【福島県大熊町】大熊町での挑戦の入り口~OICCCから生まれた移住・起業~ クリーンテック領域での起業をサポート

大熊町で起業やチャレンジを始めたい方への入り口として、大熊インキュベーションセンター(OIC)はいくつかプログラムを提供しています。その1つが、OIC Cleantech Challenge(OICCC)。環境問題を解決する技術「クリーンテック」領域での起業アイデアを募集し、そのアイデアについてOICでプレゼンテーションを行っています。

この記事では、2024年12月に開催されたアイデア発表会(デモデイ)の様子や、OICCCをきっかけに大熊町に移住した起業家へのインタビューをお届けします。

OICCCは、大学院生や若手研究者の方など起業前の方を対象としたプログラムです。大熊町が「ゼロカーボンのまち」を目指していることから、地球温暖化、海洋汚染、森林破壊などの環境問題を解決する「クリーンテック」のアイデアを広く募集しています。クリーンテックには環境学・生物学・科学・情報学・都市工学など様々な分野が関係し、これまでのOICCCでも農業や科学教育、医療・看護など多様なアイデアの発表がありました。

OICCC ホームページ https://oiccc.info/

2024年度のプログラムには7名が参加。仙台や石川など県外からの参加、さらには海外からプログラムに参加する方もいらっしゃいました。参加者たちはオンラインで定期的に集まりながら過去にOICに参加した先輩たちから学びを得たり、自分たちのプランについてのフィードバックを受けてきました。

OICで開催されたDEMODAYでは「人工流れ星」実現を目指す株式会社ALECEOの岡島礼奈さんの基調講演の後、プログラム参加者7名のプレゼンテーションがありました。参加者からは科学メディアやアニマルウェルフェア、メンタルヘルスの改善など様々なアイデアが披露され、また「OICを会場にこんなイベントをやってみたい」という提案もありました。

プレゼンテーションの審査を務めた起業家・経営者からは、「技術の独自性はどんなところか」など研究技術に関する質問や事業化に向けたアドバイスが寄せられました。また、審査の結果受賞した参加者の方々には、大熊町や福島県の特産品が送られ、その後参加者同士で交流を楽しみました。

OICCCをきっかけに大熊で起業

そのOICCCのプレゼンテーションを見守っていたのが、LIFEAI株式会社の川端瞭英さん。2022年に知人の紹介でOICCCに参加したことをきっかけに、2024年に大熊町に移住・起業しました。もともとは遺伝子関連の研究者を経て東京でコンサルタントなどとして働いていた川端さん。いつかは遺伝子技術を使って起業してみたいと考えており、知人の誘いでOICCCに参加しました。

OICCCに参加したことで福島・浜通りと縁ができ、川端さんは福島県内で開催されている他のプログラムにも参加しました。福島イノベーション・コースト構想推進機構が実施する「Fukushima Tech Create」にも採択され、さらに福島県内の新しいビジネスアイデアを表彰する「ふくしまベンチャーアワード2023」でも優秀賞を受賞。川端さんの活動は大熊町から浜通り、福島県全体へと広がっていきました。

「支援していただいた福島の方に恩返しをするためにも本気で行動しよう」と2024年4月に大熊町に移住。そこから起業してOICに入居しました。

現在は、遺伝子情報を含むバイオデータやAIを活用したサービス開発を行っています。個人のバイオデータをもとにその人にあった食事アドバイスを受けられるようなサービスを考案し、大熊町内でも実証事業をはじめています。「大熊町はまだまだ人が少なく、町内にないサービスも存在する。裏を返せば余白がたくさんあり、その余白に絵を描くことで町の未来に貢献していきたい」と話します。

川端さんは、大熊町に移住した後、今度は町民の立場で町外の人とのつながり作りを行っています。大熊町に移住してみると、東京時代の仲間の起業家やエンジニアから「地域の課題を解決したいのだが地域とのつながり方がわからない」などという声を耳にしました。そこで、まずは東京のエンジニア・起業家と大熊町の地域住民をつなげつつ、周辺市町村の起業家も巻き込んで自由に交流する機会を作ろうと考えました。川端さんは「おおくまチャレンジ応援プログラム」に応募して採択され、8月に「エンジニア×浜通り起業家BBQ交流会」を企画しました。

大野西住宅の交流スペースを会場に開催された交流会には、起業家、研究者、投資家、エンジニア、地域住民…など約30人が集合。大熊町内だけではなく近隣の市町村、さらに仙台市や首都圏からの参加もあるなど多様な方が集まり、おいしいお肉を食べ、福島のお酒を飲みながら、交流を楽しみました。

この交流会がきっかけで、2024年度のOICCCに参加した大学院生もおり、川端さんは「大熊町外の方がかかわれる余白はたくさんある。町外のいろいろな方とつながりながら町を盛り上げていきたい」と話しました。

OICでは、「OICCC」以外にも様々な入り口を用意しています。起業志望の学生など若手世代を対象としたプログラム「エクストリーム大熊」の2024年度のプログラムでは起業志望の約50名の若者が大熊町を訪れました。起業を考えている学生・研究者のみなさんはぜひ一度プログラムに参加してみてはいかがでしょうか。

エクストリーム大熊ホームページ https://www.extreme-okuma.com/
(2025年度8月~12月実施は満員御礼)