はじめに
大熊インキュベーションセンター(OIC)でインキュベーションマネージャーを務める黒田敦史さん。長年東京で新規事業の開発に取り組んできた黒田さんは「大熊町には新しいこと、自分がやりたいことを実現できる恵まれた環境がある」と語ります。現在のOICのトピックや移住・大熊町への企業進出を考えている方々へのメッセージ等も含めて、お話を伺いました。
大熊に移住した理由:新しいことを一番実現できる町だから
もともと外資系コンサルティング会社等に15年ほど勤めてそこから独立しまして、大企業・中堅企業の事業開発や新規事業の開発、ベンチャー企業への投資などを行っておりました。そのご縁で2019年ごろから大熊町に関わり、産業振興のプラン作りやOICの構想づくりを行っていました。
そんな中で大熊町出身の吉田学と出会いました。彼は一般社団法人HAMADOORI13を立ち上げてまちづくりや浜通りの復興に力を入れながら、大熊町の中堅・若手を引っ張っていくような存在でした。彼と意気投合してビジネスゲートウェイ株式会社を立ち上げました。
そして、ビジネスゲートウェイ株式会社がOICの運営を担うことになり、私がインキュベーションマネジャーを務めることになりました。移住をしたのは、マネジャーになったからということもありますが、それ以上に大熊町が新しいことを一番実現できるまちだからということです。
私自身、自分の専門が新しいビジネスを立ち上げるということで、10年以上新規事業開発を行っているのですが、首都圏・東京圏においては、色々なチャンスがあるものの、競合も多く、やりたいことがなかなかできないことをもどかしく感じていました、ただ大熊町にかかわってみると、競合がいないことに加えて、事業の機会・チャンスもたくさんあることがわかりました。
浜通り地域では「ふくしまイノベーション・コースト構想」が進められており「廃炉」や「ロボット・ドローン」、「エネルギー、環境、リサイクル」など、これまでにない新たな事業のチャンスがたくさんあります。さらに、町も新しいことを始めようとする方や企業に向けた様々な補助制度を用意しています。これほど恵まれた環境はなかなかないということで移住をしました。
OICを拠点にしたプロジェクトが本格化
OICは2022年7月にオープンしまして、現在、OICには約150社の企業が入居しています。主にスタートアップ企業が多いですが、大企業や大学もサテライトオフィスとして活用しています。
最近は町内に産業団地もできはじめ、そこにOICに入居されている方が植物工場やデータセンターなど新しい工場、施設を建てはじめています。OICを拠点とする入居企業さんのプロジェクトが本格的に動き出し、町に新たな事業・雇用が生まれ始めています。
2024年12月にはJR大野駅西口に産業交流施設「CREVAおおくま」がオープンしましたが、もともとOICに入居されていた方が「CREVAおおくま」に移転し、次のステップに進む企業も出始めてきました。
それから、最近はリモートワークをする場所としてOICを利用する移住者の方も増えてきました。2023年に「学び舎ゆめの森」が町内に開校したことで、移住前のお仕事をリモートで続けながら、ご家族で移住される方が増えてきました。そういった方にリモートワークを行う環境としてOICのコワーキングスペースなどをご活用いただいています。
人と人との距離感が近い心地よさ
ずっと東京にいて、そして大熊に住んでみると、一日が長く感じますね。東京で仕事をしているときは、会社への移動もそうですしお客様のところに行くにしても移動が電車なので、一日の何割かは移動の時間だったのですがそれがほぼなくなると、仕事が終わって家に帰ってからの時間が長く感じます。
それから、人と人との関係性が密で垣根が低いなということを感じます。東京にいるときは近所づきあいもなく、仕事と家の往復であまりつながりをかんじたことはないのですが、大熊は人と人との距離感が近いですし、心地よさを感じています。
移住を考えている方へのメッセージ
私自身の話をすると、2024年で50歳になりまして、苦手なことや嫌いなことよりも好きなこと、やりたいことに時間を使いたいなと思うようになりました。大熊はかなりやりたいことをやらせてもらえている、そういう場所になっていると思います。自分がやりたいと思っていて、そして地域の課題解決になるようなことを提案できる環境にあることは幸せなんだなと思っています。
なので、例えばほかの地域で何かをやろうと思っていても進まなかった、ということがあればぜひ大熊町に来ていただければと思っています。おすすめなのは、いきなり拠点を作ったり移住するのではなく、まずは1か月に1度OICを使っていただくとか、副業・兼業で地域に関わるとか、最初にこの町に合う・合わないを見極めてからアクセルを踏んでいただくことかなと思っています。OICには大熊町が好きで移住したコミュニティマネージャーやスタッフがたくさんおります。私が入居の相談にも乗りますので、ぜひご相談をいただければと思います。