1年かけて探した結果、即決したのが下川だった

由佳:夫とは8年前(2017年)、北海道滝川市で知り合いました。お互い移住者で、そのまま滝川で結婚して長男を出産しましたが、ちょうど新型コロナウイルスが流行り出した時期だったんです。コロナをきっかけに、これからどこでどうやって暮らそうか話し合いを始めました。滝川市は住みやすい街でしたが、大都会でも、ものすごく田舎というわけでもない中間の街。お互い北海道が大好きだったから、道内の中でもう少し田舎で良い所がないか探し始めました。

孝弘:ふたりともアウトドアが趣味だから、子どもにとってもアウトドアが身近にできる環境が良かったのと、同じような考え方や感覚を持っている家族や友達がいる地域を探していたんです。

由佳:私たちは関東圏出身だから、例えば実家にすぐ帰れるように空港が近いエリアがいいかもと考えていました。大雪山を中心にした山もすごく好きだったから、その周辺の地域をいくつも見て、住んでる人の話を聞いて……そうやってあちこち探している中で、下川町に住んでいる大工の若園拓司さんと偶然知り合ったんです。ちょっと話を聞いてみたら「下川いいよ」と教えてもらって。その時は、あまりピンとこなかったんですがしばらく経ってから、ふと「見に行ってみようか」と思い立ったんです。

孝弘:最初は「ちょっと北に行きすぎじゃないか」と思ったんですが、名寄市も近くてほどよく便利そうだったし、地域おこし協力隊制度を使った「しもかわベアーズ」や町内外でいろいろなイベントを開催している情報を見て、興味が湧きました。

由佳:その後、ゴールデンウィークにたまたま「森のなか ヨックル」(以下、ヨックル)が空いていたのを確認して、すぐ予約して移住相談窓口に連絡しました。2022年5月に初めて下川に来ましたが、もうほぼ即決でしたね。隣の名寄市には車で20分で行けるし、病院や大きめのスーパーもある。なにより会わせてもらった家族が「住みやすくて、すごくいい町だよ」って言ってくれる人が多かったし、ここだとみんなそれぞれ自分たちの生活を楽しんでいる雰囲気も感じられて。あと、町が明るく感じたんですよね。十勝とはまた違う空の広さというか。下見をしてから半年も経たない10月の頭には、下川に移住しました。

移住って人生の一大イベントだから、しっくりこないと移住できないと思うんです。実際に引っ越した後に「あれ、やっぱり違った」って後悔したくなかった。だから1年ぐらいかけて、本当にいろんな市区町村を見ましたが、最終的に即決したのが下川でした。

下川に来てから変わったこと

由佳:家族が家庭菜園をやっていた影響で、引っ越した先では広い庭が欲しいとずっと思っていました。でも移住した年は、まだコロナの影響が残っていたせいか、理想的な家はすぐには見つからなかったんです。だから取り急ぎ、2Lの公営住宅に申し込んで引っ越しました。公営住宅にも小さい畑がついていたので、家庭菜園はすぐ始められました。

孝弘:僕は子どもの頃に畑をやったことはなかったし、ずっと東京に住んでいたから、いろいろなことが新鮮です。でもキャンプとかアウトドアに関する仕事をしていたから、例えば畑作業や暮らしに必要なDIYとか、一見手間がかかることも楽しいし、好きなんですよね。今はIT関連の仕事を自宅でやって、それ以外の時間は子どもと過ごしています。

由佳:子どもたちと遊ぶの、好きだよね。

由佳:私は下川に引っ越してきてから、ヨックルと「月と野菜」のスタッフとして働いて、それから時々キッズスクールの手伝いをしています。家族の時間も大切にしたいし、でも社会活動にも参加したいという思いもあって。もともと家でジッとしているタイプでもなかったので、働きつつ子どもたちとの時間も作りつつ、でも畑もやって自分の好きなこともできるようにしたいと思って。

仕事は、いろいろな人たちと知り合う中で声をかけてもらいました。「ちょっと人が足りていないんだけど、働かない?」って。子どもたちがまだ小さいので、急な発熱などで仕事を休まなければならないこともありますが、理解のある方々に囲まれて、今は無理なく楽しめる範囲で働けているなと感じます。

「何かあったら手伝うよ」って声をかけてくれたり「子ども、見ておくよ」って大変さを理解してくれたりする方がいるので、すごくありがたいですね。「どうしよう」って一人で抱え込むのではなく、お互いに困っていそうなことを理解しあって「うちの旦那、使っていいよ」って言ってもらったり(笑)。

孝弘:公園とか街中を歩いていても、顔見知りに会う機会が増えました。移住してくる家族も多いから、気軽に「どこから来たんですか」と声を掛け合える雰囲気があるのも暮らしやすい理由かなと思います。それに顔見知りでなくても、知らない人にも挨拶するようになりましたね。東京や滝川に住んでいた時は、知り合いや友達以外に挨拶することはなかったけど、下川に来てからは、家の周りを散歩してる時にすれ違ったおじいちゃんやおばあちゃんにも、挨拶をするようになりました。向こうも嫌な顔をしないし、(挨拶をすることに)全然違和感がないですね。

由佳:「あの子は○○さんの子だ」と分かる環境は親としても安心するし、人混みもないから子どもたちが多少騒いでも大丈夫だし、「ダメだよ」「静かにしなさい」って言う頻度もすごく減りました。周りの大人たちも、子どもたちが騒いだり泥だらけになったりすることに寛容な方が多い気がします。近しい価値観を持っている人たちが多いのも、住みやすい理由に繋がっていると思います。

家族で作る理想の暮らし

由佳:田舎暮らしというと、ロッキングチェアに座って本を読んだり、のんびりしたりできるのかと思っていたけど、逆に毎日いそがしい。畑は手入れしてあげないとすぐ草だらけになるし。スローライフにはならなかったけど、楽しいんです。

孝弘:例えば除雪をしたり薪を割ったりすることは、手間がかかるしちょっと面倒だけど、自分でどう工夫したらいいか考えられるし、子どもたちと一緒に考えて実践する時間が、今は楽しいですね。 休みの日とかも、遠くへ出かけるよりは畑作業をしていることが多いです。季節が変われば作業内容も変わるし、全然飽きないです。子どもたちも一緒に作業をするから、子どもを理由に何かができない、という発想にはあまりならないですね。

由佳:すごく心地いいんですよね、今の生活が。もちろん、もっと時間があったらいいなとは毎日思っていますけど(笑)。

孝弘:個人的には若い時にやりたいことはやれたし、休みの日は子どもと過ごしている時間が大事です。でも(子どもたちが)大きくなったらどうなるんだろう。

由佳:そうなったら2人ともアウトドアが好きだから、もっと山へ行ったり冬は(スキーやスノボで)滑ったりするんじゃない?

孝弘:最近、家を買ったので、子どもたちと一緒に家具をDIYで作ろうと思っています。自分たちで何かを生み出す楽しさを経験してほしいなと思って。

由佳:上の子は、すでに木端を集めて何かを作ったりノコギリで切ったりとかしています。

今まで住んだ家は賃貸でしたが「とんかちを打っても怒られない家に住みたい」ってずっと言っていたんです。ここに棚があったらいいなって思っても、賃貸だとビスを打ったり取り付けたりできない。でも下川でやっと念願の家が手に入って、嬉しいです。これからはゆっくり、自分たちの暮らしを整えたいですね。

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