「もう帰りなよ」という一言から始まった話

子どもの体調が急に悪くなったとき、返ってきたのは「もう帰りなよ」という一言でした。
制度の説明よりも先に、その言葉が自然に返ってくることが、村田さんの記憶に残っています。

村田さんは株式会社クラハシで、総務・人事を中心に一部広報業務も担当しています。
2021年1月に派遣社員として入社し、現在は正社員として働いています。

派遣社員として勤務していた当時に関わっていたのは、キス養殖の種苗センター創設に伴う補助金申請業務や、EC事業の立ち上げに関わるサポート業務でした。
会社として新しい取り組みに挑戦する場面が続く中で、現場の意見や個人の関心が尊重されていると感じる機会が多かったと言います。

単に業務を任されるのではなく、「やってみたい」という気持ちを否定されないこと。
そうした姿勢に触れる中で、村田さんは次第に「この会社の中で、長く働きたい」と考えるようになり、正社員として働くことを選びました。

子育ても働き方も、前提として共有されている

クラハシの社員数はおよそ170名で、男性社員の割合が高い職場です。
一方で、子育てを理由に休みを取ることは、男女を問わず珍しいことではありません。

「男性だから」「女性だから」といった役割分担が強く意識されているわけではなく、子どもの体調不良や家庭の事情は、誰にでも起こり得ることとして受け止められています。
子育ては特別な事情というよりも、働く上での前提として共有されている感覚に近いと言えます。

部署を越えた会話も多く、入社して間もない社員であっても孤立しにくい環境があります。
村田さんが口にする「歓迎されている感じ」という言葉は、制度や仕組みだけではなく、日々のやり取りの中で生まれているものです。

働きやすさについて印象に残っているのは、福利厚生の内容そのものではありません。
子どもの体調不良などで急に早退が必要になったとき、返ってくるのは「もう帰りなよ」という言葉です。

それは特別な配慮というよりも、日常的な反応として自然に返ってくるものでした。
フレックスタイム制度を使えば、学校行事にも有給を使わずに対応することができ、別の日に時間を調整すれば問題ありません。

有給休暇は「何かあったとき」のために残しておくことができる。
制度があること以上に、それを使うことに気を遣わなくていい点が、働く中での安心感につながっています。

支えられる側から、支える側へ

現在、村田さんは総務・人事を担当する立場として、社員を支える側に回っています。
その立場になったことで、これまでとは違った視点で職場を見るようになりました。

有給休暇が残り少ない社員が続けて休んでいるとき、単なる勤怠状況としてではなく、子どもの体調不良が続いているのかもしれないと想像することがあります。
そうした場面では、特別休暇の制度について、総務側から具体的に声をかけることもあります。

「こういう制度があるので、よければ使ってくださいね」

制度は、知っている人だけが使えるものにしない。
掲示されているだけで終わらせず、必要な人に届く形で伝えることが大切だと考えています。

実際に制度を活用しながら働いている社員もおり、個人の事情に応じた選択ができる環境があります。
村田さん自身が支えられてきた経験が、今は支える側としての行動につながっています。

働き方と暮らしが、自然につながっている

福山市での暮らしについても、村田さんが語るのは抽象的な感想ではなく、具体的な場面です。
福山市には小児科が多く、夜間診療所が365日対応しているため、急なけがや体調不良があっても慌てる必要がありません。

夕方に子どもがけがをした場合でも、夜間まで待ってから受診するという選択肢を取ることができ、用事を済ませてから病院に向かうこともできます。
こうした選択肢があることで、日々の生活の中で立ち止まらずに済んでいると感じています。

医療や保育の選択肢が多く、必要なものが近場でそろうこと。
暮らしの中で大きく構えなくていい場面が多いことが、働き方とも自然につながっています。

制度や環境について語る前に、どんな言葉が交わされているのか。
その積み重ねが、クラハシという会社の空気を形づくっています。