「会社からの卒業」そんな実感が高まる50〜60代。退職後の自由な時間を前に「これからどう生きたいか」を考える人も多いと思います。
・夫婦でゆったり過ごしたい
・自然の中で心穏やかに暮らしたい
・思う存分趣味を楽しみたい
今回ご紹介するのは、2025年4月に東京23区から福島県田村市へ移住した山路隆俊さん(60代)。
芸能マネージメント会社を経営し、第一線で働き続けてきた山路さんが、なぜ地方での暮らしを選び、新たな挑戦を決めたのか。
「夫婦で始める田村市でのセカンドライフ」について、お話を伺いました。
目次
駅での事故がきっかけで「人混み」に恐怖を覚えるように…
東京で芸能関係の会社を経営し、仕事に付き合いにと毎日忙しく過ごしていた山路さん。
ある日、駅でエスカレーターに乗っていたところ、発車する電車に飛び乗ろうとする人たちに押され、転倒。鎖骨を複雑骨折してしまいます。さらに悪いことに、治療のため手術を受けた際、全身麻酔の最中に発作を起こし、しばらく昏睡状態に陥りました。
命の危機を乗り越えた山路さんですが、退院後、雑踏の中に身を置くと当時の恐怖がよみがえるようになってしまいました。
「人が背後に立つだけで怖いと感じるんです。もう東京の人混みの中では暮らせないかもしれないと思いましたね」
そうして、山路さんは「移住」を選択肢として考えるようになります。
東京郊外を検討するも、地価に驚き…
当初は持ち家を売って東京の郊外に新たに家を買おうと考えていました。しかし、郊外といえど思っていた以上に高額。
そこで思いついたのが、奥さんの実家がある福島県田村市でした。
「妻にはまだ移住の詳しいことは内緒にしていたんですけど、こっそり妻の家族に相談したところ、歓迎すると言ってくれました」
いざ奥さんに田村市への移住のことを話すと、始めこそ事故後に体力がなくなっていた山路さんを心配して「本当に大丈夫?」と乗り気ではなかったものの、家族からの後押しもあり、2人で移住することが決まりました。
「実は、最初は田村市近くの郡山市に住んで、田村市に通って新しい事業をしようかなと考えていたんです。でも妻から『あなたは北国の冬を知らなすぎる。郡山市から田村市は雪の日の運転が大変』と一蹴されました(笑)」
その言葉を受けて、田村市内で家探しを開始。
ちょうど田村市の船引町で良い建売住宅に出会い、移住を決めました。

奥さんの実家の皆さんと引越し祝い
田村市で始める新事業は「薬膳カレーのお弁当」
田村市では、新しく健康志向の方に向けたお弁当事業を始める予定です。
結婚以来、山路家では料理は山路さんの担当。
お肉や生魚が苦手な奥さんは、以前は貧血や肌荒れ、体重変化に悩まされることが多かったそうです。
そんなとき「そばが健康に良いらしい」と聞き、1ヶ月間“大根おろしそば生活”を実践。すると驚くほど奥さんの体調が改善したのです。
この経験から、「食の大切さ」を強く実感した山路さんは、仕事の合間をぬって「食育アドバイザー」「フルーツ&ベジタブルアドバイザー」の資格を取得。
「それから毎日玄米ご飯と、健康的なおかずをたっぷり作るようになりました。そうすると、なんと1ヶ月で10キロの減量に成功したんです」
その経験が元となり、田村市への移住後は新たにお弁当事業を始めることにしました。
「コンセプトは『食べた人を健康に、幸せにするお弁当』。健康志向やダイエット中の男女、高血圧を心配する高齢者に喜んで貰えるんじゃないかな」
夫婦2人の生活費が補えればいいと、販売は1日限定30食。メニューはスパイスがたっぶり効いた「山路ンちの薬膳カレー」1種類のみを予定しています。
「特徴は、動物性のタンパク質、脂質を使わない『薬膳』カレーであること。できれば田村市産の野菜を使いたいから、今色々探しているところなんです」
カレーには、ガーデニングや家庭菜園が趣味である奥さんが作った野菜も使用予定。
「料理の担当は僕だけど、野菜を育てたり、営業したりは奥さんにお願いしたいな。僕よりずっと人づきあいが得意だからね」
大きな投資やスタッフを抱えず、夫婦の得意分野を生かした事業は、セカンドライフのスタートにぴったりです。

奥さまの実家でキッチンに立つ山路さんご夫婦
いずれは「子ども食堂」にもチャレンジしたい
母子家庭で育った山路さん。幼少期の生活は決して裕福とは言えませんでした。しかし山路さんの母親は、仕事の合間を縫っては偏食家の山路さんのために毎日カレーやシチューを作り置きしてくれていました。
それでもおなかがすいたとき、山路さんは母親から50円を貰って、近所の町中華のお店にラーメンを1杯食べに行きました。
「『食に不自由はさせたくない』っていう母親の意地だったんだろうね。そのうちにね、町中華の人も小さな子どもが一人でくるもんだから、ラーメンの他に残り物のチャーハンや野菜炒めを出してくれるようになって。ありがたかったよね」
その時の記憶を大事にしている山路さん。
いずれは子どもや困っている人がちょっと立ち寄ってごはんを食べられる、そんな「子ども食堂」を作りたいと思っています。
「僕のカレーはね、どことなく母のカレーの味に似ているんですよ、薄味で。母のカレーや、町中華の人の心づかい。僕もそんな誰かを幸せにできる“シアワセのお弁当”を作りたい」

スパイスの効いた「山路ンちの薬膳カレー」。2026年から販売予定
24時間ずっと一緒。それでも楽しい夫婦の暮らし
東京にいた頃は多忙で、外出や仕事で出かけることが多かった山路さん。
奥さんは品川区の水泳連盟でインストラクターを務めるほどアクティブで、一緒に過ごす時間は限られていました。
「それが、こっちに来てからはずっと一緒なわけですよ。24時間ずっとね。もうね、楽しいよね」
ネガティブな言葉が続くかと思いきや、返ってきた答えはまるで新婚夫婦。よくよく聞けば、山路さんご夫婦の共通の趣味は「駅伝鑑賞」。リアルタイムでの応援はもちろん、試合前には駅伝選手の予習と称して、夫婦で過去の試合記録を鑑賞します。試合当日に備えて「今日はお好み焼きパーティーをしながら鑑賞しよう!」となれば、事前に準備をして臨みます。
他にも奥さんの影響で観るようになったというアニメを一緒に鑑賞したり、近くの中核都市である郡山市に買い物や食事に出かけたり。そして時には奥さんの実家の家族や田村市で新しく知り合った人たちと食事をすることもあります。
「地域の人は本当に優しい人ばかり。困ったときは自然と声をかけてくれます。そしてごはんがおいしくて、空気もおいしい。夫婦2人で暮らすには、十分な環境です。これからも、夫婦2人で健康に、暇すぎず、でも無理はせず、楽しく生活していければいいなと思っています」

自宅にお客さんが来れば、自慢の料理でおもてなし
移住を考える方へのメッセージ
最後に、田村市への移住を考える方へアドバイスを伺いました。
「田村市での生活には、車は必須です。逆に車さえあれば、どこへでも自由に出かけられます。
同じ建売住宅の一角に住むファミリーに『どうして田村市にきたの?』と聞いたら『子どもへの支援が手厚かったから』と言っていました。田村市は、どの世代にも住みやすいんじゃないかな?
今のところ、生活で困っていることはないですね。
『北国の冬』は今年が初めてだから、未知数だけどね(笑)」
田村市の「ちょうどいい田舎」は、都会の便利さから少し距離を置き、夫婦での時間や健康、生きがいを大切にしたい人にとって、ちょうどいい場所なのかもしれません。
※「シアワセのお弁当」事業については、2026年の開店を目指し、現在準備中です。進捗状況については、HP( https://www.fangroup.info/ )でお知らせします。
この記事を読んで田村市での生活に興味を持った方、移住を検討している方は、お気軽にたむら移住相談室へご相談ください。
たむら移住相談室
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※たむら移住相談室は株式会社ジェイアール東日本企画と(一社)Switchが共同で運営しております。
