「関係人口」や「地方創生」という言葉がニュースを賑わす中、私たちの暮らしや地域との関わり方を変えるかもしれない、新しい制度の構想が動き出しています。その名も「ふるさと住民登録制度」。まだ構想段階ではありますが、地域に関わる関係者の間では少しづつ話題が広がっているようです。この制度は、一体どんな可能性を秘め、私たちの未来に何をもたらすのでしょうか?長年各地の移住促進事業に携わってきたる編集長の「倉重(しげ)」と、若手編集員の「ユカ」が、その可能性と課題について編集部内で語り合ってみました。今回はその2回目です。

本質的な「関係人口」を増やせる可能性が見えてきた?

ユカ:しげさん、ちょっといいですか?ふるさと住民登録制度に「プレミアム登録」を設ける方向で検討、ってニュースが出てました。…正直、「もうそんな段階まで考えてるんだ!」って驚きました。

しげ:その記事見ました。大きな動きですね。検討段階でもおおよその方向性を小出しにリークすることで、関心を醸成していこうという意図もみえますね。あとこれまでの「関係人口の見える化」の量的な側面だけでなく、その質についてもしっかり考えられているんだなという様子がみえてきました。

ユカ:これまでの報道記事では、政府が制度を進める方針が10年で1,000万人(延べ1億人)を目指す話や、専用アプリで登録して可視化するということがイメージとして出てきてましたよね。

しげ:はい。今回のニュースは、そこにもう一段、関係人口の具体的な「関わり方」そのものについても、制度設計の中でどう扱っていくかにまで言及したといえますね。

ユカ:ですよね。そのキーワードになっているのが「プレミアム登録(仮称)」ということなんですが、対象は、ボランティアや副業、二地域居住などで地域活動の“担い手”になり得る人たちだそうです。もう一つの、行ってみれば初期段階の登録は「ベーシック登録(仮称)と位置づけて、その地域を何度も訪れたり、ふるさと納税などで地産品を頻繁に購入したりして、地域経済活性化に貢献している人を想定しているみたいです。

しげそうですね。ここからはあくまで個人的な見解での整理なんですが、ベーシック登録は、どちらかといえば“消費者側で地域との関係を深めていく”段階で、もう一方のプレミアム登録は、価値創造に回る側”にまで関係性が深まっているという段階の人たちを言うんだと思います。もっとシンプルに言えば、「消費側か生産側か」といってもいいかも。この2つの差は実は大きくて、僕自身も、本来地域が本当に欲しい関係人口というのは、やはり”価値創造側の人”なんじゃないかと思っているんですよね。なので今回のこの新制度設計の着眼点については、大いに注目すべきかなと思っているんです。

ユカ:確かに消費側のファンというのは今までもいるといえばいるし、ふるさと納税なんかは、まさにそこをうまく増やす仕組みとして機能している感じがしますしね。ただそれって、言いかえれば地産品や観光のお客さんを増やす活動ともいえるし、、。それだけだと「今までのお客さんと何が違うの?」って思う人もいそうですしね。

しげ:そうなんですよ。日本全体の最大の課題と言ってもいい、人口減少や担い手不足の文脈から考えると、関与の“濃さ”を制度に組み込むのは当然だと思いますし、その大きな分岐点が、「価値創造側に来てくれるかどうか」だと思うんですよね。もっとシンプルに言うと、地域の”仕事”を担ってくれるかどうかでもいいんだけど、”仕事”だとちゃんとした対価が発生していないと成り立たないイメージが強いからね。地域の価値を高める活動というのは、広く捉えれば、対価はなくてもボランティアやもっとライトな「お手伝い」からでもいいと思います。対価があるかどうかに関わらず、地域の価値創造に携わってくれるかどうか。そこの差は大きいなと思います。

具体的な制度設計はこれから。注目点はインセンティブ設計?

ユカ:でも「プレミアム」って、どうやって判定されるんでしょう。線引きが難しそうですよね。

しげ:そうですね。まだ現時点ではあくまで検討段階ですから、どうするかわからないし、そのあたりはあくまで自治体に任せるのかもしれませんね。ただ、感覚としては、一定期間の継続参加があるか、任されている役割の大切さはどうか、そして自治体や受け入れ団体からの認識があるか——などなどの条件や要素を総合的に見て、ある意味地域の状況を反映した基準で区分けしていくのかなと想像しています。

ユカ:なるほど。で、しげさんの個人的な見解としては、ベーシックとプレミアムの2つに分ける事自体はどう見ています?

しげ:私は悪くないなと。方向性としてはシンプルでわかりやすいかなと感じています。というのも、さっきも言ったように、地域側が本当に増やしたいのは、一緒に地域の価値をつくる側の人だからです。ここが見えると、自治体も関係する地域側のプレイヤーなども、誰にどう声をかけるべきかがより具体的になりますし、いわゆる「関係人口」の輪郭もよりはっきりしていくのではないかなと。認識も少しずつそちらに寄っていくはずです。あまり複雑にしてもわかりにくくて良くないですしね。

ユカ:もうひとつ、現実的な話。経済的メリットって必要だと思いますか?

しげ:はい、そうですね。個人的にはやっぱり一定の経済的なインセンティブは有効だと思います。ふるさと納税が広がった背景には、具体的なメリットの分かりやすさがありましたよね。今回も、プレミアムにはもう一歩踏み込んだ後押しがあると動きやすい。それを制度に盛り込みたいという意図が見えてます。例えば、滞在時の宿泊費や、移動のための交通費のサポートなどがわかりやすいですよね。

国会議員って、地元への行き来のための新幹線や飛行機などの交通費がほぼタダって聞いたことあるんですが、そこまでは当然いかなくても、定期的な移動の壁を少しでも下げるメリットは分かりやすく響く可能性はあるかなと。もちろん税金なのでどう出すかは各地で議論にはなると思うけどね。

ユカ:アプリで登録して可視化するのも重要ですけど、やっぱり実際にある程度の人が地域を行き来する制度にならないと、本質的な意味はでてこないでしょうしね。わかりやすさ、大事ですよね〜笑

しげ:ですよね〜笑 でもそこがちゃんと検討遡上に上がっているのは、非常に期待できる部分かなと思ってます。

ユカ:検討自体にスピード感、ある感じがしますよね。ネイティブ.メディアとしても、この制度がどう社会実装されていくのか、ますます注目したくなってきましたね。

しげ:ですね!これからもニュースが出てきたら是非いろんな形で取り上げていきたいですね。