福島県は、数時間で登下山できる低い山から、山小屋で宿泊しながら山頂を目指す山まで、バリエーション豊かに登山が楽しめる地域です。福島12市町村には宮城県から茨城県に連なる阿武隈高地が通っており、気軽に登れる山も多くあります。移住するのであれば、登山はぜひトライしてもらいたいレジャーの一つ。今回は、登山初心者の心がけや、3時間以内で下山できる1,000メートル以下の低山といわれる山々をご紹介します。

登山を始める前に知っておくこと

今回ご紹介する山々は、標高1,000メートル以下の低山と呼ばれるもの。初心者でも、山頂に立つ喜びや自然の中でしか味わえない風景など、登山の醍醐味を気軽に味わうことができます。

登山をする際にまず準備してもらいたいのが登山靴です。足首までしっかりガードしてくれる登山靴には、歩きやすさに加え、足元のけがを防止する重要な役割があります。

山の中には登山道がすべてきちんと整備されていないエリアもあり、足場が悪いことも多く、途中でけがをしてもすぐに出発地点に戻ることはできません。動けなくなれば最悪の場合、遭難してしまうことも…。日本一登山者が多いといわれる高尾山(標高599メートル)では普段履きのスニーカーで登る人も多くいます。しかし、高尾山にはロープウェイがあり、登山客も多く、遭難する人は稀。山ではまず、登山靴を履くことが自分の身を守ることにつながるのです。

山の中では、必ず地図などを持って自分のいる位置を確認しながら進みましょう。スマートフォンアプリ「YAMAP」は、登山ルートがわかる地図を見ることができるのでおすすめです。また、入山する際には入山届をお忘れなく。道中でけがをして動けなくなった場合に救助をする側の手がかりとなります。入山届は、福島県警と連携しているWebサイト「Compass」などで提出することもできます。

夏の低山は暑さが厳しく虫や雑草で歩きづらい箇所もあるため、春や秋、まだ雪の降らない初冬の時期がおすすめです。それでは福島12市町村から登れる低山を4つご紹介します。

川俣町のシンボルをまつる「女神山」

写真:川俣町提供

標高:599メートル
おすすめルート:堀切登山口往復
コースタイム:1時間30分

川俣町の名産品「川俣シルク」。この材料となる養蚕と絹織物を伝えたという小手姫がまつられている山です。山頂のご神体を含めて大岩が多く、「カエル岩」と呼ばれる二つの大岩も。「春の妖精」と呼ばれるカタクリを楽しめるほか、麓には樹齢500年以上の古木「秋山の駒ザクラ」があり、春はさらに見どころが増えます。地元のハイキングコースとして人気が高く、その登りやすさから四季を通じて訪れる人が絶えません。

秋山の駒ザクラ(写真:川俣町提供)

ヤマツツジの名所・田村市「高柴山」

標高:884メートル
おすすめコース:門沢登山口往復
コースタイム:2時間(門沢登山口往復)

田村市にある山で、ヤマツツジの名所として知られています。5月中旬から6月中旬には山頂一帯が約2万株のヤマツツジで覆われ、最盛期には登山口の駐車場が満車になることも。田村市は征夷大将軍・坂上田村麻呂の伝説が数多く残る地域で、高柴山の登山道にも田村麻呂が物見をしたという物見石があります。隣の小野町から登る「浮金登山口」は40分ほどで山頂に立てるコースで、気軽に登山の楽しみを味わいたい人にも人気。展望台からの景色は圧巻です。

高柴山の登山レポートはこちら
ヤマツツジが見頃の高柴山に登る。ふくしま12 登山レポート

富士山が見える北限の地「花塚山」

丸印が花塚山の山頂(写真:川俣町提供)

標高:918メートル
おすすめコース:花塚の里登山口から北峰経由で山頂へ
コースタイム:約3時間

川俣町と飯舘村の境目にあり、山頂近くから富士山が撮影されたことから、富士山が見える北限の山としても有名です。「花塚の里」という公園内にある登山口は、鳥居をくぐってスタート。登山道は歩きやすく整備されており、途中にいくつかある東屋で休憩がしやすいのもポイントです。山頂付近の「富士見岩」は、まさにそこから富士山が撮影された場所。頂上からは太平洋も望むことができ、達成感が得られます。特徴的な大岩が数多くあり、上を歩けるように手すり代わりのロープがありますが、一部には崖などの危険な箇所もあります。雨上がりなどは特に足元に気を付けて歩みを進めましょう。

登山道にある「中央御室岩」(写真:川俣町提供)

詳しくはこちら。
https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kanko-event/kankou-yama1.html

猛々しい山頂を目指す田村市「鎌倉岳」

標高:967メートル
おすすめコース:萩平登山口往復
コースタイム:2時間50分

山頂には遠くからも確認できるような荒々しい岩が見え、そこからの景色は遮るものがありません。阿武隈高地の山々や、日本百名山に数えられる安達太良山、空気が澄んでいれば太平洋も眺めることができます。登山道は6本ありますが、駐車場とトイレがある萩平登山口を往復するコースがおすすめ。登山口近くのバス停は、萩平登山口から徒歩15分の「山根バス停」、鰍(かじか)登山口には「鰍バス停」がありますので、車を持たない人もアクセスしやすい山です。

まとめ

ご紹介したのは初心者向けのルートですが、同じ山でもルートを変えれば見える景色も変わります。山頂で達成感を味わいながらお弁当を楽しんだり、山でなければ見られない山野草を観察したり。友人や知人同士で語らいながら歩くのも良いですし、一人で黙々と山頂を目指すのもおすすめです。ただし、阿武隈高地や県内各地でもクマの目撃情報があります。万が一に備え、クマよけの鈴などを忘れずに携行しましょう。

ご紹介したほかにも、福島12市町村には多くの山があります。また、福島県には全国から登山客が集まる名山も。安達太良山や磐梯山、山頂からコバルトブルーに輝く「五色沼(魔女の瞳)」が眺められる一切経山では、低山とはまた違った楽しみがあります。この記事を参考に、まずは身近な低山から登山にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

※内容は公開当時のものです
文:五十嵐秋音

※本記事はふくしま12市町村移住ポータルサイト『未来ワークふくしま』からの転載です。