新型コロナウイルス拡大への対応として、全国に発令されていた緊急事態宣言も解除され、自粛要請緩和も含め、少しずつ新しい日常が始まりつつあります。

コロナ禍にあり、一層注目を集めることになったのがクラウドファンディングです。外出自粛のあおりを受け大きなダメージを受けた商店街や飲食店、ホテルや旅館など、様々な領域で支援を求める声があがりました。国内最大手のクラウドファンディングサービスCAMPFIREが展開する「新型コロナウイルスサポートプログラム」では、開始3ヶ月で44億円、一社あたりにするとおおよそ200万円の支援を受けたことになるというニュースも発表されています。

このような結果は、クラウドファンディングが緊急時にセーフティネットのように機能することを示す好例だといえるでしょう。様々なジャンルで参考になるような取り組みをまとめてみます。

飲食店支援の新しいカタチ!商店街や個人商店をサポート

いま話題になっている取り組みのひとつが、漫画家の東村アキコ先生と、出身地の宮崎県宮崎市の商店街がコラボしたこちらの取り組みです。

宮崎の繁華街「ニシタチ」を盛り上げようと、漫画内で描かれる飲み会の合言葉を用い、イベントを実施するというもの。

飲食店経営者はもちろん、デザイン会社や酒造会社など、様々な領域の方々がつながり、町を盛り上げる取り組みでもあります。

また飲食店を応援する取り組みも全国各地で始まっています。

お食事券を先行予約することで飲食店を買い支え、外出自粛が解除された後に、再び日常の中で町を楽しもうというものです。様々な地域で、独自色も加えた展開をみせており、普段気にしていない町とのつながりを意識することにもつながっています。

調達金額1億1千万円以上。ブランド牛を支援する輪が全国から

営業自粛の煽りを受けたのは飲食店や小売店だけではありません。1億円以上を集め、大きな話題になったのがJA飛騨が取り組んだ、行き場をなくした飛騨牛をクラウドファンディングで買い支えるというものです。

一頭あたり2年半かけ育て上げるとあり、生産者側に大きな損失を与えてしまうことが予期される中、全国から1万件以上の支援が集まりました。

同様に、ブランド牛のひとつ「石垣牛」も取り組みを始めており、900人以上から1500万円以上を集めています。

「集う場所」を守る。続けるための支援のカタチ

新型コロナウイルス対策として、三密を避けるというところから人が集う場所も大きな影響を受けています。中でも、クラブやライブハウスなど、三密につながりやすいということで営業自粛が全国で続いています。

この間に店を閉じるという判断をした事業者も多く、改めて文化を支える面などにも注目が集まっています。

そんな中、自粛期間中の営業支援のためにクラウドファンディングを活用しているところも多数見受けられます。

こちらは3千万円以上を6500人以上から集め、多くの応援の声も届く取り組みです。チケットの販売に加えて、オリジナルTシャツの販売などを通じて、支援を広めています。

老舗温泉旅館の営業存続をサポート

県をまたいだ移動の自粛などでも大きな影響を受けたのが旅館・ホテル業界でしょう。それぞれがもつ強みを活かし、中にはオリジナル商品の通販をスタートさせたり、テレワークに特化した宿泊プランを考案したりなど、コロナ禍から、新しい提案を初めてところも全国各地で話題になりました。

こちらのクラウドファンディングは、群馬県みなかみ町で95年続く老舗温泉旅館の存続を支援するというものです。

目標金額300万円を大きく上回る780万円を集め、現在も継続中です。

「つながり」を価値に変える。新しい発想と行動で乗り越える

様々なジャンルのコロナ禍における事業支援の取り組みを見てきました。

これらはどれも、平時でのお客さんや地域とのつながりを、今できる支援に可視化した取り組みだと言えます。ポイントは、それぞれのお店や人などを単体として捉えるのではなく、お客さんと一緒にであったり、商店街と一緒にであったり、地域と一緒にというかたちで、点ではなく面で取り組みをスタートさせていることでしょう。

そうすることで、ただ闇雲に支援を訴えるわけではなく、もともとつながりがあったり、つながっていた人が間に立ち、されに誰かとつながるというような支援の連鎖がおきていきます。

翻って考えると、事業者側は、自分たちの事業を誰に届けるのか、どのような人から応援してほしいのかを考えるきっかけにもなるはずです。

新型コロナ対策の中ではじまったこれらの動きは、今後につながる動きだといえるでしょう。