2024年9月20日(金) に田村市に移住して木工作家として活躍されている方からお話を伺う、オンラインイベントを開催しました。 田村市都路町にあるYurumarumokumoku工房の新井田力さんと、奥様であり田村市起業型地域おこし協力隊として活躍している美菜子さんをゲストにお招きし、「木工作家」「先輩移住者」としての両方の面から、お話を伺いました。

ゲスト:
Yurumarumokumoku工房 新井田 力さん  
木工旋盤を使った作品作りに魅了され、自身で研究し試行錯誤しながらオリジナルの作品を制作する中、木との距離が近い環境で地域の木材を使った、木工がやりたいとの思いから、2024年に田村市へ家族で移住。森林資源が豊かな田村市の木材に価値を見出せるような作品を作り、森林がより豊かになっていく一助になれたとの思いで、作品を製作中。

・田村市起業型地域おこし協力隊 新井田 美菜子さん
住宅業界でインテリアコーディネーターや現場管理の仕事に携わり、その後フリーランスのお片づけカウンセラーに。自然や人とつながり生き生きとした心になれるような居場所を創りたいという思いから、自然豊かで人々の暖かさを魅力に感じた田村市に移住。空き家を活用して、人と自然が共生する循環型のシェアハウスとカフェを創り、ほっとひと息つけるような場所創りを目指す。


地域の木材で世界に一つだけの作品を作る「木工作家」

──どちらから田村市に移住してきましたか?
力さん:出身は青森県です。実家が大工で、埼玉のホームビルダーに就職しましたが、大怪我をして実家に戻りました。その後も大工・内装業をしていましたが、怪我が悪化して大工を引退。その時に妻から木工でお盆を作ってくれと依頼され、木工の楽しさに目覚めました。

──木工作家になった理由を詳しく教えてください。
力さん:妻からの依頼で、木で何かを作ることは楽しいと気づきました。木工についてYouTubeで調べた際に「木工旋盤」を知り、機械を購入。図面に従う大工と違い、木工は自分の考えで作れます。似たようなデザイン、大きさ、形で作りますが、仕上がった作品は全部世界に一つだけのものです。全く同じものを作るのではないので、自分は「木工職人」ではなく「木工作家」なのだと思いました。

──どのような活動をしていますか?
力さん:田村市の木材を使用して作品を作っています。アイデアやデザインは妻から出してもらい、それを図面におこして、どの木を使うか、どの木目を活かすかを考えます。田村市のブランド杉「田村杉」を使い、ネットにて販売しています。

──Yurumaru(優巡環)という作品名の由来について教えてください。
美菜子さん:人の心を和ませるような木の作品を作りたいと思い付けました。幸せは人の心が緩まる瞬間にやってくると考えていて、そこが根本的につながっていると思ったのです。作品や空間を通して心が緩まってほしい、優しさが循環して輪になっていくという意味もあります。

──そう考えたきっかけはありますか?
美菜子さん:住宅の仕事を経験して、現代は核家族が多くなり、他者に頼ることがなかなか難しくなっていると感じました。家族や地域など、人との関わりがとても重要だと考えるようになったのです。

──どうしたら木工作家になれますか?
力さん:木が好きかどうか、だと思います。木工旋盤を使うだけでなく、彫刻刀を持って削ることもあるし、自分で何かを作ることが好きなら誰でもできます。私も誰かに師事したわけではなく、YouTubeで学びました。

── 一日のスケジュールについて教えてください。
力さん:朝8時くらいから工房に移動して作業を開始し、受注品などを制作。集中して作業している時はお昼も食べずに続けてますね。忙しい時は夜10時くらいまでやっています。糸鋸やスライド丸鋸、木工旋盤などの機械を使用します。

──木工作家になってから気づいたことはありますか?
力さん:木の種類を知らなかったことです。木工作家になってから、どの木が何に向いているのかを学びました。技術面でも、削り具合などに苦労しています。

──好きな樹種はありますか?
力さん:ヒバが好きです。ただしヒバは値段が高いため、今は周りの地域の人から木材をいただいて活動しています。

──季節によって販売数や受注数は変わりますか?
美菜子さん:うちは季節商品が多いので、年末に向けて鏡餅が売れたり、節句があれば雛人形や鯉のぼりが売れます。そのため、繁忙期は年末から5月くらいまでになります。

──作品はどこで販売してますか?
美菜子さん:カラーミーというECサイトを利用して商品を掲載し、インスタグラムで告知して販売しています。ウェブサイトも自分たちで編集し、やりとりもウェブ上で行っています。受注が入ってから制作し、納期は二週間を目安に制作しています。

──思っていたことと違っていたことは?
力さん:機械に慣れるまで恐怖感や不安がありました。木材によって削れ方の違い、色の変化や膨張などについても知りました。

──移住生活の充実度合いはどうですか?
美菜子さん:自分たちが思い描いていた理想の生活ができ、とても充実しています。それまでは日常や仕事に追われていましたが、ゆったりと家族と過ごせる時間を持てるようになりました。

──お子様の転校など、不安はありませんでしたか?
美菜子さん:一年くらい移住先を探して各地域のイベントに参加したのですが、子供たちがどこに行っても友達を作っていました。その様子を見て、転校しても大丈夫だと思いました。

──地域へのなじみかたのコツはありますか?
美菜子さん:子供本人の意思で、移住後にスポーツ少年団に入り、そこから地域のコミュニティに所属することができました。子供がいない場合でも、自治会に入って地域に馴染む方法もあります。

【質疑応答】大工の経験は必要ですか?
力さん:不要です。丸鋸などの機械を使う時には大工の経験を活かせています。

【質疑応答】初期投資はいくらですか?
美菜子さん:小さい木工旋盤で7万円、糸鋸2万円くらいですね。何を作りたいかによりますが、掌サイズの小さいものなら20万くらいあれば大丈夫です。30万くらいあればいいもの買えると思います。



あなたのチャレンジを応援する場所、田村市。

移住の決め手について尋ねた際、美菜子さんはこう語ってくれました。

「地域の人に木工をしたいと言ったら、色々とアドバイスをくださり、背中を押してくれました。ここまで応援してくれた地域は他にないと思います。田村市はチャレンジできる風土があり、人との結びつきや地域愛が深いところだと感じました」

今回もたくさんの方にご参加いただきました。参加者からは、
・充実した楽しい生活を送っている印象を受けました
・アットホームな感じで、皆さんの雰囲気がよかった
・もっと田村市のことを知りたくなりました
との感想をいただきました。

たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。

たむらぐらし