和歌山県が、2018年4月から企画している起業・就農、就労の体験プログラムが 「わかやま しごと・暮らし体験」です。

利用者が希望する事業者のもとで「しごと」を体験しながら、周辺地域の先輩移住者や地域住民の方との交流を通じて「くらし」の体験を行い、移住後の生活をイメージすることができます。

体験費は無料です。今回はその“体験エピソード”をご紹介します。

 

体験者
泉 美也子さん
[兵庫県]→[和歌山県 田辺市]


兵庫県西脇市出身。2021年2月から田辺市のコミュニティFM局「FMTANABE」で月曜日のパーソナリティに。自ら発掘・体験した田辺市の魅力をリスナーに届ける。週末は大阪~和歌山県白浜エリアに出張し、ウェディングシンガー(聖歌隊)として活躍している。


受け入れ先
水野 ゆたかさん
ダル・ボスコ・ジョバンニさん


2010年に夫婦でイタリアから来日、京都で店を構えたのち、水野さんの故郷、和歌山県へ。自然に惚れ込んだ田辺市で「熊野古道ワイナリープロジェクト」を立ち上げ、ワイン醸造用ブドウ栽培、イタリアンレストラン、ゲストハウスを営む。

 

 

 

「しごとくらし体験」に申し込んだ理由は?


新型コロナウイルスによる暮らしの変化がきっかけでした。当時私は兵庫県尼崎市でウェディングシンガー(聖歌隊)をして

いたのですが、多い時には週10式くらいあった仕事がゼロに。さらに、ステイホームでマンションの自宅で歌の練習ができなくなってしまったんです。
「歌える場所を探したい」という気持ちで引っ越し先を探し始めました。
和歌山県は、ほとんど訪れたことがなく、だからこそ行ってみたい場所でした。
調べているうちに「わかやまLIFE」のサイトを見つけ、そこで「しごとくらし体験」を知りました。

体験先にこちらを選んだのはなぜですか?


山での暮らしを体験したかったんです。熊野古道ワイナリープロジェクト(以下古道ワイナリー)と、もうひとつ龍神村の映像作家さんのところにも続けて体験しに行きました。

ジョバンニ
私たちの「しごとくらし体験」第一号が美也子さん。どんな人が来るのかな?と全然予測できずドキドキしていました。「あの時、美也子は髪が青かったんだよ」(水野さん通訳)


違う違う、ピンク色っぽい金髪ショートだったんです。駅まで迎えに来たジョバンニが、変なのが来たぞって顔をしてました。
ジョバンニと、英語もイタリア語も喋れない私が、初対面で車内に二人きり。
なんとかコミュニケーションしたくて、「結婚式で歌っています、イタリア語の歌もあります!」とひたすら歌っていました。

水野
その後ジョバンニが会う人会う人に「美也子はオペラ歌手だ」と言っちゃって、否定するのが大変そうだったよね。でも、彼女は本当にいろんなところで歌ってたんですよ。
草むしりとか掃除とかしてる時にも歌声が聞こえてくるの。
私たちは「歌声があるっていいね~」なんて話していました。


日常的に歌えなくて抑え込んでいたから、ふとした時に歌っても、ここでは怒られず、むしろ喜んでくれることがすごく嬉しかったですね。

どんな体験をしましたか?体験の中で印象に残ったことは?

水野
うちは、本当にその時々でお願いしてるんです。これまで5人いらっしゃったけど、全員内容は違いますね。
美也子さんは、ブドウ畑での農作業とかヤギのお世話とか…2日目には家の草むしりとかしたんじゃない?


庭の柵にツタが一面這っているすごい状態の古民家に行って、ジョバンニに枝切り鋏をポンと渡されて結構放っておかれた(笑)。
でも私、そういうの好きなんです。
目的を言われて丸投げされると燃えちゃって。よじ上ってツタを切って、一面綺麗にしました。なかなかの肉体労働でした!

「しごとくらし体験」から移住までの経緯を教えてください。


私が体験に来た当時、おふたりともすごく忙しそうだったんです。
ここなら、私が何か手伝えることがあるんちゃうかなと思って、自宅に帰ってすぐに電話しました。

水野
連絡をもらった時はさすがにちょっとびっくり。
また来たいとは言ってくれてたけど「もう来るの!?」って(笑)。
でもうちはいつでも手伝ってくれる方は大歓迎だし、美也子さんはお人柄も良くて、いるだけで周囲をパッと明るくしてくれるからありがたくて。ジョバンニも、やったーって喜んでたよね。


数週間後に戻ってきて、離れに住んで手伝い始めました。
大阪での仕事もあったので、はじめは尼崎の自宅と二拠点生活。
徐々に荷物を運び入れて、生活の拠点を移していきました。
2~3カ月離れに住んでから、年末には市街に移りひとり暮らしを始めました。
くまのこどうワイナリーさんの娘さんの紹介でFM TANABEの番組にゲスト出演したのもその頃です。
翌年2月にはパーソナリティを務めることになり、やっと田辺の地に足が着いたように感じました。

移住後の暮らしはどうですか?


都会での暮らしは便利でしたけど、その分何かに組み込まれているようで、自分を消耗していました。
ここは、生活する場所として、とにかく不安がない。コミュニティがあって、自分がそこにいる感覚だから。
田辺の実家、古道ワイナリーの存在も大きいですね。

水野
私たちも美也子さんには家族感覚で頼りっぱなし。忙しい時は「美也子さんにとりあえず電話してみよう!」となっているんです。


行ったら役に立てる場所があるのは嬉しいですよね。
こちらに来てから、もう一度新しい人生を送っているように感じます。
昨年は、田辺の人と結婚もしました。彼は私をいろんなところに連れて行って、街の魅力を伝えてくれます。
この地のスピリットがわかってきて、ラジオでの発信に生きていますね。
移住者目線は今の私が持っている価値ですから、楽しいと感じたことをそのまま伝えて、リスナーが田辺をもっと好きになるきっかけになれたらいいなと思っています。

泉さんが体験された熊野古道ワイナリープロジェクトのしごと・暮らし体験は以下のページからお申し込み可能です。

熊野古道ワイナリープロジェクト|しごと・くらし体験

みなさまのご参加をお待ちしています。