「勉強って、本当はもっと楽しいものなんです」

穏やかながらも、確信に満ちた声が会場に響く。 ここは、勉強法デザイナー・みおりんさんによるワークショップ。集まったのは、日々の勉強に悩む中高生や、もう一度学び直したいと願う大人たちだ。 誰もが、目の前の彼女が紡ぐ「学びの魔法」に、固唾をのんで耳を傾けていた。

「東大卒」という輝かしい経歴を持つみおりんさん。しかし、その道のりは決して平坦ではなかったという。 浪人時代、数学の模試で「80点満点中6点」を取ったこともある彼女が、いかにして学びを楽しみ、人生を切り拓いてきたのか。 その秘密を紐解く、温かくもパワフルな時間の幕が上がった。

世界がカラフルに見える「考える癖」

「同じ場所にいても、見えている世界は人によって全く違います」

みおりんさんは、冒頭でそう切り出した。 彼女によれば、知識を身につけ「考える癖」がつくことで、日常のあらゆるものに興味や疑問を持てるようになるという。それはまるで、今までモノクロだった世界に色がついていくような感覚だ。

「例えば、街でセブン-イレブンが近接しているのを見て、『なぜだろう?』と考える。調べてみると『ドミナント戦略』というマーケティング手法だとわかる。そこから、世界がぐっと面白くなるんです」

一方で、考える癖がないと、そもそもその事実に気づかなかったり、「またセブンがあるな」だけで終わってしまう。 どちらが良い悪いではない。でも、と彼女は会場を見渡して続ける。

「一度きりの人生、せっかくだったら彩りの多い世界のほうが、楽しいんじゃないかなって思うんです」

この言葉に、会場のあちこちで深く頷く姿が見られた。 勉強とは、単にテストの点数を上げるためだけのものではない。自分の生きる世界を、より豊かで楽しいものに変えるための「最強のツール」なのだ。

今日からできる!「ごきげん勉強法」3つのヒント

では、どうすれば苦しい勉強を楽しめるようになるのか。 みおりんさんが提唱する「ごきげん勉強法」の中から、明日からすぐに実践できる3つの具体的なメソッドが紹介された。

1. 自分だけの「キャンペーン」を企画する

「ずっと頑張り続けるのは大変。だから、短い期間を決めて集中するんです」 みおりんさんが提案するのは、ゲーム感覚で楽しめる「自分キャンペーン」だ。

  • ポイントカード・キャンペーン 勉強時間やページ数に応じてポイントを貯め、貯まったら「好きなおやつ」などのご褒美と交換する。
  • ビーズ貯金キャンペーン 勉強したら空き瓶にビーズを1つ入れる。頑張りが「見える化」され、貯まっていく様子がモチベーションになる。
  • ビンゴカード・キャンペーン やるべきことをマス目に書き、1列揃ったらご褒美ゲット。タスク管理を遊びに変える工夫。

「子ども騙しに見えるかもしれませんが、意外と効果があるんですよ」と笑う彼女。大切なのは、やらされ感ではなく、自分で自分を盛り上げる工夫(演出)なのだ。

2. 「お気に入り」の力でモチベーションを上げる

「皆さんが今使っているペン、名前を言えますか?」

突然の問いかけに、参加者たちはハッとして自分の手元を見つめる。 文房具にこだわることで、勉強のモチベーションと効率は確実に上がると、みおりんさんは断言する。

「お気に入りの文房具を使うと、単純に気分が上がりますよね。そして、書きやすいペンや消しやすい消しゴムは、勉強の効率を上げてくれる。結果的に、楽しく勉強が続いて成績も上がるんです」

家にあったものを何となく使うのではなく、「これが好き」という気持ちを大切にすること。そんな小さなこだわりが、机に向かう最初の一歩を軽くしてくれる。

3. 自分にかける「言葉」を変える

「私、バカだから」「どうせ無理だよ」 つい口にしてしまいがちなネガティブな言葉。しかし、その言葉を一番近くで聞いているのは、他ならぬ「自分自身の脳」だ。

「脳は聞いた言葉をそのまま受け取ってしまうので、『どうせできない』と思っていると、本当にパフォーマンスが下がってしまうんです。だから、ネガティブな言葉は自分にかけないでください」

代わりに、「できた!私、天才かも」「とりあえずやってみよう」といったポジティブな言葉を自分にかけてあげる。 根拠がなくてもいい。その自己暗示が、自分の可能性を最大限に引き出してくれるのだ。

迷ったら「難しい方」を選ぶ。勉強は人生をデザインする力

ワークショップの終盤、みおりんさんは自身の人生の選択を振り返った。 東大を目指した理由、学部選択、ワーキングホリデー、そして独立。その根底には、一貫した哲学があった。

「迷ったら必ず、難しい方の道を選ぶようにしてきました」

実力以上の目標を掲げる「高望み」をすることで、たとえ頂点に届かなくても、以前の自分よりずっと高い場所までたどり着ける。 そのために必要なのが、選べる選択肢を増やすこと。そして、選択肢を増やす最も確実な方法こそが「勉強」なのだ。

「自分に合った学び方を見つければ、勉強は誰でも絶対に楽しめます。そして、増えた選択肢の中から『これがベストだ』と納得できる人生を、自分でデザインしていくことができるんです」

彼女の言葉は、単なる勉強テクニックの紹介ではない。 学びを通じて、いかに自分を知り、自分らしい幸せな人生を創り上げていくかという、壮大なエールだった。

「教室」を飛び出す学び。嶺北高校魅力化プロジェクトの挑戦

今回のワークショップを企画したのは、地域と学校が一体となって生徒を支える「嶺北高校魅力化プロジェクト」。 実は、このようなワクワクする学びの機会は、これだけではありません。

プロジェクトでは、普段の授業だけでは出会えないような「本気の大人の言葉」に触れる機会を、年間を通じて数多く企画しています。

  • トップランナーとの対話 起業家、クリエイター、海外協力隊など、第一線で活躍するゲストを招いた講演会やワークショップ。
  • 地域課題に挑む「探究」 教室を飛び出し、地域のリアルな課題解決に取り組む実践型プロジェクト。
  • 世界とつながる国際交流 オンラインや実際の渡航を通じて、海外の文化や価値観に触れるプログラム。

「ただ偏差値を上げるのではなく、自分の生き方を見つけてほしい」 そんな想いで、地域の大人たちがチームとなって、高校生の「やってみたい」「知りたい」という好奇心の火に薪をくべ続けています。