2025年1月31日(金) に、移住後の仕事として「林業」を選んだ先輩移住者の方に集まっていただき、それぞれの体験を元に林業の魅力や移住について語ってもらうオンラインイベントを開催しました。
田村市を移住先として選んだ彼らは、なぜ未経験でありながら「林業」という未知の世界に飛び込んだのでしょうか。四人の現役きこりにそれぞれの視点から感じたことを語り合ってもらったところ、「移住と転職」のリアルが見えました。
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ゲスト: ・髙橋 成紀さん(フォレストクリエイト合同会社)※12月末まで所属、1月から独立。 山形県出身。林業に携わりたく奈良県で地域おこし協力隊をしていたが、より現場に近い領域で働きたいと思い転職を検討。検討中に知人から田村市主催の林業体験ツアーを紹介され参加し、移住相談を通して30歳の節目に田村市へ移住・就林する。過去にはバイクで日本一周をしたこともあるほどの、アクティブな性格の持ち主。
・古瀬希啓さん(田村森林組合)埼玉県さいたま市出身。動物飼育の専門学校を卒業後、神奈川県横浜市にある動物園に就職したが、コロナ禍により離職。林業に興味を持ったことで福島県田村市にIターンし、田村森林組合に就職。平日は森林組合で働き、休日は叔父の米農家の手伝いをしたり、キャンプをしたりと、仕事もプライベートも充実した生活を送っている。
・伊藤楓子さん(田村森林組合)千葉県成田市出身。都内にて公務員として働いていたが、転職を決意。外出制限中のコロナ禍に、自然と関わりながら生活をすることが向いていると実感し移住を検討。地理的条件などから福島県を中心に就林先を探し、女性の受入れ態勢・林業の領域などから田村森林組合へ入組。幅広い趣味を持ち、動物保護系のボランティアをしていた程の動物好き。
・永井功令さん(田村森林組合)京都府から田村市に家族で移住。小学生の子供を持つパパ。田村市が主催する林業体験ツアーに参加し、そこで前職場との自然への関わり方や安全管理の高さ等が違うことに驚き就業先、移住先を決め田村市に移住した。平日は山で仕事をし、職場以外の地元民とも交流をしている等、田村市での田舎生活を楽しむ。休みは家族とBBQやキャンプ等家族サービスを忘れずに行っている。
ひとことでは言い表せない!奥深い「きこり」の世界
──それぞれの仕事内容について教えてください。
伊藤さん:「造林」です。草刈機での下刈りやチェーンソー間伐、植林などをして森を作っています。田村森林組合は造林や重機操作、木材加工も行うため、山の中で手作業をしたかった私はここを選びました。
【質問】植林は、いつ・どれくらいの量を植えるのですか?
伊藤さん:春〜秋に、1日200〜250本植えます。
永井さん:「林産」です。主に機械で木を切り、造材して搬出します。慣れるまではきつく、林業の中でも労働災害が多い部署です。そのため、仕事への責任や危機管理が大切となります。
古瀬さん:「調査」です。現地作業前に、ソフトで土地の境界図面を確認し、草刈りされてない土地に入って測量や作業範囲の確認をします。「緑の雇用」制度の窓口担当、地元小学校への森林環境学習教室も行ったりします。
髙橋さん:「特殊伐採」です。建物にかかってしまった枝や木を、ロープで木にぶら下がりながら伐採します。伐採した枝もロープで吊って安全な場所に下ろします。12月末までフォレストクリエイト合同会社に所属していましたが、現在は独立しました。
【質問】特殊伐採は民家が多いエリアの方が需要があると思いますが、なぜ田村市で起業を?
髙橋さん:田村市が気に入って田村市に住んでいるので、田村市で起業しました。田村市には特殊伐採のプロが多く、そういう玄人と関わりながら仕事がしたかったのです。
──田村市で林業をして感じた「良かったこと」は?
永井さん:ご近所付き合いです。お隣さんに山菜をあげたら、お返しに鯛をいただきました。そういうやりとりが多いですね。
古瀬さん:祖母宅が近いことです。そして、自然が素晴らしいところ。山の上で作業をしていたときに、そこからの景色を眺めながら食べた昼食が最高でした。
伊藤さん:林業を始めたら朝早いし日光にも当たるため、よく眠れるようになりました。あと、林業をしている時にしか入れない場所から見る素晴らしい景色が楽しめます。
髙橋さん:一年で13kg減量しました。一日中木の上に登って作業しているので嫌でも痩せます。それと特殊伐採の顧客は一般家庭の人なので、世間話をしながら顔を覚えてもらうことが多くなりました。
【質問】林業に特化した移住補助金、未経験者に対するレクチャーはありますか?公共の仕事と、個人からの依頼の割合は?
司会:林業に特化した移住補助金はありませんが、移住者への補助金はあります。未経験者には「緑の雇用制度」があり、チェンソーや重機などの資格が取れます。肌感的には公共の仕事9割、個人からの仕事1割くらいです。
【質問】移住者としての戸惑いはありますか?
一同:そんなにはないかな。何かきっかけがあって一度仲良くなると、みんなとても仲良くしてくれます。
【質問】50代ですが、林業への転職は可能でしょうか?体力は一般よりはあると思います。
伊藤さん:緑の雇用の同期に50歳を過ぎている人も何人かいますよ。 永井さん:緑の雇用を受けられるのは55歳までなので大丈夫です。体力は一から始めると考えた方が楽だと思います。
【質問】田村市は広葉樹の植林はありますか。
伊藤さん:あります。
──林業には体力は必要ですか?
伊藤さん:人並みよりはあった方がいいとは思いますが、私は女性なので体力を省エネした仕事のしかたをしたいですね。今は重機や道具でスマートに林業できるので、超人並みの体力は必要ないと思います。
古瀬さん:調査で山の中を1日15,000歩ほど歩くことがあります。しかし小柄な女性も活躍してますし、体力よりも「やる気」の方が重要だと思います。
髙橋さん:体力はあるに越した事はありませんが、間も無く70代になる方でも手数を減らしたり工夫して活躍している人もいます。体力や年齢より「工夫」と「やる気」です。特殊伐採に関しては体が軽ければ軽いほど活躍しやすいので、女性でも活躍できます。
──田村市での生活で、なにか不満はありますか?
永井さん:標高が高いため風が強いです。それと、氷点下になると外にあるヒーターのパイプが凍るので、何日か家を開ける時は「水抜き」が必須です。
古瀬さん:カメムシが多い事と、コミュニティですね。私の妻はプライベートで遊ぶ人がまだいないところが不満だと言っていました。
伊藤さん:都会には当たり前にあった商業施設が無いことがあります。物欲も減りました。
髙橋さん:市内に映画館がなく、映画館まで車で一時間ほどかかります。それと、ガソリンが高いので燃料費に関しては覚悟が必要かと思います。
──林業の現場での、ここ最近の思い出は?
永井さん:凍った地面を剥がす重機作業がありますが、重機でも氷が砕けないほど寒い現場がありました。そういう現場に行くこともあるということを知っておいて欲しいですね。
古瀬さん:真夏の暑い日に一日中植え付けしていたら、後輩がずっと鼻血を出していました。ただ、山からの景色はすごくきれいでした。
髙橋さん:仕事柄、個人宅に伺うことが多く、お菓子や飲み物などをもらうことが多いです。地元の方との交流が多く心が温まります。
伊藤さん:現場を刈っていると草の中から様々なものが出てきます。昨年の夏はスズメバチの巣が一日に二個も出てきました。
──林業を検討している人に知っておいて欲しいこと、伝えたいことはありますか?
永井さん:人間関係が大事です。慣れるまではどんな仕事も大変なので、人間関係を良好にしておいて、わからない事はちゃんと聞く事が大切です。
古瀬さん:林業は「やる気次第」。やりたいと思った時に実際に来た人が集っています。田村森林組合はそういう移住者が集まってきていて、良い風が吹いていると思います。
伊藤さん:体力や金銭面、移住後に馴染めるかどうかなど悩みはあると思いますが、悩んでいても答えは出ません。計画や調べる事は必要ですが、やってみないと分からないこともあります。
髙橋さん:やりたいと思ったら、やった方がいいですね。林業といっても業務内容は様々。やってみないと分からない部分がたくさんあります。林業体験などに参加してみると、林業に向いているかどうかがわかります。移住も林業も少し味見をしてみましょう。
林業が気になったら、まずは体験してみよう!
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ゲストの皆さんは、「まずはやってみることが大切」だと仰っていました。
田村市には、就林希望者が実際に林業の仕事を体験できる「Tamura Forest College」という制度もございます。スタッフがヒアリングし、あなたのご希望に合わせて日時や体験先・体験内容をコーディネートいたします。年齢や性別などは不問です。どなたでもお気軽にご相談ください。
今回もたくさんの方にご参加いただきました。
参加者からは、
・現場の方の素直な生の声が聞けました
・林業は体力よりもやる気と精神力と工夫次第だと知りました
・とりあえずチャレンジしてみようという言葉に、自身を奮い立たせてもらいました
との感想をいただきました。
たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。
たむらぐらし