2025年の春、大野駅西口の商業施設「クマSUNテラス」にオープンしたカフェレストラン、「panier(パニエ)」。この店長を務める池田未帆さんは、パティシエとして横浜や仙台で働いた後、大熊町に移住してきました。現在、その職歴を活かしランチやデザートメニューを考案するなど、パニエの経営において活躍されている池田さんに、この店をどんな店にしていきたいか、お話を聞きました。

地域の「おいしい」を詰めこんだメニュー

ランチ、カフェ、ディナーと通し営業をしているpanier。ランチタイムにはオムライスやタコライスなど選べるワンプレートランチ、夜は肉料理、魚料理、サラダやピザ、パスタなど様々なメニューを楽しむことができ、宴会メニューも用意しています。ティータイムにはパティシエの池田さんが作るプリンやケーキなどのデザートを味わうことができ、オリジナルのブレンドコーヒーも人気の一品です。

panierを運営するのは株式会社Oriai。大熊町では農業インターンや、学生が町の復興アイデアを考える「おおくまハチドリプロジェクト」を運営してきました。Oriaiでは大熊町だけではなく全国で学生向けの農業インターンなどを行っており、全国の農家さんとのつながりを持ちます。このつながりを活かし、北海道、九州など全国の産地から届く食材を活かした限定メニューとして提供しています。

panierでは、地元の食材を使うことにも力を入れています。例えば、浪江町の請戸漁港でとれたシラスを使ったサラダ。大熊町でとれたキウイは酸味を生かしたサルサソースにし、タコライスなどに使っています。

また、デザートにも大熊町産のいちごやキウイを使っており、使っており、時期によっては大熊町のネクサスファームのイチゴを使ったショートケーキなどのデザートも販売しています。

さらにアルコールの種類も豊富で、町内産の酒米を利用した日本酒「帰忘郷」や川内村のワイン、ジンなど近隣の地域で作られたお酒も楽しむことができます。

 

店名の「パニエ(Panier)」はフランス語で「かご」を意味する言葉。「地元のおいしい食材や、農業インターンを通じてつながった遠方の地域の美味しいものをかごに詰め込み、たくさんの人に届けたい」という思いが込められています。

 

日に日に感じる駅前のにぎわい

池田さんに取材したのは2025年の12月。panierがあるクマSUNテラスがオープンして9カ月ほど経ちましたが、日に日に賑わいを感じているそうです。平日のランチタイムでは「CREVAおおくま」に入る事務所の方が訪れ、満席になることも。休日には親子連れが「キッズルーム」で子どもを遊ばせた後、ゆっくりとランチタイム、ティータイムを楽しんだり、クマSUNテラスができたと聞いて町外から来店するお客さんの姿も見られるようになってきました。さらに夜は、CREVAで開催されたイベント後の交流会や、忘新年会など、団体利用も入っているそうです。

池田さんは「クマSUNテラスのテナントが集まる会議でも『どうすればこのエリアがもっと盛り上がるか』が熱心に話し合われていて、店主たちが手を取り合ってクマSUNテラスを元気にしようとする前向きな空気があります」と話します。

移住して実現した「食に関わる」夢

池田さんが大熊町に移住したのは3年前のこと。池田さんはパティシエとして横浜のホテルに勤務した後仙台で働いていました。実家の秋田に戻ろうかと考えていた時、先に大熊町に移住していた元同僚の友人から「大熊町で何かやらないか」と声をかけられました。

大熊町を訪れた池田さんの目に飛び込んできたのは、更地になっている場所と、建物が次々に建設されている様子。「復興がこれから進むまちだからこそ、自分にできることが何かあるかもしれない」と移住を決め、株式会社Oriaiに入社しました。

当初は町の復興にどんなことが必要なのかを知るために、大熊インキュベーションセンター(OIC)でフロアスタッフとして働き、施設の案内をしていました。その間も個人の活動として大熊町でケーキ教室を開催したり、イベントでデザートの販売をするなどパティシエの経験を活かして大熊で自分ができることを模索していました。

そんな中、Oriaiでも大熊町の飲食需要を調査するキッチンカー事業が始まり、新しくできる「クマSUNテラス」にpanierをオープンすることも決まりました。そして池田さんに「店長の仕事にチャレンジしてみないか」という声がかかり、もともと自分がやりたくて取り組んできた食の仕事という原点に立ち返ることになりました。

「まさか自分のお店を持つとは思いもしなかった」と語る池田さんは大熊に移住し、改めて食に携わることに楽しみを見いだしています。「メニューの考案や調理ももちろんですが、食を通してお客さんと話したり、関わりを持てることが一番のやりがいです」と話します。

今後の展望として、池田さんは「地元の食材をさらに増やしていきたい」と語ります。近隣の若手農家さんとの連携を深め、扱える食材を増やしていくことで、メニューを増やして行きたいと考えています。

池田さんは「働く人や住む人が増えれば、これからもっと多くの方にお店に来ていただけると思います。地域を元気にするエネルギーがここから広がっていくような、そんな場所にしていきたいです」と話します。panierは駅前から、大熊・浜通りの食を発信していきます。