12月1日から、ついにNHKなどで4K,8K放送が始まりました。 販売されているテレビのほとんどが4Kなのに、その恩恵を得られる映像がほとんどなかったという変な状況が、ようやく解消されるわけですが、それでもチューナーを対応のものにしなければならないなど、よくわからない状況もつづいているので、実際に多くの人がその世界を味わうようになるまでには、やはり2020年のオリンピック直前ぐらいになるのでしょうか…。とはいえ、やはり更に高画質の世界が急速に広がっていくのは間違いない状況ですね。今でも十分綺麗だと思っていても、一度もっときれいな画質に慣れてしまうと後戻り出来ないのは今までもそうでしたしね。
さらに言えば、少し前から急速に拡大しつつあるVR(ヴァーチャル・リアリティ)のヘッドマウントディスプレイ。こちらも価格が手頃になったこともあり、普及が加速しているようです。

さてそういう時代を迎えるにあたって、我々も含め観光にかかわる仕事をしている方のなかには、「果たしてこの状況が、観光にとってプラスなのか?それともマイナスなのか?」ということが気になっている方も少なくないのではと思います。つまり、「きれいな景色が自宅で手軽に、しかもかなりの高品質で味わえるようになって、観光地に行く人は増えるのか? それとも減るのか?」 ということです。これについては、まだ明らかな傾向が示されている事例は目にしません。(もし事例などあったらぜひお知らせ下さい!)これからのことで、どっちに転ぶかわからないというのが現状のようです。

私自身も、実はまだ自宅でのTVの4K/8K放送の手続きをしていません。せっかく4Kテレビではあるので、そろそろと思っているところではあります。一方でVRについては、少し前に話題のOculusGoを購入し、その体験には驚愕しました。VRの世界はゲームなどだけではなく、観光コンテンツや、ジェットコースターや、お化け屋敷敵なコンテンツなど、すでに数限りなく展開されています。まだ画質はイマイチのものが多いので、その影響は少ないと思いますが、あれを味わうと、高画質になり更に没入感が増すのは時間の問題だということに疑いの余地はありません。さらに手軽な4K・8Kは、ある意味それ以上に手軽で親しみやすいので、高画質で、リアリティのある音に包まれた、「観光体験」は、あっという間にお茶の間で手軽に味わえるようになるでしょう。

そうなった場合、果たして人はわざわざ”観光地”にいくのか?
これは本当に悩ましい課題です。


これは私個人の考えですが、一つ確実なのは、やはり「風景を愛でるだけの観光」は急速に衰退するだろうと思います。
すでに、観光の主流は、「体験」へと移行しつつあると言われています。とはいえ、「きれいな景色」を売りにしている観光地は山程あります。そういう場所への集客は、特に寺社仏閣や、撮影に許可がいるような場所以外だと、ある意味著作権フリーのコンテンツとして、それらはどんどん映像やヴァーチャルの世界に取って代わられるでしょう。その場合、地域はそれに対して課金できるわけではなく、おそらくはマイナスの影響が大きいのではないでしょうか?また「体験」といっても、いわゆる「ジェットコースター」レベルの体験でも、ある程度マイナスの影響は受けると思います。とくにVRは本当に、”かなりのレベル”でそれらを体感できます。やったことのある人はお分かりかと思いますが、乗り物酔いのような感覚になるほどです。もちろん、「本物が体験したい!」というプラスの感情を呼ぶきかっけにもなる可能性も大いにあります。ただ、同時に「まあ、こんなもんかな」と思われる可能性も同じくらいあると思います。

一方で、例えば「食」などの体験は、もちろんバーチャルでできるまでにはまだ相当の年月がかかりそうです。(笑)
私が体験して面白いなと思ったのは、VRのコンテンツで、韓国の(どこだったか)築地のような市場の食体験を巡るコンテンツです。美味しそうな料理や、珍しい食材、なかにはちょっと”ビックリ”なものまで、あらゆる食材や料理をめぐり、美味しそうに食べる体験に連れて行ってもらうような内容でした。これはちょっとぐっと来ましたね。「美味しそう!行ってみたい!」なと。行かなければ、絶対食べられませんしね(笑)。こうした観光地は、VRや、4K・8Kが、強力なプロモーション機会となる可能性が大いにありそうです。しかしやはり、「よほどのインパクトがない限り」行こうとしなくなるのではないか…という懸念は払拭できません。少し悲観的すぎるでしょうか?

今、観光地はどこも、「ここでしか得られない体験」をどう作るかを考え始めています。4K/8K/VRの世界は、その取組みをさらに加速させなければならない状況を生み出すことだけは確かなようです。皆さんはどう思われますか?

文:ネイティブ倉重

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【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。