何もないベッドタウンだからこそ、人が大事
ー職員が地域に出ていくのと同時に、市民を巻き込む動きにも力を入れておられますね。
生駒は大阪のベットタウンで、地元出身者は数え方にもよるけど2割もいないくらいです。地縁のないサラリーマン世帯にいかに「生駒いいよね」って言わせるか、相当大変です。うちは、中途採用で入庁した全国的に有名な職員がいて、広報誌づくりから丁寧に変えていって「生駒の素敵なところ」を情報発信しています。生駒の良いところをみんなで見つめ直して、その人たちに「生駒が好きならなんかやってよ」って「市民で動かせる街を作ろう」という形で動いてもらっており、それが生駒の今のキーコンセプトですね。
魅力創造課を設置し、こういった取組みを地道にやってきたことで、「生駒が好きだ」「好きを街に恩返ししよう」という人はすごく増えてます。大阪に近いので、市民は放っておくと大阪に仕事や遊びに行って生駒には寝に帰るだけになってしまいます。それよりも生駒を見つめ直して、市民自身が「生駒市でこんなことしようと思ってます」とか、ストーリーづくりを進めてもらっています。
「市民が汗をかくことを喜んでくれる」
自治体3.0のまちづくりを目指して
ー提唱されている「自治体3.0」について教えてください
市民に汗かいてもらった方が市民も喜ぶし、生駒を好きになって勝手にどんどん動いてくれるんですよね。僕らからしたら一石二鳥ですよね、汗かいてるのに喜んでくれるって。これまでの行政が市民の意見を吸い上げて公共サービスを提供する枠組みを僕は「自治体2.0」って呼んでいます。そこから市民と行政が協働する「自治体3.0」の枠組みに持っていきたい。生駒にはパワーのある人たくさんいるから、そういう人たちの力を使って「自治体3.0」をやっていこうと考えています。
生駒って定住希望率が85.7%くらいあるんです。全国平均が65%くらいなんで、20%も違うっていうのはすごいことだと思っています。だからこそ汗かいてくれる市民もたくさんいます。そういった市民の取組みを丁寧に拾い上げて、広報でPRしています。
変化のスピードに職員がついていけるか
ー役場の雰囲気や、職員全体の変化の度合いはいかがですか?
ですから、職員の方がむしろこのスピード感についていけてるのかが課題です。僕もずっと言ってるので、だんだんと理解して町に出てくれたり市民と仲良くなったりしてくれています。基本的に変化に慣れていないので「副業」って言った瞬間に「副業って公務員しちゃいけないですよね」って。副業って基本的にやってもいいんですよ。本業の時間以外だったら。今は農業とか不動産だけが例外として示されているんです。それは国の方が遅れていると思います。
公務員の枠の中だけで考えていたら、公務員制度は崩壊すると思います。AIも出てきている中、民間企業に転職してもいけるくらいの専門性を持っていかないと難しいです。たとえば今年新卒で入った職員が40-50歳なったときに、終身雇用なんて絶対ないわけですから。社会に放り出されて路頭に迷うような後輩をつくりたいかと職員には言っています。副業もそうですが、「稼ぎ」と表現しています。行政のプロフェッショナル集団として、市役所も稼がなきゃいけないんです。
変化のスピードを上げるために、中途採用を増やしています。特に就職氷河期にあたる40歳くらいの人は少ないですから。新卒採用もしているので、いろんな視野やバックグラウンドを持っている職員が混在してきている。なので、彼らを育成するミドル層がポイントです。ミドル層は20-30年働いてきて、公務員の価値観になっている。そこから脱却して、自ら地域に飛び出していけば「自治体3.0」になっていくと思うんです。まずは市の職員のほうから市民に近づいて、結果として市民も行政に近づく。ミドル層が動いてくれれば、そういう方向への推進力になると思っています。