豊かな生活を考えるとき、おいしいごはんを楽しむことを大切にしたいと考える人も多いのではないでしょうか。福島12市町村には、地域で住民同士の交流の場にもなる、魅力的な「まちのごはんやさん」が増えています。まちのごはんやさんについて聞くなら、実際に暮らしている人に聞くのがいちばん。今回は、福島12市町村の暮らしを楽しんでいる4人の方におすすめの飲食店を紹介してもらいました。

素材にこだわる優しいごはん「Heart Beat Base」

おばんざいランチ(内容は日によって変更あり)

南相馬市で暮らす蒔田志保さんがおすすめしてくれたのは、「Heart Beat Base」。福島県平田村出身の宗像さんご夫婦が、関東から南相馬市に移住し、2024年4月にオープンしたばかりの話題のお店です。ご夫婦が気に入った古民家をリノベーションしたというお店に入ると、おいしそうなにおいが漂ってきて、料理への期待も高まります。

蒔田さんのおすすめは、木曜日の「おばんざいランチ」。野菜をたっぷり使ったおばんざいの小鉢が、トレーの上に所せましと並びます。「クリーミーな味付けのおからサラダが絶品です」と蒔田さん。

火曜と水曜に提供しているスパイスカレーは、旬の野菜を使用した、素材のおいしさを感じる一品です。どのメニューも「美味しい、ほっとする味で食べた人に幸せな顔になってもらいたい」という宗像さんの想いが詰まった優しい味です。

古民家ならではの居心地の良さも、Heart Beat Baseの魅力の一つ。気さくな宗像さんが作り出すアットホームな雰囲気で、一人の時間も、友達や家族との団らんの時間も楽しめます。

店内にある宗像さんの本のコレクションも大好きだという蒔田さん。「雰囲気と居心地が良すぎて、時を忘れてあっという間に時間が過ぎてしまいます」と教えてくれました。

■Heart Beat Base
所在地:〒975-0051 南相馬市原町区牛来字大塚5-3
TEL:050-1204-7226
営業時間:ランチ11:30~14:00(土曜は12:00~)ティータイム14:00~16:00。
土曜は予約制でディナーあり。18:00~20:00
定休日:金・日・月曜
詳しい情報はInstagram(@heart_beat_base)へ。

写真はいずれも蒔田さん提供

ふらっと立ち寄りたい「喫茶ヤドリギ」

ブレンドコーヒー(付け合わせのビスコッティ)とチーズケーキ

楢葉町の宇佐見采花(あやか)さんが案内してくれたのは、「喫茶ヤドリギ」です。店主の森亮太さんは岐阜県出身。大学卒業後に楢葉町に移住し、地域おこし協力隊などを経て2024年4月にお店をオープンしました。

もともとはスナックだった店舗をDIYして喫茶店にしたという同店。扉を開くと、レトロな内装の落ち着いた空間が広がります。

メニューを開くと、どれも「地域でつながりのある方から仕入れをしたい」という森さんの想いが見えてきます。宇佐見さんがまずおすすめしてくれたのは、「ブレンドコーヒー」です。いわき市のカフェ「SONS」と現在は大熊町在住の深澤諒さんが焙煎した豆を使用しています。

店内で提供されるチーズケーキは、楢葉町「菓子工房おおやま」の大山さんが製造。「少し酸味のある味で、コーヒーにとても合うんです!」と宇佐見さんも絶賛です。

コーヒーフロート、メロンクリームソーダも人気

「ここに来ればいつもの人がいて、いつものコーヒーが飲めるという安心感があります」と宇佐見さん。「この地域に、あるようでなかった場所。常連さん同士でおはよう、と声を掛け合っている雰囲気が素敵だなと思います」とその魅力を語ってくれました。

■喫茶ヤドリギ
所在地:〒979-0603 楢葉町井出木屋126-6(JR竜田駅から徒歩2分)
営業時間:10:00~18:00(日曜は8:00~17:00)
定休日:月・火曜 ※祝日は営業
詳しい情報はInstagram(@kissa_yadorigi)へ

写真はいずれも宇佐見さん、森さん提供

地域に開かれた「Community kitchen 090」

チキンフィレオバーガーセット

富岡町で暮らし、大熊町で仕事をしている角田涼太さんは、2024年3月に大熊町の中心部・大熊町交流ゾーンに加わったファストフード店「Community kitchen 090」を紹介してくれました。ランチはファストフード、夜は遅い時間まで定食やお酒を楽しめるとあって、大熊町で暮らす人の食を支える存在になっています。

店主の吉田幸恵さんは大熊町出身。避難生活を経て2019年から楢葉町で暮らし始め、大熊町の地域活動拠点「KUMA・PRE」でまちづくりに携わった後に、縁あって開業したといいます。

角田さんの一押しは、ランチの「チキンフィレオバーガー」。バンズも店内で手作りという本格的なハンバーガーとフライドポテト、ドリンクのセットが、600円という手ごろな価格で楽しめます。夜メニューのおすすめは「豚ニラもやし炒め」。「ボリュームもあり、美味しくて満腹になります!」と角田さん。一人暮らしを始めて間もない角田さんにとって、貴重なスタミナ源になっているようです。

豚ニラもやし炒め。単品メニュー+300円の「ライスセット」で定食にできる

また、オリジナルのパウンドケーキ「くまぱう」も外せないとのこと。いちご味は、大熊町のネクサスファームおおくまで作られた「おおくまベリー」で作ったジャムをぜいたくに使用しています。

「くまぱう」のいちご味。プレーン、ガトーショコラも人気でお土産にもぴったり

店主の吉田さんは、現在KUMA・PREで働く角田さんの元上司でもあります。「生活や仕事でアドバイスをもらおうと、吉田さんに会うために足を運ぶこともあります」と話してくれました。店内は開放的な空間で、昼夜を問わずにぎわっています。「初めての方でも入りやすいはず」と角田さん。まちのコミュニティの場としての居心地も、角田さんの折り紙付きです。

■Community kitchen 090
所在地:〒979-1306 大熊町大川原南平1207-1
TEL:080-3745-6011
営業時間:ランチ11:00~14:00/ディナー17:00~22:00
定休日:木曜、日曜ディナー
詳しい情報はInstagram(@communitykitchen090)へ。

写真はいずれも角田さん提供

浪江の美味しさが詰まった「麺処 ひろ田製粉所」

サムライガーリックと豚しゃぶスタミナ冷やし中華

浪江町で暮らし、カメラマンとして活動する及川裕喜さんの一押しは、「麺処ひろ田製粉所 道の駅なみえ店」。浪江町の復興のシンボルとして2020年8月にオープンした「道の駅なみえ」のフードコートに店舗を構えるラーメン店です。

及川さんが「ぜひ食べてほしい」とおすすめするのは、夏季限定メニューの「サムライガーリックと豚しゃぶスタミナ冷やし中華」です。 運ばれてくると、まずにんにくがゴロゴロと入った見た目に驚かされます。使用している「サムライガーリック」は、浪江町のランドビルドファームが栽培。野馬追に参加している馬の堆肥を使用しており、栄養価が高く香り豊かなにんにくです。「パンチのあるサムライガーリックに、さっぱりとした豚しゃぶとトマトの爽やかさ、つるつるの麺が絶妙です」と及川さん。

食欲をそそるサムライガーリック

また、浪江のご当地グルメ「なみえ焼そば」の“進化系”として話題となっている期間限定品「なみえ焼そばラーメン」も唯一無二。及川さんも「独創的で、他では味わえない美味しさです」と太鼓判を押します。

なみえ焼そばラーメン

創業140年のひろ田製粉所は、福島県産の小麦やそば粉を使用した自家製麺にこだわっているのだそう。及川さんは「毎日食べても飽きません。一人でも気軽に行けるし、メニューが多いので家族や友人と来ても楽しいんです」と、その魅力を語ってくれました。

■麺処 ひろ田製粉所 道の駅なみえ店
所在地:〒979-1513 浪江町幾世橋知命寺60 道の駅なみえフードコート内
TEL:0240-23-7121(道の駅なみえ)
営業時間:10:30~18:00(Lo.17:30)
定休日:毎月最終水曜
HP:https://tanatsumono.co.jp/mendokoro_hirota/

写真はいずれも及川さん提供

まとめ

おいしい食事を楽しむことは、生活を豊かにする大きな要素でもあります。また、地域の飲食店は、まちの文化や食材との出会いになるだけではなく、人と人とがつながるきっかけにもなります。気軽に足を運べる飲食店や、安心できる空間は、地域での暮らしをよりいっそう楽しいものにしてくれるでしょう。

福島12市町村での暮らしを体験したいという人は、今回ご紹介したお店を参考にまちのごはんやさんを訪れ、地域の食材や人のつながりに触れてみてください。

文:五十嵐春菜

※本記事はふくしま12市町村移住ポータルサイト『未来ワークふくしま』からの転載です。