株式会社リジェンワークス 取締役 佐藤 裕也 氏 南相馬市小高区出身。東京でエンターテインメント業界のWebサイトの構築やプロデュースに携わった後、東日本大震災からの復興支援を手がけるNPO法人を手伝うためにUターン。福島12市町村内のベンチャー企業などでの勤務を経て、2024年7月にリジェンワークスの取締役に就任。 |
日本で人口減少が進むなか、世界規模では人口の大幅な増加が見込まれており、今後20年~30年のうちに、人間が摂取するタンパク質が十分に確保できない「タンパク質危機」がやってくるとされている。その課題を解決する可能性を秘めた事業を展開するのが、南相馬市に拠点を置くリジェンワークスだ。
リジェンワークスでは、「循環」をキーワードに、廃棄するしかなかった魚や植物の残渣(ざんさ=原料から目的の部位などを取り除いた後に出る余りの部分)の活用に取り組んでいる。残渣の削減は地球環境保護の観点から重要な取り組みだが、単なる削減にとどまらず、残渣から高品質なタンパク質原料を作り出すことに成功している。その取り組みについて、取締役の佐藤裕也氏に話を聞いた。
世界に類をみないサメの活用技術を確立
リジェンワークスが粉末原料を製造する際に材料としているのは、フカヒレを取った後のサメや、ツナ缶の製造で出たマグロのアラなど、食品として加工する過程でどうしても出てしまう残渣である。通常は廃棄されるものだが、そこから独自の技術を用いてタンパク質を生成する。とりわけ、非常に高タンパクであるサメを加工する技術は世界的にも類のないものだという。
「これはサメの捕獲を推奨する為の研究ではないことを前提にして聞いて欲しいのですが、フカヒレを取った後のサメは、通常はそのまま海へ廃棄されています。しかし近年、それは環境破壊につながる行為であると考えられるようになってきました。ただ、サメ肉は時間が経つにつれてアンモニア臭を発するため、食用としてはなかなか流通しません。粉末にしたとしても臭いは取れず、活用の大きな障壁となっていました。
しかし当社では、アンモニア臭を除去しつつ高タンパクな粉末を生成する独自の技術を確立。現在、養殖魚の飼料としての活用を模索しているところです」
飼料にとどまらず用途の拡大を進めたい
やがて来るとされるタンパク質危機に対処するうえで、リジェンワークスの技術は大きな価値を発揮するものとなるが、反面、動物性タンパク質だけでその危機を乗り越えることは難しいだろうと佐藤氏は語る。動物性タンパク質に過剰に頼ることによる生態系バランスの崩壊も考えられる。
そこでリジェンワークスが新たに取り組むのが、植物性タンパク質や菌タンパク質も取り入れた粉末原料の開発だ。例えばトマトの茎や葉など、野菜からもタンパク質は生成できるという。さらにはタンパク質を生成した残液から菌を培養し、菌タンパク質の生成にも成功している。ただし、それらのタンパク質は動物性のタンパク質と構成要素が異なるため、有効に混ぜ合わせることが今後の開発の大きなテーマとなる。
さらに、こうした研究開発において同じ志をもつベンチャーとの協業も図りたいと佐藤氏は言う。
「新しい発想をもつ企業と積極的に手を繋ぎ、あらゆる活用の可能性を考え、広げていかなければいけないと思っています。そのなかで忘れてはいけないのは、当社は飼料会社ではなく、グリーンテック企業であるということ。タンパク質に留まらず、さまざまな未利用資源から社会にとって必要な成分を抽出し、循環させる価値を広げたいと思っています」
都会でチャンスに恵まれない人にもチャンスがあるまち
地元出身で東京からUターンした佐藤氏。仕事という観点から見た南相馬市や相双地域の魅力をこう語る。
「この地域にはロボットやAIテクノロジーなどに関する最新の情報がいち早く集まり、インキュベーション的にもアクセラレーション的にもすべての要素が揃っています。福島ロボットテストフィールドや福島国際研究教育機構(F-REI)があること、また、この地で新たな事業を起こすことにCSR的な価値を見出し積極的に投資をする企業が多いことが、その大きな理由です。先進的な分野において高い技術や志をもちつつ都会ではなかなかチャンスに恵まれないと感じている方にとっては、一気に第一線で活躍できるチャンスもあると思います」
現在リジェンワークスで求めているのは、高度な知識を持った博士研究員(ポストドクター)などの経験をもつ人材。社内の開発研究主任者をサポートし、研究スケジュールを把握しながら、マイルストーンをもって研究の現場を指揮できる社員の確保が急務だという。また、そうした高度な人材のもとで研究の実務にあたる社員も確保したいと言う。
「当社は自由な社風です。自分のやりたいことを聞いてもらえるし、実際にやらせてもらえる環境もあります。ただ、その自由は、確実かつ黙々と与えられた業務をこなすことで得られるものであり、地道な努力が必要となります。そうした環境に身を置くことに興味がある方であれば、存分に力を発揮し活躍できるはずです」
現在は南相馬市でセルロース材料の製造・供給を手がけるトレ食株式会社の施設の一部を借りながら開発を進めているが、近い将来には自社工場の開設も計画しているという。食糧問題解決に貢献し得る技術のさらなる向上に期待が集まっている。
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■株式会社リジェンワークス
東京都東大和市で不動産事業を展開する株式会社HONJOの100%子会社として2018年に設立。南相馬市を拠点にプラスチックの代替となるセルロースを植物由来で開発するトレ食株式会社との技術連携により、タンパク質を含んだ動物由来の粉末原料を製造。先端技術の活用による持続可能な食の循環システムの構築を目指している。
所在地:〒979-2167 福島県南相馬市小高区吉名字岩屋堂175-3
URL:https://www.regenworks.co.jp/
※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:髙橋晃浩