記事のポイント
- 高知県民のクリエイティビティはIT・コンテンツ産業拡大の強みになる
- 株式会社divが地方初のプロエンジニア養成講座を開講
- 目指すは10倍規模。現在の課題と県知事の期待とは
尾﨑知事:IT・コンテンツ産業は、高知県の強みを生かせて弱みがあまり関係ない分野です。たとえば製造業だと地理的な制約がありますが、IT・コンテンツ産業ならこれが不利にならない。一方で、強みであるクリエイティビティが生かせます。
高知県 尾﨑正直知事
真子さん:クリエイティビティをITと掛け合わせることで、あらゆる産業に進出できます。たとえば、僕が知っているあるエンジニアは今、800億円ぐらいの資産を預かる資産運用サービスをつくっています。薬剤師向けのアプリをつくることで医療業界に進出することもできる。農業やインバウンドの観光など、僕ら東京の人間が見えていない部分とテクノロジーの掛け合わせによって、生産性を向上させたり、課題解決を提供する事例は、これからどんどん増えていくと思います。
株式会社div代表取締役 真子就有さん
尾﨑知事:高知県では、一次産業の事業者や福祉・防災等の関係者のみなさんとIT事業者のみなさんに集まっていただいて、最近IoTラボ研究会というコラボレーションの場をつくりました。21のプロジェクトが動いていて、うち2つが製品化されました。
ー高知県民はクリエイティブなのですね。
尾﨑知事:高知県民は、よさこい祭りに象徴される創造性を持っています。よさこい祭は、「型」が決まった多くの祭りとは異なり、たった3つの決まりさえ守れば、あとは自由にやってください、という祭りなんです。わたしたちは、そういうお祭りを開発し、全国に広めていった歴史を持っています。夏のお祭りを見ていただくと、全てのチームがクリエイティビティを競い合う姿がそこにあります。
ーかねてから、IT・コンテンツ産業の県内集積を進めてこられました。
尾﨑知事:今のところ、県内に15社、立地いただいて、180人の方が働いておられます。県としては、これを10倍以上に大きくしていきたい。目標に向けて、やはり即戦力人材が必要ということで、このたびIT・コンテンツアカデミーに専門講座を新設しました。
ー人材育成への本気度がうかがえる内容です。
尾﨑知事:IT・コンテンツアカデミーは2部構成です。1つは基礎講座で、中・高・大学生のみなさんが初歩の初歩から学べる講座です。もう1つは専門講座でプロになりたい方向け。4ヶ月学べば、ほぼプロとして働けるところまで到達していただける講座や立地していただいている企業さんのニーズに合わせたオーダーメイド型の講座があります。産業振興に直結する人材を育成するという考えから、4ヶ月という長期の「アプリ開発人材育成講座〈エキスパートコース〉」を創設しました。
真子さん:プログラミングの基礎講座であれば、さほど珍しいものではない。でも、プログラミングの基礎と就職レベルの間にはかなりのギャップがあります。誘致された企業さんのニーズありきで、そのギャップを埋めるという取り組みを実際に動かしているのは本当にすごいなと思います。
尾﨑知事:既存の県内教育機関の実情を見ると、高知工科大学があるのですが学生の8割が県外の人なんですね。卒業したら高知県から出ていく前提の人が多い。もちろん、自然にまかせていても、県外でエンジニアになって帰って来てくれた人もいるし、(県外出身のエンジニアを)連れてきてくれた人もいます。ですが、IT・コンテンツ産業を10倍の規模にしようと思ったら、やはり自力で育てるしかないんです。
ー今回は30名の募集ですが、応募状況はいかがですか?
尾﨑知事:募集開始から20日で定員をはるかに超える45人の応募をいただき、早々に募集を締め切りました。来年度以降も、50人、60人と、もっともっとやっていきたい。
真子さん:「TECH::EXPERT」を地方都市で開講するのは初めてです。30人の方に、ゼロから4ヶ月間で、Webアプリを開発するためのプログラミング技術や設計技法、サーバー構築、運用方法などを総合的かつ体系的に教え、1人でサービス開始までできるようになっていただくという大仕事。一発勝負というよりは、改善しながら長い目で取り組んでいけると、よいモデルケースになるのではないかと思っています。
尾﨑知事:行政もPDCAをまわせるように心がけています。都度、ご指摘いただきながら、改善していきたいですね。
土佐まるごとビジネスアカデミー2018
アプリ開発人材育成講座<エキスパートコース>概要 ※募集は締め切りました
- 場所:高知県立大学永国寺キャンパス 地域連携棟 B202 講義室
- 期間:7月中旬〜11月中旬
- 対象者:高知県内の求職者、大学生・専門学校等高等教育期間の在校生・新卒(新規高等学校卒業者は除く)、高知県への U・I ターン希望者
取材:鍋屋直明
文:浅倉彩