はじめに

富良野市を拠点に活動する、若手和太鼓ユニット「光颯(ひかはや)」。
地元の和太鼓チームに所属する新保ひかりさん(2002年生まれ)と小野颯仁さん(2010年生まれ)によって、2024年に結成されました。

新保 ひかり さん

小野 颯仁 さん

幼い頃から和太鼓に親しんできた2人は、年齢を超えて“太鼓への熱”で意気投合。
息の合った掛け合いと早打ちが凄まじい担ぎ桶太鼓の演奏で、地域イベントなどを中心に注目を集めています。

今回は、そんな2人にインタビューをさせていただきました。
和太鼓を始めたきっかけや、ユニット結成の経緯、地元で活動を続ける理由など、盛りだくさんの内容となっております。
また、4月20日(日)に富良野文化会館サンエーホールで開催された和太鼓祭のレポートも合わせてお届けします。

太鼓との出会い、そして“光颯”のはじまり

富良野の若手和太鼓ユニット「光颯(ひかはや)」として活動する新保ひかりさんと小野颯仁さん。
年齢も太鼓歴も大きく異なる2人ですが、共通の“太鼓愛”でつながり、2024年にユニットを結成しました。

まずは、それぞれが和太鼓と出会ったきっかけについて聞いてみました。

Q:おふたりが和太鼓を始めたきっかけを教えてください。

「小学5年生の時に、同級生が和太鼓をやっていて。『楽しいからやってみなよ』って誘われたのがきっかけで、今もずっと続けています。」

そう話すのは、新保ひかりさん。
もともとスキーや水泳など、身体を動かすのが好きだった新保さんは、習い事で出会った友人の誘いで和太鼓の世界へと自然に足を踏み入れたそうです。

「その同級生が演奏しているのを見て、 “かっこいい、やってみたいな”と思って。実際に見た演奏の姿に惹かれたのが大きいです。」

太鼓に親しみながら成長した新保さんは、やがて高校時代にはチームのリーダーを任され、全国大会にも出場。
現在では地元チームで指導や作曲も手掛け、篠笛にも挑戦しています。

一方、小野さんの和太鼓との出会いは少し変わったものでした。

「3歳くらいから“太鼓の達人”をやってて。きっとその頃から太鼓が好きだったんだと思います。」

ゲームセンターで遊ぶ中で太鼓に興味を持ち、小さな頃から盆踊りの太鼓など、音のある風景に親しんで育ったという小野颯仁さん。
本格的に和太鼓を始めたのは小学6年生の頃。
チームに入った当初から急速に力をつけ、2023年には全国大会への出場を果たしました。
現在はリーダーとしてチームを引っ張っています。

市役所にてインタビューさせていただきました

Q:ふたりが出会ったのは、いつ頃だったんですか。

新保さん:
彼が2022年くらいに私の所属している和太鼓チームに入会してきて、そこで出会いました。

和太鼓歴10年以上の新保さんと、急成長中の中学生・小野さん。
ユニットとしての試行錯誤を繰り返しながら活動しています。

新保さん:
光颯を結成したのは去年の夏くらいなので、まだぶつかったりするようなことはないですね。でも、年齢的には私が23歳で、彼は中学3年生なので、私がバーッといろいろ進めちゃうことも多くて。それで彼が“どうしたらいいかわかんない”ってなることもあって。そこはもう少しうまく役割を分担できたらと思っています。

まだ始まったばかりのふたりの挑戦。
年齢も立場も違うからこそ、それぞれの強みが活きる関係が、少しずつ形になっているようです。

ユニット結成のきっかけ

Q:最初は同じチームに所属していたという話でしたが、そこからふたりでユニットとして活動を始めたのは、どんな経緯からなんですか?

「私たち、地元の富良野彌榮(いやさか)太鼓保存会のほかに、 “白鼓(びゃっこ)”っていうプロの和太鼓チームにも共通で所属しているんです。白鼓は安平町を拠点に活動していて、富良野でも一度演奏したことがある、田村幸崇さんという方がプロデュースしているチームです。」

そう語る新保さん。
小野さんもこの白鼓のメンバーとして演奏経験があり、2人とも白鼓の楽曲を演奏できるという共通点がすでにありました。

「白鼓の曲ならお互い演奏できるし、 “この曲だったらふたりで合わせられそうだね”って話になって。それで、あるとき僕のところに個人的な演奏依頼が来たんですけど…ちょっとひとりじゃ心細くて(笑)」

そこで、小野さんが新保さんに声をかけたのが、 “ふたりで演奏する”最初のきっかけなのだそうです。

「最初はその1回きりのつもりだったんです。でも、いざふたりで演奏してみたら、 “ユニットとしてやってみるのもアリかも”って。ユニットだとできることの幅も広がるし、和太鼓ならではのシンクロ技とか、ふたりで演奏するからこその魅せ方ができるなって思って。」

こうして2024年、「光颯(ひかはや)」というユニットが誕生。
偶然のような演奏機会から、確かな “つながり”が生まれました。

音だけじゃない。「魅せる太鼓」のこだわり

太鼓の音が身体に響くような感覚。
そこに目を奪われるような動き、そして観客を巻き込むような声──
光颯の演奏には、ただリズムを刻むだけではない “魅せる要素”が随所に散りばめれられています。

Q:演奏する時に意識していることは、魅せ方や技術的な部分でも何かありますか?

「技術ももちろん大切ですが、何より “お客様を楽しませること”を一番に考えています。」と小野さん。

ただ太鼓を叩くのではなく、表情や振り、かけ声といった “非音”の部分にも工夫が込められているといいます。

新保さん:
かけ声とか……太鼓を “魅せる”っていうところは、お互いを鼓舞する意味もあるし、迫力を出すためにも欠かせない要素なんです。特に、盛り上がる場面での『セイ!セイヤ!』っていうかけ声が入ると、それだけで演奏に熱が入っているなって、観ている人にも伝わるんですよね。

実際に、ふたりの演奏では息の合ったかけ声が飛び交い、演奏とともにステージ全体の空気を高めていくのが印象的です。

シンクロ技で生まれる迫力

Q:先ほどお話に出ていた “シンクロ技”は、具体的にどんなものなんですか?

「技の中には、担いで叩く太鼓の両面を使って、左手でタタンタンタンってリズムを揃えていくものがあります。2人で『ダッダダダダダダダダダダダ』って息を合わせていくんですけど、これが揃うと振動にもすごく迫力があって、観てても聴いてても楽しい技なんです。」

“音”だけじゃなく、 “振動”まで観客に届けるような演出。
光颯の演奏には、五感全てを刺激する魅力があります。

Q:演奏は、伴奏を流して行うこともあるんですか?

「イベントによって変わりますね。雰囲気を盛り上げたいときは音楽を使ったり、和太鼓とコラボしたり。逆に太鼓だけで空気を支配することもあります。」

太鼓の “原点”を大切にしながら、より多くの人に楽しんでもらえるように。
光颯の2人は、演奏のたびに新しい “魅せ方”を模索しています。

支え合い、ぶつかり合いながら

ユニットとして活動する上で、明確な「リーダー」と「サポート」といった役割は決めていないというふたり。
それぞれの演奏の構成や立ち位置、演出などについて意見を出し合いながら、曲ごとに柔軟に役割を決めているといいます。

新保さん:
どっちもどっちもができちゃうので、 “この曲どっちがやる?”とか“じゃあ一人でやってみる?”とか、相談して決めています。

年齢も経験も違うからこそ、互いに刺激を受けながら、一緒に成長していける関係性。
ときにぶつかることがあっても、それがまた次の演奏への力に変わっていくのです。

ふたりが見据える“これから”

■オリジナル曲で、光颯の音をつくる

演奏依頼の増加に伴い、2025年からオリジナル曲の制作にも取り組み始めたふたり。
これまでは所属する団体で演奏していた既存の曲を中心に活動してきたが、「光颯としての色」を出すためにも、自分たちの曲を持つことが必要であると話します。

新保さん:
まだ1、2曲しか完成していませんが、現在は3曲目の制作に取り掛かっています。演奏の幅を広げるためにももっと作っていきたいですね。

■ライブハウスでの出会いとつながり

ライブハウスでの演奏の様子

活動の場は屋外イベントにとどまらず、ライブハウスにも広がっています。
出演のきっかけは、あるイベントでの演奏を観たライブハウス関係者からの声掛けでした。

新保さん:
「 “うちでもやってみない?”って誘っていただいて、またそこで観てくれた別の方が声をかけてくれて……。人のつながりに本当に感謝しています。」

■目標は “ワンマンライブ”

いま、ふたりの中にある一番の夢は “光颯としての単独ライブ”の開催。
これまでは他の出演者もいる合同イベントが中心でしたが、いつかは観客が光颯を目当てに足を運んでくれるようなステージを実現させたいと語ります。

新保さん:
「まだ持ち曲も少ないので、1~2時間のライブに向けては準備の段階。でも、照明も衣装も自分たちでこだわって、かっこいいステージをつくりたいですね。」

小野さん:
「衣装も今はお借りしている状態なので、ちゃんと自分たちのものを用意したいです。」

■「富良野で和太鼓といえば光颯」と言われる存在に

ふたりの地元・富良野では、和太鼓はまだそれほどメジャーな存在ではありません。
それでも「和太鼓ってかっこいい」「また観たい」と思ってもらえるような演奏を届けることで、認知と関心を広げていきたいと話します。

新保さん:
「まずは “和太鼓ってなんか面白そう”と思ってもらえるように、自分たちの活動を通じて魅力を伝えていきたいです。」
「和太鼓って、誰でも始めやすい楽器なんですよ。叩けば音が鳴る。だからこそ、音や動きで“魅せる”工夫をすることで奥深さが出せると思います。」

■初心者からプロへ──成長の軌跡

最初はステージに立つこと自体が緊張の連続だったというふたり。
MC(トーク)も手探りで、沈黙ができてしまうこともあったというが、回数を重ねるごとに経験が自信につながってきたといいます。

新保さん:
今はもう、その場に応じて柔軟に話すこともできるようになってきて。ふたりでのトークのバランスもとれるようになってきました。

小野さんは、学校祭でのソロ演奏などを通じて周囲からの応援も得るようになり、クラスでは「太鼓といえば颯仁」とまで言われるようになったそうです。

■SNSから始まる発信力

現在の情報発信はInstagram(インスタグラム)を中心に、新保さんが担当。
「そろそろYouTubeなど他の媒体にも挑戦しようか」という話も出ているそうです。

和太鼓 光颯(ひかはや) – Instagram

情報チェックはこちらから! 演奏している動画も見られます!

■光颯から「記事をお読みの皆さんへ」

「これからはもっと精力的に活動していって、光颯としての和太鼓パフォーマンス力をアップさせて演奏していきます。
ぜひ、まずは“光颯”という名前を憶えていただけると嬉しいです。」

実際に生演奏を観てきました!──4月20日(日)「富良野太鼓祭」レポート

4月20日(日)、富良野文化会館サンエーホールで開催された「富良野太鼓祭」に実際に足を運んでみました。
会場は入場無料ということもあり、子どもからご年配の方まで幅広い年齢層の来場者で賑わい、開演前から温かな空気に包まれていました。

午前中には和太鼓の体験会も行われ、初めてバチを握った参加者たちが、午後の本番では成果発表として実際にステージに立ち、堂々とした演奏を披露していたのが印象的でした。
太鼓というと敷居が高い印象もありましたが、実際は「誰でも挑戦していいんだ!」という空気が広がっており、親しみを感じました。地域とのつながりも感じた時間でした。

午後のメインプログラムでは、地元の和太鼓チーム「富良野彌榮(いやさか)太鼓保存会」による演奏が続きます。
一つのチームでありながら、演目ごとに少年部の子どもたちだけ、男性メンバーのみ、若手メンバーによる構成など、さまざまな組み合わせで登場し、それぞれが個性豊かなパフォーマンスを披露。
曲の雰囲気にあわせて構成が変わることで、観客としても新鮮な気持ちで次の演奏を楽しむことができました。

演奏は音だけではなく、動きや表情、構成全体にわたって練られており、まるで舞台演出のようでした。
中には観客を巻き込んで手拍子を促す場面もありました。会場全体が一体となって和太鼓の世界に入り込む瞬間は、一緒に演奏をしているようで、とても楽しかったです。

そして、この日登場したユニットのひとつが、若手二人による「光颯(ひかはや)」です。
観客の視線を集めながら、目にも止まらぬ速さで打ち込む太鼓の音は圧巻で、ステージに立つ姿は堂々たるものでした。
全身で表現する2人の真剣な眼差しと力強い音が、観る者の胸を打ちました。

富良野彌榮太鼓保存会は今後、体験会の開催も予定しているとのこと。
和太鼓の音に心が揺れた方は、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか?
誰でも挑戦できる、開かれた世界がそこにはあります。

私自身、初めて生で太鼓の演奏を見て、その迫力と温かさに心から感動しました。
富良野にこんな熱い文化があることを知り、ますます地域の魅力を再発見する一日となりました!

おわりに

富良野の和太鼓ユニット「光颯」は、プロを目指す若いふたりによる和太鼓ユニットです。
結成は昨年ですが、その演奏には確かな熱と想いが込められていました。
地元・富良野から始まった活動は、少しずつ人とのつながりを生み、ライブハウスや地域イベントなど、さまざまな場所へと広がりを見せています。

ぜひ、情報をチェックして、実際に目で、耳で、肌で、観ていただけたらと思います。
これからのおふたりの活躍にご期待ください!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。