帝国データバンクは、2021年1-6月間に首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)⇔地方間を跨いだ「本社所在地の移転」が判明した企業(個人事業主、非営利法人等含む)について、保有する企業概要データベースのうち業種や規模が判明している企業を対象に分析を行った。

<調査結果(要旨)>
2021年1-6月間に判明した、首都圏外へ本社を移転した企業数は186社だった。6月時点で150社超となったのは過去10年間で初めてで、企業本社の首都圏外への転出の動きが加速している。このペースが続いた場合、首都圏外への企業移転は2002年の311社以来19年ぶりの300社台となる見込みで、1990年以降で最多だった1994年の328社を超える可能性が高い。また、2010年以来11年ぶりの転出超過が予想される
転出先で最も多い都道府県は「大阪府」(22社)。紅茶輸入・製造販売大手のルピシアが移転した「北海道」は14社で4番目に多いほか、昨年通年の移転社数を既に上回る
[注1] 本社とは、実質的な本社機能(事務所など)が所在する事業所を指し、商業登記上の本店所在地と異なるケースがある
[注2] 首都圏の企業転出・転入は、首都圏内外をまたぐ 道府県との企業移転を指しており、首都圏内での県境を跨ぐ本社移転は含まれない
[注3] 1-6月間に本社移転が判明した企業数の集計のため、年間社数は本調査後に変動する可能性がある

首都圏外への転出、1-6月間に186社 過去最多ペースで推移
2021年1-6月間に判明した、首都圏外へ本社を移転した企業数は186社だった。6月時点で150社超となったのは過去10年間で初めてで、企業本社の首都圏外への転出の動きが加速している。このペースが続いた場合、首都圏外への企業移転は2002年の311社以来19年ぶりに300社へ到達する見込みで、1990年以降で最多だった1994年の328社を上回る可能性も出てきた。

他方、同期間における首都圏への転入企業は172社で、通年で転入社数が過去最多だった2015年に並ぶ高水準で推移している。首都圏への本社移転を予定していた企業がコロナ禍を理由に20年中の実施を延期したことによる反動増も考えられるが、企業の首都圏流入の動きは依然として強い点に変化はない。しかし、企業の脱・首都圏の動きが流入を上回って推移しており、2021年通年の本社移転は2010年以来11年ぶりの転出超過となることが予想される。

転出先は「大阪府」がトップ 北関東3県、北海道など地方も上位
首都圏外へ移転した企業の転出先では、最も多かったのが「大阪府」の22社だった。次いで「茨城県」(19社)、「静岡県」(16社)などが続いた。紅茶輸入・製造販売大手のルピシアが移転した「北海道」は14社で4番目に多いほか、昨年通年の移転社数(7社)を既に上回る。総じて首都圏から離れた大都市などに移転先が集中する一方で、首都圏に隣接する茨城県・栃木県・群馬県の北関東3県へ移転する企業も引き続き多い。

首都圏内へ移転した企業の転入元では「大阪府」(36社)が最も多く、「北海道」(15社)、「愛知県」(14社)が続いた。

首都圏外への本社移転、21年後半にかけてさらに増加の可能性
新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の発出などにより、本社機能や主要拠点が首都圏に集中することの脆弱性が改めて認知されたことで、本社など主要拠点を地方に移転・分散する動きが進んでいる。特に、テレワークの常態化が進む首都圏の大手企業では、オンライン会議システムの利用などで通常業務に大きな支障が無いなど前向きな反応も広がり、人材派遣大手のパソナグループをはじめ東京オフィスの縮小・移転といった動きが広がっている。

従業員目線でも、生活コストの削減や通勤負担減など地方移住のメリットが改めて注目されている。内閣府の調査でも、首都圏在住の20代のうち4割がコロナ禍で地方への移住を考えており、その割合もコロナ禍前より高まるなど、これまでの東京一極集中とは異なる流れがみられる。

今後は、インターネットを介した業務が可能なサービス業やスタートアップのほか、大手企業でもテレワークやジョブ型雇用の導入と併せて本社のあり方を見直す機運が高まるとみられ、21年後半から来年にかけて、首都圏外への本社移転を実施・検討する企業が増加する可能性がある。