2025年8月1日(金) に、「林業」という仕事の実際の内容やリアルについて学べるオンラインイベントを開催しました。 今回は、福島県田村市にある田村森林組合にて活躍している伊藤楓子さんと永井功令さんをゲストにお招きし、林業と出会ったきっかけ、それぞれの仕事の内容、どんな道具を使っているかなどについて詳しくご説明いただきました。
ゲスト:
・伊藤楓子(田村森林組合 造林班)
千葉県成田市出身。都内にて公務員として働いていたが、転職を決意。外出制限中のコロナ禍に、自然と関わりながら生活をすることが向いていると実感し移住を検討。地理的条件などから福島県を中心に就林先を探し、女性の受入れ態勢・林業の領域などから田村森林組合へ入組。
・永井功令(田村森林組合 林産班)
京都府から田村市へ家族で移住。小学生の子供を持つパパ。田村市が開催した林業体験ツアーに参加したことをきっかけに、自然との関わり方や安全管理への姿勢に惹かれ移住を決意。現在は平日、山での仕事に励む一方、地域の方々との交流も楽しみながら、田村市での田舎暮らしを満喫中。
林業との出会いも仕事内容も人それぞれ
──お二人はなぜ、田村市で林業を選んだのですか?
伊藤さん:もともと「移住」と「林業」の二つの目標がありました。移住先として田村市を見つけ、そこから近い林業団体を探した結果、田村森林組合を見つけました。田村市は雪もそこまで降らないし、いろいろな場所へのアクセスにちょうど良い場所ですから。
永井さん:たまたま「たむらぐらし」の林業の記事を見つけ、「こういう林業もあるのか」と思い、そこから田村市を調べていきました。その後、オンラインイベントや林業ツアーに参加して、ツアー参加後2ヶ月で移住。移住は行ける時に行った方がいいと思います。前の会社でも林業をしていたため、林業を続けたいと考え森林組合に申し込みました。 ──実際の林業は、どんなことをするのですか?
伊藤さん:林業は木を切るだけでなく「森を育てる仕事」です。最終的に木材を収穫するための作業(地拵え、植林、下刈り、間伐など)も行います。「育てる」というところにお金や時間をかけないと良い木材は収穫できません。
──伐採はどんな仕事で、どんな準備が必要ですか?
永井さん:木を切る場所の測量から始めます。切る木にテープを巻いて目印をつけ、切り捨てる木なのか、素材として収穫する木なのかを切る前に確認。チェーンソー、楔、フェリングレバー、ハンマーなどを使い、造材・搬出しやすい場所に木を切り倒します。搬出までを想定して一歩先を考えながら切らないと赤字になります。
──「地拵え」とはなんですか?
伊藤さん:地面に生えている雑草や枝、伐採木などの残材を整理し片付ける作業です。絡み合った枝などを、棒で引っ掛けて斜面の下へ落としていきます。地面が見えたら苗木を植えて新しい森林をつくります。植える間隔などは植える場所や持ち主の意向によります。
──斜面での作業はきつくありませんか?
伊藤さん:造林はほぼ人力でやることが多いため、きつい時もあります。ただし、高難易度な仕事ではありません。
──目立て、下刈り、枝打ちとはどのような作業ですか?
永井さん:「目立て」は刈り払い機の刃を研ぎ直し、切れ味を回復・維持することです。草刈機はプロ仕様のものを使っています。
伊藤さん:目立ては難しく、上手な人は切る時の音が全然違いますね。「下刈り」では、草や小さな木、中が空洞になっている太い木などを刈ります。
永井さん:「枝打ち」は木の強度を高めるため、幹についている枝を落とす作業です。人件費や山の持ち主の予算の関係、加工技術の進歩などの理由で枝打ち自体少なくなってきていますね。
──間伐はどのような作業ですか?
伊藤さん:育ってほしい木を育てるために他の木を切り、光を入れて育ちやすくする作業です。木の年数や山の状況などを見極めて切ります。
──主伐について教えてください。
永井さん:倒す方向の側面に切り込みを入れ、反対側から追い口を作り、そこにクサビを打ち込み倒します。「造材」では目的に合わせて丸太を直材に近い形にして出荷します。重機で丸太を積み、山から土場まで運んで「はい積み」します。この積み上げ作業はとても難しく、集中力を試されます。
──林業の仕事の一日の流れを教えてください。
永井さん:5時〜5時半に起床しています。
伊藤さん:私も同じで、7時くらいに家を出ます。定時は夕方5時半。
──時期によって大変さや面白さは変わりますか?
永井さん:梅雨の時期は杉の皮がめくれてツルツルで、積み込みやはい積みができないのが厄介です。雪の時も同じですね。
伊藤さん:春夏に作業しているとフクロウの羽が落ちていたり、鳥の卵を発見したりするので楽しいですよ。
──林業をしていて、感慨深い瞬間は?
伊藤さん:植える時。これから二十年後くらいに自分が担当した山に入れたとしたら、感慨深いだろうなと思います。
永井さん:時間をかけずに希望通りのところに木を倒せた時。それと、一見値がつかなそうな木でも、市場に出すと売れること。きちんと販路を確立しているので、森林組合は面白いのです。
▼参加者からの質問
質問:将来の需要と共有は把握しにくい「林業」ですが、モチベーションはどう保っているのですか?
永井さん:注文がある木材を作ればお金になるという点ですね。
伊藤さん:私は自分がやりたいから林業をやっています。最近は「生き物たちが住める山づくり」にも興味を持って行っています。
イベント中の様子


【質疑応答】安全確保のために気をつけていることは?
永井さん:決まりごとをきちんと確実に守って作業しています。
【質疑応答】現場職員が営業にキャリアチェンジすることもありますか?
伊藤さん:あります。現場・営業・加工など、いろいろな部署があります。所属組織によって変わると思いますが、うちは部署異動する人もいます。
【質疑応答】林業の魅力を一言で表すと?
伊藤さん:めっちゃ楽しいです。体を動かすのも楽しいし、この仕事が好きです。
永井さん:楽しくないとできません。最新の重機や林業機械を使えるのも楽しいですよ。
林業イベントに参加して、はじめの一歩を踏み出そう!
福島県田村市では、林業への就職をご希望される方に向けたトライアル林業「田村フォレストカレッジ」を開催しております(通年受付)。専用のスタッフとのヒアリングを通し、田村市の特色ある林業事業体を比較しながら、ご都合に合わせた日時での林業体験・見学ができますので、ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にたむら移住相談室までご相談ください。
今回もたくさんの方にご参加いただきました。
参加者からは、
・現役林業家の経験や考えを知ることができました
・林業従事者の本音を聞くことができて楽しかったです
・良いところだけではなく、危険な点や難しい点などのリアルな話が聞けました
との感想をいただきました。
たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。
たむらぐらし https://tamura-ijyu.jp/event