは限らない。この問題を解決するために同社が導入しているのが、シンガポールのigloohome社が開発した次世代型スマートキーボックスである。

本製品の最大の特徴は、期間限定の暗証コードを発行しゲストに利用してもらえることに加えて、管理者はその利用履歴をスマートフォンアプリで確認できることだ。沖縄県恩納村の施設も本製品を導入し、深夜帯や未明のカギの受け渡し業務が楽になったと現場スタッフは喜んでいるという。奥野さんは、「こうしたプロダクトの導入をはじめ、いま流行りのスマートホームデバイスを導入することで、東京にいながらにして地方の方々をサポートするための施策は常に刷新しています」と説明する。

地方のいい場所やいい人を寄せ集めて、価値がぎゅっと詰まった社会を作っていきたい

そもそも「mister suite」の原点にこの考え方がある。SQUEEZE代表取締役CEOが前職でシンガポールに勤務時代、実家の旭川で不動産業を営む母親に、当時アメリカで流行の兆しを見せていたAirbnbへの物件掲載・問い合わせ対応をリモートでサポートしたことに端を発したサービスなのだ。マッチングサービスで清掃員を見付けてメッセージのやりとりをおこなうことから始めたが、利用物件が増えるにつれてミスも起こりやすくなったため、専用のシステムを開発して、カスタマーサポートと併せてサービスを提供するという今のスタイルに辿り着いた。

「我々は東京のシステムIT会社ですけど、6月15日の住宅宿泊事業法の施行や旅館業法の緩和によって今後さらに加速するこの領域をサポートすべく、民泊のプラットフォームになっていきたいと思っているんです」と奥野さん。その思いは、SQUEEZEの社名にも込められている。

「SQUEEZEには”ぎゅっと密集させる”という意味があるんですけど、我々が目指すのはまさにこれ。日本はインバウンド観光で盛り上げっていますが、地方の魅力がたくさん存在しているのにうまく活用されていないことが多い。それを有効活用したいし、いいものをうまく組み合わせることで価値が詰まった社会にしたい。それを実現するためのサービスを提供していくことをミッションとして掲げているんです。宿を提供する人の日常がシンプルに。宿に泊まる人の非日常をハッピーに。そんな想いで日々の事業に向きあっています。」

「時代の変化を捉え、空き家や空きスペースを有効利用することで付加価値を生み出そうとすると直面するのが「労働人口不足」というもう一つの社会的な課題です。こうした人材不足を解消するためには、地域の人々がより柔軟に安心して働くことが出来るプラットフォーム創り、多様な働き方を受け入れていくことが必要であると考えています。」

ミッション遂行のために掲げている言葉は「Hospitality Tech(ホスピタリティーテック)」。ホスピタリティーをテックサイドで強力に支える同社の存在が、民泊だけでなく宿泊業界の発展を今後さらに活性化させていくに違いない。

取材・撮影・文:松本玲子
素材提供:SQUEEZE