2026年2月1日。 汗見川も凍るほど、冬の寒さが厳しい日曜日。しかし、高知県本山町の沿道は、ある種の熱気に包まれていました。 「本山町駅伝大会」。

この日、嶺北高校の嶺北研修交流学舎(寮)から、総勢15名の生徒がランナーとして、そして1名が運営ボランティアとしてこの場に立っていました。

これは、単なる活動の記録ではありません。 親元を離れ、この地を「第二の故郷」として生きる寮生たちが、地域と心を通わせた、小さな冒険の記録です。

「正直、寝ていたい」日曜日の朝

今年の寮には、ある新しいルールがありました。 それは、「1年生は本山町駅伝に全員参加」というもの。

正直なところ、全員が最初から「よしやるぞ!」と前向きだったわけではありません。 長距離走が苦手な生徒もいれば、運動部ではない生徒もいます。 何より彼らは、親元を離れて暮らす「寮生」。 自分のことは自分でやり、共同生活の中で他者を気遣う日々を送っています。「せっかくの休日くらい、布団の中でゆっくり寝ていたい……」というのが、偽らざる本音だった子も少なくないはずです。

それでも、「地域の一員として、空気を肌で感じてほしい」という寮スタッフの想いに背中を押され、彼らはジャージに袖を通しました。

沿道の声援が、足を前に進ませる

今回エントリーしたのは、個性豊かな3チーム。

  • 男子1年生チーム:未知数の可能性を秘めたフレッシュな走り。

  • アスリートチーム:カヌー部1年生4名+バレー部2年生1名という、寮が誇る体力自慢の強力タッグ。

  • 女子1年生チーム:互いに励まし合う結束力が武器。

いざレースが始まると、彼らの表情が変わります。 苦しい上り坂、冷たい風。足が重くなる瞬間。 そんな時、背中を押したのは沿道からの声でした。

「頑張れー!」「嶺北高校、いけー!」

普段の学校と寮の往復だけでは出会わない、地域のおじいちゃん、おばあちゃん、地元の人々。 自分たちの名前を知らなくても、「高校生が頑張っている」というだけで送られる無償のエール。 その温かさが、彼らに「たすきを繋がなきゃ」という責任感と、不思議なパワーを与えてくれました。

結果以上の「収穫」

結果は、見事なものでした。

  • 🥈 女子1年生チーム:2位入賞

  • 🥉 アスリートチーム:3位入賞

さらに、ランナーだけではありません。2年生の女子生徒1名は、大会ボランティアとして裏方で運営をサポート。 「走る人」と「支える人」。その両方がいて初めてイベントが成り立つことを、身を持って体験しました。

ゴール後の生徒たちの顔つきは、朝の眠そうな表情とは別人のようでした。 ある生徒は、区間2位という好成績を出しながらも、悔しそうにこう言いました。

「来年はもっとやれる。リベンジしたい!」

苦手なこと、億劫なこと。 それを乗り越えて、地域の声援を浴びて走りきった経験は、単なる「運動の思い出」以上の自信を彼らに刻み込んだようです。

地域の風景の一部になる

県外から来た彼らにとって、本山町はあくまで「留学先」かもしれません。 しかし、こうして地域の行事に汗を流し、たすきを繋いだ瞬間、彼らは間違いなくこの町の「風景の一部」になりました。

今後も嶺北高校の寮では、「1年生は全員参加、2・3年生も積極的に参加」という方針で、この伝統を繋いでいきたいと考えています。

来年の冬もまた、寮生たちが白い息を吐きながら町を駆け抜けます。 その姿を見かけたら、ぜひ温かい声援をお願いいたします。その一声が、彼らにとって何よりの「地域の温もり」になるのですから。