2024年7月20日(土)から21日(日)の1泊2日で、飯舘村と川俣町を巡る移住体験ツアー「ふくしまの笑顔とあなたの未来を重ねる旅in飯舘村&川俣町」が開催されました。この記事では、2日間のツアーのうち川俣町を訪問した7月21日(日)の様子をご紹介しながら、川俣町の暮らしや参加者のみなさんの声をお伝えします。
川俣町ってどんな町?
川俣町は福島県北部に位置し、県庁所在地の福島市から車で約30分と便利な場所にあります。また、海へも車で1時間以内で行けるアクセスの良さが特徴です。山間部に位置していますが降雪量は少ない気候。しかし冬の冷え込みは厳しく、地区によっては-15℃を下回ることがあります。フォルクローレの祭典「コスキン・エ・ハポン」や町の名物川俣シャモを振る舞う「川俣シャモまつり」など、町独自の賑わいがある町でもあります。
■川俣町の概要
https://mirai-work.life/city/kawamata/
「かわまたアンスリウム」と野菜の収穫を体験
ツアー2日目のこの日は、川俣町でアンスリウムとイチゴの栽培を手がけるほか、フラワーアレンジメント、いちご狩り、野菜の収穫体験ができる観光農園「株式会社smile farm(以下、スマイルファーム)」からスタート。こちらではアンスリウムと野菜の収穫を体験しました。
スマイルファームの代表取締役を務める谷口豪樹(ごうき)さんは埼玉県出身。前職はゴルフ用具販売店に勤めていましたが、2013年に福島市へ転勤したことをきっかけに奥様と出会い結婚。その後、会社から異動の辞令を受けたのを機に退職。奥様の故郷である川俣町で起業しました。2018年から花卉(き)農家であった義父の姿を見て憧れを抱き、ご自身も花卉農家として就農しアンスリウムの栽培を始め、2021年からはイチゴの栽培をスタートしました。今ではイチゴ狩りや野菜の収穫体験ができる観光農園として事業を拡大しています。
まず一行は、アンスリウムが咲き誇るビニールハウスで、谷口さんから町の復興のシンボル「かわまたアンスリウム」の栽培が始まった経緯を聞きました。
「アンスリウムは、東日本大震災からの早期復興を支援するため、近畿大学による『“オール近大”川俣町復興支援プロジェクト』の一環として、2013年から実証栽培が始まりました。2017年には町内11農家が『川俣町ポリエステル媒地活用推進組合』を設立して、町内の11ヵ所に栽培用のハウスを整備。私もその一員として、アンスリウムの栽培を始めました。土壌の代わりにポリエステルをリサイクルした綿のような素材に肥料を溶かした水を含ませ栽培する手法が用いられています」(谷口さん)
収穫時の注意点などの説明を受けた後、一行は赤やピンクの花が咲き誇るハウスの中へ。「こんなにたくさん咲いているのを見るのは初めて!」「この赤いのが好き」など、お気に入りの花を見つけて丁寧にハサミで切り取っていました。収穫した花は、きれいに咲き続けるように谷口さんが一本ずつ水揚げの処理をしてくれました。
続いては同じ敷地内にある体験農園で野菜の収穫です。この時期は赤く熟したトマトやナス、ズッキーニ、ジャガイモなどが実っています。皆さん食べごろの野菜を見定めながら収穫し、野菜を見せ合い、「家庭菜園ではこんなに大きく育たないよね」「どんな料理を作ろうかしら」などと、満足そうな表情。
たくさん収穫したジャガイモは、その場で蒸して振る舞われました。アツアツ、ホクホクのジャガイモの美味しさに笑顔がこぼれていました。
この日は気温も高かったため、参加者はスマイルファームで収穫されたイチゴを使った「削りイチゴ」や「イチゴミルク」で涼を取り、バスへと乗り込みました。
谷口さんの移住ストーリーはこちらの記事でもご紹介しています。
>https://mirai-work.life/magazine/2241/
名物「川俣シャモ」の美味しさを堪能
続いて向かったのは、道の駅かわまた内にある「川俣シャモレストラン Shamoll(シャモール)」。こちらでは、町のブランド鶏「川俣シャモ」の肉と卵を使った川俣シャモ親子丼をいただきました。歯応えがあり噛むほどに旨みが広がるお肉と、味の濃い卵、出汁の甘みが相まった逸品に舌鼓。
次の目的地に向かう途中、川俣町の医療の中核を担う済生会川俣病院を経由しました。内科や外科のほか、人工透析を受ける設備があり、町民の健康と命を守る大切な医療施設です。医療関係の資格を持つ人にとっては、経験を生かせる職場です。
リノベされた移住・定住促進住宅
次の目的地は、移住者を対象に4戸をリノベーションし、移住・定住促進住宅として貸し出されている町の公営住宅です。
間取りは子育て世代向けの2LDKで、内装や設備はもちろん間取りまで一新されています。収納付きテレビボードなどの家具が設置されており、壁面クローゼットもあります。また、エアコン、温水洗浄機付きの暖房便座、保温機能がついたお風呂などの設備も整っています。これだけの部屋で家賃は3万円、さらに敷地内の駐車場は一台2,500円と聞いて、参加者からは「部屋代が都会の駐車場代と変わらない!」「これだけきれいにリノベーションされているなら、すぐに引っ越したい」などと声が上がっていました。
町の政策推進課課長補佐兼まちづくり推進係の藤原貴範係長からは、「お子様のいるご家庭には減額制度もあります。敷地内にはお子様が遊べる公園もありますので、子育てには良い環境ではないでしょうか。夜は静かですし、花火大会の日はベランダから楽しむことができます」と説明がありました。
参加者のみなさんからは、インターネット環境を整える際の申し込み方法や、駐車場の場所や料金の確認、町の気候など、移住を想定した質問も出ていました。
先輩移住者から暮らしの魅力を聞く
続いて一行は川俣町役場へ移動。ここでは川俣町政策推進課まちづくり推進係の中井翔太さんから、町での生活や暮らし、移住支援制度に関する話を聞きました。
「川俣町は隣の福島市から30分ほど。東京からも2時間ほどで来ることができます。スーパーやコンビニ、ドラッグストア、ホームセンターもあり買い物には困りません。緑が多いけれども利便性もある、ちょうどいい田舎暮らしができる町です。暮らしを体験したい場合は、『かわまた暮らし体験住宅』もあります。また、町独自の移住支援制度として『かわまた移住支援給付事業補助金』や『移住・二地域居住支援金』などもありますので、川俣町に興味をお持ちになった方はご相談ください」(中井さん)
続いて、関東から移住した二組のご夫妻に、移住のきっかけや町での生活について話をうかがいました。
まずは、千葉県流山市出身の小原徹さんと福島市出身の里菜さんご夫妻から。二人は結婚を機に神奈川県川崎市で部屋を借り、4年ほど生活していました。
「家族が増えた時や将来のことを考えると戸建住宅がいいなと考えるようになりました。でも都内はもちろん、近郊の神奈川県や千葉県あたりは手が届かない金額だったので悩んでいました。幸い、私の仕事がリモートでできるので、地方に移住するのもいいかなと」(徹さん)
移住を検討するにあたり、たまに出勤することも考え、都会からあまり離れていない地方の都市を探すことに。その中で、福島12市町村のこと、そして里菜さんの出身である福島市から近い川俣町を選んだといいます。
「福島市出身でも、川俣町のことはよくわかりませんでした。お店もあるので不便は感じていませんし、自然も多く都会の喧騒もないので、とても暮らしやすいなと感じています」(里菜さん)
住居は、福島県や川俣町の補助金を活用して中古物件を購入しリフォームしたそうです。
「川俣町の魅力はちょうどいい田舎感ですね。山や川が目の前にあるのにお店があるので生活には困りません。思い切って移住して良かったです」(徹さん)
続いて埼玉県さいたま市から移住した、鈴木亮平さん・麻理菜さんご家族。
「やりたいことが見つかる環境に飛び出したいという思いを夫に相談したら、悩むより移住しようかと言ってくれて。福島12市町村内で農業をしている女性のオンラインセミナーに参加した時に、自然に寄り添う暮らしをしているという話をされていて。じゃあ、福島12市町村のどこかで探そう!と」(麻理菜さん)
「私は福島県いわき市出身ですが、移住を考えるまで二人とも川俣町のことを知りませんでした。初めて訪れた時に、どこか懐かしさを感じるところが気に入りました。あと妻が思い描く生活環境に一番近かったのがここだったということですね」(亮平さん)
現在のご自宅は町の空き家バンクで見つけたという鈴木さんご家族。庭には季節の花が咲き、近くの水辺には蛍も飛び交うそう。
「毎日心ときめく瞬間があって楽しいです。町の人でも見逃しているような魅力を発見できたら嬉しいですね」(麻理菜さん)
参加者のみなさんからは、住居を購入した際にかかった費用や利用した支援制度、住民との関係や仕事についてなどの質問が挙がり、回答に熱心に耳を傾けていました。
参加者の感想
参加者のみなさんは、この2日間で移住への考え方がどのように深まったのか、感想をご紹介します。
「すぐに移住とはいきませんが、まずは二拠点、そして将来的に移り住むのもいいなと思いました。もうすぐ子育てが終わるので検討してみたいです」
「そんなに不便な環境ではないと感じました。見学した移住者向けの住宅もきれいにリノベーションされていて驚きました。支援や補助が充実しているので安心しました」
「いつか田舎で暮らしたいなという思いがあって参加しました。生活に車が必要なこと、買い物には不便がないなど、現実を知ることができたので良かったです」
「来春から東京で看護師として働くことが決まっているのですが、将来的には移住して働くのもいいかなと思いました」
ほかにも「都会では希薄となった隣人や地域との関わりがあると聞いて安心感が持てた」「地元のお祭りに参加できるのは楽しそう」などの声がありました。
まとめ
1日目の飯舘村でも、先輩移住者との交流会や福島市からの移住者が立ち上げた「コーヒーポアハウス」への訪問を通じて、自然豊かな山間部での暮らしをイメージしていた参加者のみなさん。2日間のツアーを通じて、移住のイメージを大きく膨らませることができたようです。
2024年度の「未来ワークふくしま移住体験ツアー」は2025年2月まで月1回開催予定です。詳しくはこちらからご確認ください。
>https://mirai-work.life/lp/tour2024/
※内容は取材当時のものです
文・写真:和田学
※本記事はふくしま12市町村移住ポータルサイト『未来ワークふくしま』からの転載です。