大熊町出身の石田宗大さんは、東日本大震災による避難の影響で町外に住んでいましたが、ある出来事をきっかけに帰還を決意しました。「ご先祖様が盛り上げてきた町で、自分の好きな馬と一緒に何かできないか」という強い想いから、「ぱかぱかはうす」という場所で活動を行っています。馬と共に大熊の未来を切り開こうと奮闘する石田さんに、Uターンを決意した経緯や、町での暮らしの魅力、そして今後の展望について詳しく伺いました。

大熊町に戻った理由:故郷への強い想いと「悔しさ」
私はもともと大熊町出身で、現在「ぱかぱかはうす」という場所で活動しています。私の活動は、馬とのふれあいを通して、子どもたちが成長するきっかけをつくり、子どもたちの自信や、町全体の活性化に繋げることを目指しています。ご先祖様たちが盛り上げてきたこの町で、もともと好きだった馬と一緒に何かできないかという思いから始まりました。
私が馬を好きになった原点は、震災前、小学校2年生の時に参加した相馬野馬追での衝撃的な経験にあります。
野馬追には大熊町からも騎馬が参加するのですが、自分が乗った馬がお母さん馬で、子馬を連れて来ていました。空き時間には子馬とずっと遊んでました。野馬追が終わって子馬と別れる際にお母さん馬が涙を流していたんです。(子供と遊んでくれてありがとね〜みたいな感じだと私は思いました)馬は感情表現がしっかりできるのだと気づき、そこから馬への強い関心が芽生えました。この出来事は、震災前の思い出の中でも今でも忘れられない、一番の思い出です。

大熊町へのUターンを決断したのは、3年ほど前です。もともと戻ろうという考えはあまりありませんでしたが、大熊町移住定住支援センター主催の「大熊若者同窓会」に参加したことが大きな転機となりました。
そのイベントで、他県出身の大学生などが大熊に強い関心を持っている姿を見て、大熊出身者である自分よりも、他県の出身の人の方が、大熊のために動きたいなと思う人が多いんだと、悔しさを覚えました。この悔しさから、自分が帰って大熊出身の若者を増やしたいと思い、7月のイベント参加から同年の10月にはもう大熊に住所を移すというスピード決断に至りました。
2024年の「大熊若者同窓会」の様子
https://okuma-style.com/wmHYmKOu/a_ISeVtI
「馬と子ども」の成長を第一に、大熊を癒やしの場に
現在はポニーの「メイちゃん(推定13歳)」1頭を飼育しており、「FUN EAT MAKERS in Okuma オープニングイベント」等の市内イベント等にも参加しています。イベントなどでは、馬に乗ってもらうことよりも、まずは一緒に散歩したり、「触れあってもらう」活動をメインにしています。私1人で活動しているため、SNSの投稿に苦労したり、乗馬体験など安全面が重視される活動を行う際にサポート役が必要だと感じたり、まだまだ課題はあります。しかし、祖父の友人たちが、わずか4日ほどで馬小屋を作ってくれたり、一番最初に開催されたイベントでは、3家族ぐらいがめいちゃんと一緒に散歩してくれたりするなど、周囲の助けに恵まれています。
「ぱかぱかはうす」の最終的な目標は、馬とのコミュニケーションを通じて、子どもたちが少しでも成長するきっかけを掴み、自信につなげたり、緊張をほぐしたりするような場所にすることです。大熊の未来のたまごである子どもたちが、馬と触れ合うことで立派な大人になる手助けをしたいと考えています。

将来的には、子どもが乗れる馬だけでなく、一般の人も馬に乗って自宅周辺の自然を感じながら歩けるようにし、大人にとっても仕事で疲れた時の「癒しの場」となるような空間を提供したいと考えています。大熊のイベントなどにめいちゃんを連れて行き、大熊のキャラクターとしてみんなに知ってもらい、触れあってもらえるようになることが、現在の目標です。
南相馬市のように、学校の授業で野馬追のことを学んだ後に乗馬体験をするなど、町独自で馬と触れ合える取り組みができれば、大熊の将来を担う子どもたちの成長に繋がると思っています。
落ち着いた日々と「垣根のない」温かい人間関係
大熊町に戻ってからの生活は、規則正しくなりました。馬のお世話があるため、朝6時半から7時頃に起きて朝食を与え、調教や運動をさせています。睡眠時間は減っても、馬のおかげで生活が規則正しくなり、健康面も改善しました。
Uターン前は、いわき市にいましたが、娯楽施設やスーパーが充実していてもあまり興味がなかったので、何もない大熊に戻ってきた方が「静かで、心が綺麗になっていく」と感じ、予想以上に毎日が楽しく感じています。
特に良かったのは、コミュニケーション能力が向上したことです。もともと人と接したり、話したりするのが好きな方ではありませんでしたが、大熊に来てイベントへの参加や、人と接する時間が増え、変わることができました。

地元出身者から見て「今の大熊」は、課題は残るものの、震災前とは違う賑やかさや雰囲気を感じています。スーパーが今はないことなど、生活面の不便さについてはあまり深くは考えず、「自給自足とかで生きて行けたら楽しい」と前向きに捉えています。
移住を考えている方へのメッセージ
大熊町の最も大きな魅力は、垣根がなく、みんな仲が良いことです。若者も近所のお年寄りも仲が良く、私が帰還した際にも大喜びしてくれ、一緒にご飯を食べようと言ってくれるなど、人の温かさを感じます。移住者と帰還者の区別もなく、みんな困ったらすぐに助けてくれるのがこの町の特長です。自分自身も地元出身の若者が大熊で挑戦するきっかけや活躍しやすい環境を作っていきたいと思います。
もし何か挑戦したいことや、やりたいことがあって迷っているなら、もう「飛び込んでやるぐらいの気持ち」で来てみてください。この町は、みんながみんな仲良くて、何かやりたいことがあれば、色んな人たちが助けてくれる町です。みんな助けてくれるので、軽い気持ちでも、やりたいことは何でもできる環境があります。
大熊は本当に楽しい町なので、ぜひ一緒に頑張っていきましょう。私と馬と一緒に、大熊で何か新しい活動に携われることを楽しみにしています。
