今回取材したのは、富良野市内にお店を構える、地元の方に大人気の洋菓子店 Furano Patisserie tronc ー ふらのパティスリートロン加野 裕介(かの ゆうすけ)さん。ふるさと納税には、定番焼き菓子の「きのわ」というクッキーもなかをご出品されています。
富良野市のお隣、中富良野町出身の彼が地元 富良野で洋菓子店を開くことになった経緯には、高い計画性と行動力、そして運を引き寄せる力がありました。
米粉を使った小麦粉不使用の「きのわ」の誕生秘話にもぜひ注目してください。

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お店の外観

逃げ道を封じて突き進んだパティシエ修行時代

ー富良野高校卒業後は札幌の大学へ進学し、その後も札幌の一般企業に勤められたとのことですが、富良野で洋菓子屋さんになったきっかけを教えてください。

「就職した後も、長男ということや親が暮らしていることから、いずれは地元に戻りたいと漠然と思っていました。ただ、地元に戻っても自分のやりたい仕事がないだろうと感じていたので、大学で経営を学んでいたこともあり、自分で仕事を作ろう、起業しようと考えました。とは言っても特に何かできる訳でもなく、手に職をつける必要がありました。
そこで、実家が昔いちご農家をしていたり、いちごに関する仕事をしていたことから、『いちごを活かした事業ってなんだろう?』と考え、『ケーキ屋だ!』と思い付いたことが始まりです。
修行をするために新卒で入社した会社を8ヶ月で辞めて、たまたま求人が出ていた富良野の洋菓子店「フラノデリス」に応募しました。当時はこんなお店が富良野にあることを知らず、富良野に戻れるしいいなと思って受けたところ、合格することができました。」

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ーパティシエとしての修行期間が開始したわけですね。どんな想いを持って修行されていたのでしょうか?

「修行期間は10年と決めていたんですよ。当時22〜23歳で、この先のライフプランを考えた時に30歳くらいには結婚していたいな、40歳までにはある程度の軌道に乗せたいなと思って、修行は20代の10年間というタイムリミットを設けました。
自分は製菓の専門学校を卒業した人と比べてアドバンテージがあるという自覚があったので、面接の時も『10年後に独立するので、短期間で技術を身につけたいんです!』と伝えていました。

フラノデリスでは本当に様々なことを経験させてもらいましたね。休みの日は家でボーッとしていてもしょうがないのでお店に行っていました(笑)
出勤日には決められた仕事をする必要がありますが、休みの日に行くと、洗い物を手伝いながら新しいことや違うポジションの仕事を見ることができるんですよね。見習いとして働いているので、文字通り“見て習う”を実践していました。

フラノデリスでお世話になった後、札幌の有名菓子店を経て、32歳の時に独立しました。
お店の場所は札幌や旭川といった人口の多いところも視野に入れていたんですが、悩み抜いた末、当初考えていた富良野に決定しました。」

▼フラノデリス 藤田さんのインタビューはこちら

https://furano-city.note.jp/n/n5a4e60b51140

ー20代前半の頃に計画したライフプランを着実に歩まれているんですね。その秘訣はあるのでしょうか?

「本当にたまたまなんですよ。自分は運がいいなと思ってます。(笑)
もっと早くに独立することもできたと思いますけど、独立するにはお菓子作りだけでなく、経営など他の勉強も必要だったので、結果的に10年掛かったんです。独立する時も家族に援助してもらったり、困ったことが起きるとタイミング良く友人・知人に助けてもらえているなと感じます。
修行期間中は周囲の人に目標を話したり、後ろ盾がないことで『やるしかない!』という気持ちが強かったと思います。
製菓の学校を出ておらず知識ゼロの状態だったので、参考書をバンバン買って洗いざらい読み漁っていました。頭に知識が入っていたら、実際に作る時に何も知らない状態よりはある程度できるようになる。10年間はそんな日々の繰り返しでした。」

“トロン”を体現する看板商品を作るために

ーお店の名前「トロン」の由来を教えてください。

「“tronc ー トロン”はフランス語で樹木の幹や切り株という意味です。
お店の内装を山に囲まれた富良野らしく、木を使った暖かくシンプルな雰囲気にする予定だったことと、お店のコンセプトを“富良野という地域に根差した、観光客も地元の方も気軽に来てもらえるようなお菓子屋さん”としていたことから、コンセプトの要素も含む、“木”に関連するフランス語を探していました。フランス語はお菓子屋さんが店名によく使っているんですよね。
ノートに色んな言葉を書いていたところ、“トロン”という言葉が出てきて、地域に根を張って、地域に根差したお店をやろうと考えている自分にぴったりだなと思いました。また、店名は3文字が言いやすく覚えてもらいやすいという話もあったことから、“tronc ー トロン”に決定しました。」

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切り株をモチーフにしたお店のロゴ

ー定番焼き菓子「きのわ」ができた経緯を教えてください。

「オープン当初は生菓子のみの提供だったのですが、1ヶ月くらい経ってお客さんから『焼き菓子はないの?』と言われたことがきっかけですね。ドーナツも作っていたんですが、手土産として使えるような形で提供していなかったので、ギフト用の焼き菓子を作ろうと考え始めました。
実は自分のお店を出す前から、看板商品を作りたいと思っていたんですよね。『このお店といえばこれ!』というお菓子があるお店は繁盛しているというのが定説だったことや、観光地の富良野はお土産需要があるので、そうなると日持ちのする焼き菓子が最適だなと考えて、ずっとアンテナを張っていました。

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ショーケースに並ぶケーキ インタビュー中も絶えずお客さんが来店していました

お店の切り株のロゴが決まった時に、切り株をモチーフにした看板商品ならお客さんがお店を連想しやすく看板商品ということが伝わりやすいと思い、最初はバウムクーヘンを検討したんですが、機材のサイズが大きく金額も高くて断念。
その後、観光地にはクッキーのお土産が多くて人気、でもアレルギーやグルテンフリーの人のために小麦粉を使いたくない、という考えから米粉を使っためちゃくちゃ美味しいクッキー作ろうと思いました。
それ以前に、もなかを作る業者との打ち合わせで、切り株柄のもなかを作れると聞いていたことを思い出し、切り株のもなかを使ってクッキーを作れないかと考えたんですよね。」

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富良野クッキーもなか「きのわ」

ー他のクッキーとは一線を画す「きのわ」の特徴の一つ、サクッフワッとした軽い食感の秘密を教えてください。

「修行してきた中で、『普通とは逆を行け』という考えを教えてもらいました。要は一般的なザクッとした重めのクッキーでではなく、ラスクのようなサクサク軽い食感のクッキーを作ったら面白いものができるのでは?と考えたんです。
だから食べた時に『なんだこれ?!』と驚くくらいサクッとした食感のものを作ったんですよね。期待を裏切るではないですが、普通の逆を行くと印象に残りやすいだろうなと思って作りました。

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使っている米粉の原料は、富良野の大石農園さんから、“ななつぼし”という品種を産地も限定して玄米の状態でいただいています。
今は製粉した状態のものが販売されていますが、当時はまだ販売されていなかったため札幌の製粉会社に依頼していました。でも送料も手間もかかるため、店内で自ら製粉するようになりました。

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フラノマルシェ(富良野市内にあるお土産等を販売する観光施設)でも販売しており、年々出荷量が増えています。今年の7・8月には観光シーズンということもあり、たくさんの方に手に取っていただきました。
「きのわ」は看板商品として力を入れているので、現在販路拡大中です。今のところ地元の方にはある程度イメージが付いてきたかなと思っているので、白い恋人やマルセイバターサンドのような北海道を代表するお菓子として、どんどん育てていきたいと思っています。」

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ギフトセットのラインナップ

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