和歌山県が、2018年4月から企画している起業・就農、就労の体験プログラムが
利用者が希望する事業者のもとで「しごと」を体験しながら、
周辺地域の先輩移住者や地域住民の方との交流を通じて「くらし」の体験を行い、
移住後の生活をイメージすることができます。体験費は無料です。その“体験先”をご紹介します。
earthman
住所:和歌山県橋本市高野口町竹尾375 事業内容:環境保全活動、パーマカルチャーのデザイン・啓発、循環型農業、古民家再生
弘法大師空海ゆかりの地、九度山町と接する橋本市は、古くから高野山往還の宿場として栄えてきたエリアです。その北西部、大阪府との県境にある住民700人ほどの里山集落「信太地区」で、パーマカルチャーという概念を軸にした循環型の暮らしを、パートナーと共に実践する移住者がいます。片岡真央さんです。
熊本県出身の片岡さんは、大学卒業後、大手人材派遣会社で地方創生事業に従事していました。そこで「社会課題の根源の多くは、食やエネルギーの問題から生まれているのではないか」という気づきを得たことが今の暮らしを始めるきっかけです。
「小さなコミュニティ単位で、食やエネルギーを自給自足する暮らしを作ってみたかったんです。」と片岡さん。それにより環境負荷を抑えるとともに、経済的な基盤も築けるような仕組みを模索しています。
気候変動や環境問題に関心を持つ人々は増えていますが、片岡さんは、その解決を「こうすべき」という強制力に委ねることに違和感があると言います。
だからこそ「みんなが楽しく最初の一歩を踏み出せるような場を作りたい。我慢するのではなく、シフトチェンジを自ら望んでしたくなるような体験を提供したい。」と農家民泊の開業も準備中です。
パーマカルチャーとは、人と自然が共存する持続的な暮らしをデザインするための手法。片岡さんが実践する暮らしを体験しながら、その手法を学び、これからの暮らしや社会のあり方を一緒に考えましょう。
今回体験できる内容
片岡さんは、パーマカルチャーの考えを取り入れた自身の暮らしを「INとOUTの循環が目に見えてわかる生活システム」と表現します。
トイレは流さずに土に返し、それを肥料に畑の作物を育てる。エネルギーは太陽光を活用し、発電量と使用量をきちんと把握する。こうしたサイクルを可視化することが、「捨てること」「無駄にすること」というロスの軽減につながるのです。
まずは、片岡さんが実践する暮らしを体験してみてください。移住してから、会社員時代の同僚や友人を100人以上招いてきた片岡さんは、「人によって、好き嫌い、許せる許せない、心地良い悪いという感覚がそれぞれ違う」ことを実感しています。
だからこそ「何が自分にとって心地よいのかという判断基準を提供できる。」と片岡さん。「意外とみんなストライクゾーンが広い」そうですよ。
その他、自給自足のための農作業はもちろん、炭作り、山椒摘み、狩猟・解体の体験などの季節ごとの里山の生業、農家民泊開業に向けた古民家のリノベーション作業にも参加することができます。
また移住仲間と共に交流会や小さなイベントを実施したり、使われていない材をアップサイクルするような場づくりなども企画しており、「面白い仲間がたくさん居るのでぜひ会ってもらえたら。」と地域の方との交流の場も用意しています。
パーマカルチャーや自給自足の暮らしに興味がある方だけでなく、幅広い方々に新たな楽しみ、発見を与えてくれる体験になるはずです。
しごと・暮らしの特徴
大学時代は大阪、会社員時代は淡路島で過ごした片岡さん。移住を考え始めてからは、西日本を中心に2年ほどの間、移住先を探し回ったと言います。
最終的に橋本市に移住を決めたのは、橋本市の高野口に実家があるパートナーの縁で、狩猟や炭焼きをはじめ里山暮らしを実践する師匠と出会うことができたから。技術の継承は、地域の文化を守ることにもなると考えました。
しかし、「会社での仕事も楽しくて、辞める決心がつかなかった。」と当時を振り返ります。そこで、週末に橋本市を訪れる二拠点生活を送り、自分の気持ちを見極めていたのだとか。その期間に拠点となる古民家を見つけ、2022年4月に本格的に移住。今に至ります。
実は片岡さんは「わかやましごと暮らし体験」の参加者でもあります。移住にあたって、橋本市の移住定住担当の女性職員と出会ったことも片岡さんの転機となりました。「信太地区」出身のその女性職員の後押しで、橋本市の地域プロジェクトマネージャーに就任し、前職での経験を活かす機会にも恵まれたのです。
現在、週3日は橋本市の地域プロジェクトマネージャーとして里山集落活性化の為のプロジェクトを地域の方と進め、残りの4日で民泊の為の古民家再生、里山を楽しむイベント開催、パーマカルチャーデザイン、地域での炭づくりなどを行っています。
地元の方に「信太地区はこれから真央ちゃんが担ってくれるんやな。」と期待されている片岡さん。これからもっとプレーヤーを増やしていきたいと意気込みます。
「自然を通して、自分のありたい姿、生き方をコーチングできる場としても農家民泊を育てていきたい。」とビジョンを広げる片岡さん。この機会に片岡さんと一緒に自然と向き合い、自分を見つめ直してみませんか?
体験スケジュール
1日目(13:00~17:00)
1.ごあいさつ、やりたいことや目的の確認
2.「earthman」の仕事の説明
3.パーマカルチャーを知る
・エネルギー編(焚き火、薪ストーブ体験等)
・トイレ編(土に返すコンポストトイレ体験)
※実際の仕事状況によって変更があります。
2日目(9:00~17:00)
1.仕事のお手伝い
・自給自足編(農業体験)
・生業作り編(炭作り、狩猟・解体、木こり体験等)
2.信太地区を知る
・地域住民との交流
・地域プロジェクトマネージャーの仕事理解
※実際の仕事状況によって変更があります。
3日目(9:00~15:00)
1.仕事のお手伝い
・農家民泊リノベーション作業
・自然エネルギーによる調理体験
(参加者のご希望や仕事の状況に合わせて選択)
2.最後のまとめ
・体験の感想、質疑応答
※実際の仕事状況によって変更があります。
補足事項
最少催行人数:1名
宿泊場所 :近隣宿泊施設
体験経費
参加費:無料
宿泊費:3,000円/泊まで補助あり
※初回の体験のみ適用
食費:実費負担
交通費(自宅~集合場所):実費負担