大野駅西口に新たな交流拠点が誕生!「CREVAおおくま」

町の産業の交流拠点として、2024年12月にJR大野駅西口そばに開業した産業交流施設「CREVAおおくま」。多くの企業が入居するほか、町民の交流スペースとしても利用できます。この記事では、完成したばかりのCREVAおおくまの内部の様子や、CREVAおおくまに関わる地元の経営者の声を紹介していきます。

温かみのある空間で感じる、大熊町の歴史

「CREVAおおくま」は地上3階建て。建物の内外には県産の木材が多く利用されており、温かみのある木の空間が特徴的です。また、屋上には太陽光パネルを設置するなど、全体的に環境に配慮した作りとなっています。

「CREVAおおくま」に足を踏み入れると、まず目を引くのが、金色の生地に織られた、鹿踊りを舞う子供たちの姿。町内の熊川地区に伝わる郷土芸能「熊川稚児鹿舞」の様子をあしらったものです。これは大熊町の文化センターの緞帳として使われていたもので、CREVAおおくまのオープンにあたり、京都の織物屋さんで丁寧にクリーニングを行って設置しました。震災前、文化センターのイベントの時には多くの町民が目にしたこの緞帳は、新たな建物の中でも輝きを放っています。

また、「CREVAおおくま」の中には、震災前・震災後の大熊町で撮影された写真が飾られています。特産の梨の選果場で笑顔を見せる子どもたち、駅前の商店街の様子。2019年、町に帰還が始まった時、町民たちで作った人文字「ただいまおおくままち」。2020年の常磐線全線開通を大野駅で祝う「おかえり常磐線」の垂れ幕……。写真に映る大熊の人の姿からは、町の歴史と復興の歩みを実感します。

誰でも利用できるコワーキングスペースなど快適なワークスペース

1Fから3Fの貸し事務所には企業・団体が入居しており、オープン時には全33室のうち31室が埋まりました。2Fはコワーキングスペースとなっており、入居者同士の連携を促進します。さらに一般の方の利用も可能で、8時~20時の開館時間であれば誰でも無料で利用することができます。各席に電源が完備されており、打ち合わせスペースとしても利用することができます。

また、3階の窓側にもオープンスペースがあり、外のバルコニーには机、椅子やソファが置かれています。バルコニーからはクマSUNテラスの芝生広場や大野駅、そして阿武隈高地の山並みを一望することができます。

1階正面の大きな扉は可動式になっており、イベント時には扉を開けることでクマSUNテラスと接続し、屋内・屋外を一体的に利用することが可能になります。また、逆に1階の屋内空間を間仕切りで仕切ることができ、多目的ホール「CREVA HALL」としても活用できます。

今後は町民向けの様々なイベントが行われる予定となっており、2025年3月からは大野駅西交流エリアのオープンを記念し、「みんなでつくる大熊写真展」と題した写真展・ワークショップが行われ、町民から思い出の写真を募集して展示を行います。さらにフラワーアレンジメントのワークショップや読書会、コーヒーを飲みながらの交流会など、大熊町や浜通りで活動する方をゲストに招いた多彩なイベントが企画されています。

「大野駅西交流エリア」のホームページ

https://okuma-creva-kumasun.jp/

「CREVAおおくま」にかかわる地元経営者の思い──吉田学さんが描く大熊の未来

CREVAおおくまを含めた大野駅西交流エリアは「BGタイズCCC共同事業体」が指定管理を行っています。その中心メンバーの1人が、大熊町出身の吉田学さんです。吉田さんは一級建築士の資格を持ち、2014年に総合建設会社タイズスタイルを創業。大熊町内でも町の商工会館などの建物を手がけ、2024年には大熊町に「タイズヴェルデホテル」を開業しました。浜通りのコミュニティ作りや若手起業家育成にも取り組み、「一般社団法人HAMADOORI13」の代表理事としても活動しています。

吉田さんは、「震災に伴う長期の全町避難により、地場産業が衰退しました。町の復興のためにはまずは産業が必要。しかも新たな産業を町に呼び込まなければいけないと感じていました」と振り返ります。タイズスタイルを創業した吉田さんは、東京に出向いたり、あるいは浜通りを訪れる様々な方に「大熊で何かやりませんか」と声をかけていきました。「勝手に誘致活動をしていました」と語る吉田さんですが、このつながりを生かして2020年にビジネスゲートウェイ株式会社を設立し、「大熊インキュベーションセンター(OIC)」の運営を行いながら、町内で実証を進めたい企業・団体の誘致や町内での起業を促進してきました。

OICを拠点としながら町内で実証を行った企業が「CREVAおおくま」に入居する事例もあり、着実に町内の産業は育ちつつあります。大熊町の産業を支えるために多くの方が大熊に移住していることについても吉田さんは「ここまで課題解決に取り組める場所はなかなかない、自分のやりたいことが実現できる環境が大熊にはあるので、ぜひ大熊にいらしていただきたい」と話します。

吉田さんは、大熊町出身者として「大熊で生まれ育ってきた時間、そしてお世話になった方々に感謝し、大熊のコミュニティをなくしたくない」という思いで活動してきました。「クマSUNテラス」を含めたエリア一帯の運営について、「将来的には図書館などが入る社会教育施設もできます。仕事で利用したり、食事をしたり、子どもと遊んだり、あるいは家族で一緒に過ごしたりと色々な方が集い、何でもできる空間にしていきたい」と話します。

「CREVAおおくま」は夜になるとライトアップされ、光り輝く姿は町の未来を照らしているようです。かつて町の商店街があり、大熊の産業と交流の中心地だった大野駅西口から、再び新たな産業と人と人とのつながりを生み出していきます。