三嶋 さつき さん
[神奈川県]⇔[古座川町]
鎌倉では文化的な刺激を、古座川町では創作活動に集中できる時間を享受
二地域居住の利点を活かし、イラスト・デザイン制作を続ける創作家
【職業】
イラストレーター【拠点】
① 神奈川県鎌倉市(一人暮らし)
② 古座川町(父、母との三人暮らし)
【三嶋さんの二地域居住ストーリー】
古座川町出身の三嶋さつきさんは、愛知県の芸術大学を卒業後、東京で会社員(デザイン職)として就職した後、イラストレーターとして独立。現在は、鎌倉市に創作拠点を残す一方で、実家のある古座川町で、母親の食堂「きらく」の内装や紙類・SNSまわりのデザイン仕事を手伝いながら、地元の雑貨店・衣料品店とのコラボレーション作品などを創作。地方の子どもたちにとって、「絵を描く仕事」が将来の選択肢の一つになるように、イラスト・デザインの力で地域を盛り上げる。
この記事の目次
1.故郷・古座川町に拠点を設けたきっかけ・理由
イラストレーターとして独立
2021年に、当時勤めていた会社を退職し、イラストレーターとして独立したことで、場所を選ばずに仕事ができるようになりました。このことが、首都圏と地元 古座川町 での二地域居住を検討し始めるきっかけとなりました。
「デザイン・イラストで故郷に貢献したい!」
故郷の古座川町については、10代から20代前半までは、早く外に出ていきたいとばかり考えていましたが、大学進学を機に県外で暮らすようになると、故郷の良さに気づかされました。卒業制作では、 祖父が長年続けていた古座川町やその周辺地域に古くから伝わるニホンミツバチ養蜂をテーマに取り上げました。製作期間中は何度も古座川町に足を運び、その自然環境の豊かさを再認識するとともに、大学で学んだものづくりの思考で「古座川町に貢献したい」と思い始めるようになりました。そんな時2022年に、母が古座川町内で食堂を開業することになり、私は店舗の内装、使用する紙類、店舗ロゴなどのデザインを手伝いました。これが契機となり、地域の方とのつながりが生まれ、古座川町に以前よりも頻繁に戻ってくるようになりました。
2.鎌倉と古座川で二地域居住をする理由
各拠点の良さを作品づくりに活かす
もう一方の拠点である神奈川県鎌倉市は、首都圏にありながら自然がとても豊かで、書店やギャラリー(画廊)などの文化的な場所も多くあります。美術、陶芸、音楽に関わる作家が多数集まり、同じクリエーターとして良い刺激をいただいています。首都圏の企業から仕事の依頼を受けることも多く、東京までのアクセスの良さも、鎌倉市に拠点を構えた理由の一つです。鎌倉と古座川。両地域のそれぞれの良さを作品づくりに活かせたらと思っています。
3.地域間の移動の頻度や交通手段
古座川には2か月に1回程度の訪問。滞在期間は1週間
普段は鎌倉市を拠点としています。古座川町へは仕事のスケジュールにもよりますが、おおよそ2か月に1回程度の頻度で移動します。滞在期間は通常1週間程度ですが、関西で作品展を開催する際には、約1か月間、古座川町にとどまり、作品制作に専念することもあります。移動するタイミングについては、仕事の状況、和歌山で会いたい友人たちとのスケジュールや犬の体調と相談しながら決めています。移動手段は、以前は南紀白浜空港発着の飛行機を利用していましたが、2021年からは犬を飼っているので、新幹線を利用したり、自家用車で移動するようになりました。
4.古座川町での仕事・暮らし
イラストレーターとしての仕事は画材と機材さえあれば場所を選ばずできるので、古座川町では、イラスト制作やデザイン業務をしたり、作品展前であれば、展示する作品の制作を行ったりしています。最近では、紀南エリアで同世代が雑貨店や衣料品店などを始めることが多く、クリエイティブの面でお手伝いする機会も増えています。古座川町の地図を絵で描き、それをTシャツにしたところ、海外からの旅行客に大変好評で、古座川町観光協会で販売していただく予定になっています。また、和歌山の皆さんにも、私の絵を見ていただきたくて、母親の食堂を利用し、作品展も開きました。
5.古座川町での二地域居住のメリット
余計な情報が入らない古座川町で作品づくりに没頭
古座川町は、東京などに比べると情報量が圧倒的に少なく、作品づくりに集中することができます。加えて、外に出れば、すぐそこに豊かな自然があります。柔らかな風が心地よく吹き抜け、見上げれば、空は一段と美しく広がっています。疲れを感じた際に見る古座川の自然はいつも、全力で私を癒してくれます。
6.古座川町での二地域居住のデメリット
人と楽しい時間を共有したり、交流したりできる場所が少ない
古座川町は、友人・仲間とともにお酒を酌み交わしたり、交流したりできる場所が少ないです。私の場合は、地元ということもあり、友人・知人はいましたが、移住や二地域居住で初めて来られた方にとっては、人との関係を作りづらい、深めづらい場所のように思います。私自身としても、この点について何か貢献できればと思っており、母の食堂で作品展を開催し、人が集うきっかけづくりに努めています。
7.これからの暮らし方・活動の展望
古座川の子どもたちに一つでも多くの選択肢を
古座川で生まれ育った子どもたちが、その後も、地元で暮らしていくために、選択できる職業は限定されます。ただ、私がいただいているイラストやデザインなどの絵の仕事は、画材とパソコンなどの機材環境さえあれば、場所に関わりなくできるようになっています。だからこそ、私は地元での創作活動、作品展開催を通じて、子どもたちに地方においても、絵を描く仕事で暮らしていけるということを伝えていきたいと考えています。故郷の子どもたちにとって、選べる選択肢が一つでも多くなれるよう、これからも頑張っていきます。