新千歳空港から車で約20分ほど、北海道の南西部にある安平町(あびらちょう)。交通の利便性と豊かな自然環境が特徴のこの町では、2017年より「子育て・教育」を優先政策分野に定め、「日本一の公教育のまち」の実現に向けた取り組みを推進しています。その象徴と言えるのが安平町早来地区にある「はやきた子ども園」や小中一貫校の「早来学園」。今回はこの2つの教育施設の魅力に迫るとともに、安平町に移住をした一児の母・山本 裕子さんに聞いた子育て環境の魅力を紹介します。

「まちぐるみ」で子どもを育てる文化が根付く町

安平町は日本で初めて「日本型子どもにやさしいまちモデル(Child Friendly Cities Initiative、通称CFCI)」実践自治体として、ユニセフから認定を受けました。「子どもがあたり前に意見できるまちづくり」「安心して遊べるまちづくり」を目指し、子どもたちの意見を聞きながら、子どもの主体性を引き出す機会を作っています。

2021年に「日本型子どもにやさしいまちモデル」実践自治体に認定

安平町の教育の特徴は、教育の場を学校や教育機関・各家庭の中だけに留めるのではなく、自治体・法人・地域コミュニティなど「まちぐるみ」で推進している点です。地域全体で教育まちづくりを考えるこの方針が浸透しているため、安心して子育てができ、子どもたちの「生きる力」を養う機会を地域全体で作っています。住民が子育てに自然と協力をする文化が根付いているのです。

そんな安平町のまちづくりを象徴する取り組みとして、全ての年代の人に”遊び・学び・挑戦”の場を提供する教育パッケージ「あびら教育プラン」があります。子どもが主体となって企画・運営するイベントを通じて、様々な世代の人たちが深く関わり合い、町全体を活気づけるきっかけとなっています。

また、追分地区・早来地区にある2つの認定こども園は子育て支援センターや学童保育施設が併設しており、気軽に送り迎えや子育て相談がしやすい魅力があります。安平町の教育面の取り組みが話題となり、近年は「みんなで子どもを育てる文化が根付いている」「アットホームで子育てしやすい」など、移住を検討する子育て世代から注目を集めています。

こども園では、子育て中の親子に寄り添った支援をワンストップで提供

自らを生きる子どもを育てる「はやきた子ども園」

安平町・早来地区の認定子ども園「はやきた子ども園」

安平町には2つの公私連携・幼保連携型の認定こども園があり、そのうちの一つが早来地区にある「はやきた子ども園」です。認定こども園とは、幼稚園・保育園の機能、さらに子育て支援の機能を合わせ持つ施設。1歳前から子どもを預けることが可能で、子どもたちは一貫したカリキュラムのもと教育・保育が受けられます。

子どもが「遊び」の中から学び、自ら育つよう寄り添っている

はやきた子ども園の教育理念は「自らを生きる」。安平町内の自然に囲まれた豊かな環境の元、自らを主体的に生きる子どもたちを育くんでいます。

「1人で手綱を握って乗馬」を目指し、馬との触れ合いを楽しむ

子ども園の園庭は安平町に住む人によって手作りされています。はやきた子ども園の園庭は、ぽんちゃんとあんちゃんという2匹の馬と、ニワトリがいることが最大の特徴です。子どもたちは乗馬体験をしながら、生き物を大切にする心を養うとともに、全国的に有名な馬産地でもある安平町の産業・文化を感じることができます。

顔認証自動ドアの導入や出欠報告のデジタル化など、IT導入にも積極的

またテクノロジーを積極的に取り入れ、保護者との連携や子どもたちの安全の強化を行っているのもはやきた子ども園の特徴です。専用のスマホアプリを見れば、園内の活動の様子を確認したり、担任とやり取りできます。正面玄関には顔認証自動ドアを取り入れ、保護者の円滑な送迎をサポートすると同時に、部外者の侵入を防いでいます。スムーズなコミュニケーションの元、安心して子育てができる環境を整えています。

令和5年度開校 自分が“世界“と出会う場所をコンセプトに掲げる「早来学園」

令和5年4月に開校した義務教育学校「早来学園」

2018年9月6日に起こった北海道胆振東部地震により、安平町・早来地区の中学校校舎は大きな被害を受けました。その後中学校の再建を目指し、町民参加型のワークショップ「新しい学校を考える会」が発足。町民たちの声を聞きながら、令和5年度に1年から9年生がともに学ぶ義務教育学校として学校「早来学園」が誕生しました。

早来学園のコンセプト

早来学園のコンセプトは「自分が“世界“と出会う場所」。安平町の自然や地域文化、人に触れ、多様な価値観や考えと出会いながら、学びを深め、夢を育める場を目指しています。

高学年と低学年の生徒がいっしょに遊ぶ様子も見られる休み時間の風景

早来学園では、小学1年生から中学3年生までの子どもたちが一つの校舎で学校生活を送ります。年齢の離れた児童と触れ合う機会を設け、子どもたちの主体性や支え合う心を養っています。

早来学園の校舎

校舎の設計に関わったのは、デジタルの専門家集団「チームラボ」や、学校建築のエキスパート「教育環境研究所」、道内の学校建築を多く手がける「アトリエブンク」など、様々な分野のプロフェッショナルたち。季節の変化を感じ、友だちとの交流が自然に生まれる場づくりが行われています。

子どもたちと地域の人が集う図書室

また学校は児童だけではなく地域住民が日常的に使えるように開放しており、校内の図書室は地域住民にとっての図書館兼コミュニティスペースになっています。約35,000冊の本が置かれ、様々な年代の人と交流できる図書室は、子どもたちにとって新しい”世界”に出会える場所となっています。

安平町に移住した一児のママのリアルな声をご紹介!

ここでは安平町に移住し、子育てと両立しながら安平町のプロモーション・パパママコミュニティの運営などを行っている山本さんにインタビュー。山本さんのお話を通じて、安平町で子育てする魅力や地域の暮らしぶりについて詳しくご紹介します。

山本 裕子さん【プロフィール】

2016年4月より、地域と協働してまちづくりを行う株式会社FoundingBaseに参画。東京→大分→北海道と3拠点を経て、現在は北海道安平町にてシティプロモーション事業に従事。移住施策・エリア放送・町公式SNSなどの企画運営に携わる。

旦那さんの仕事がきっかけで安平町に移住し、現在は一歳のお子さんを持つ山本さん。東京・大分などの複数エリアに住んでいた経験のある彼女ですが、安平町での暮らしは中でも充実しているとのこと。新千歳空港からのアクセスの良さ、快適に過ごせる気候のほかに、助け合いができる「人」のあたたかさが最大の魅力だと語っています。

産休・育休中のママは社会との関わりがなくなり、孤独を感じやすいと言われています。しかし安平町にはコミュニティスペースがあり、そこに行けば常に誰かが声をかけてくれて、子どもと遊んでくれる状況だったそう。「地域に馴染めるか不安でしたが、よそ者扱いされることなくあたたかい目を向けてくれた」と当時を振り返ります。また町内のママパパコミュニティでの交流も楽しく、心の支えになったのだとか。地域の人と協力しながら、まちぐるみで子育てが行われている様子が伝わります。

「安平町に貢献したい」という思いでコミュニティ運営に取り組む山本さん

そんな山本さんは現在、株式会社FoundingBaseで安平町の移住プロモーション支援を行いながら、ボランティアでコミュニティスペース「ENTRANCE」の運営・ママパパコミュニティでのイベントの企画を行っています。自治体主導ではなく、地域の子どもから大人までが主体となって「安平町をより良いまちにしよう」と取り組んでいます。

自身のお子さんも通う「はやきたこども園」の教育環境については、「子どもの心と体を育む環境が作り込まれている」とのこと。「園内には馬がいたり、畑があったりと、さまざまな経験ができる機会があります。さらに、園庭にあるハシゴやボルダリングといった遊具はすべて手作り。握力やバランス感覚を鍛える仕掛けがたくさん用意されているからか、都会の子どもたちと比べてみんな足腰が強いんです」。

早来学園の開放スペース「まちのリビング」

令和5年度に開校された小中一貫の義務教育学校「早来学園」にも、子どもの生きる力を育てる工夫があります。1年生から9年生(中学3年生)までという幅広い年代が通うほか、地域住民にも一部スペースを開放しており、同世代以外の人と関わる機会が自然に生まれています。「7~8年生(中学1〜2年生)の子が1年生の子の面倒を見たり、育休中のママと昼休み中の児童が話をしたりする中で、人を思いやる心を養える」と、山本さんは校内の子どもたちの姿を語ります。

安平町には、保護者にとっても子育てしやすい環境が整っています。早来学園ははやきたこども園と隣設しており、歳の離れた兄弟を持つ家族でも送り迎えがしやすいです。また園の先生とのコミュニケーションや連絡帳などもICT化が進み、子育て・園の運営にかかる事務的な負担が軽減されているようです。

安平町では移住を検討している人向けにオンラインツアーを開催しています。オンラインツアーの企画にも携わっている山本さんによると、ツアーでは子ども園を中継し、園内の子どものリアルな姿を見ることができるのだそう。

最後に山本さんは「子どもたちが遊んでいる姿を見ていただきながら、ご自身のお子さんがどんな風に過ごせそうか想像していただけると嬉しいです」と笑顔で話してくれました。

安平町の子育てを体感できるオンライン移住ツアーを開催!

安平町では、移住を検討する人向けにオンラインツアーを定期開催中です。当日は「早来学園」「はやきた子ども園」の詳細や、子ども園の園長による運営方針の説明があり、安平町での子育てや生活をイメージできる内容となっています。

移住定住に興味のある方や、安心できる子育て環境を探している方は、ぜひツアーに参加してみてはいかがでしょうか?

【移住オンラインツアー詳細】
開催日時:12月9日(土) 10:00~12:00
開催場所:オンライン
参加費:無料
ツアー申込締切:12月3日
問い合わせ先:一般社団法人ENTRANCE  070-3139-0374(担当:東條)

当日のプログラム(プログラムは変更になる場合があります)
・はやきた子ども園の園内ツアー
・安平町の説明
・早来学園の説明
・あびら教育プランの説明

◇こんな方にオススメ!
-地方移住を検討している
-子育てに最適な教育環境を探している-自然豊かな場所で子育てをしたい
-町にどんな人がいるのか気になる
※移住検討をしている子育て世代の方が対象となりますので、視察目的の方はご遠慮ください。