前回の記事では、多貴商運株式会社の東出社長に、会社の成り立ちやドローン事業・AI投資といった新しい挑戦についてお話しいただきました。
▽これまでの多貴商運の記事はこちらからご覧ください。
取材で多貴商運の敷地に入ったとき、強く印象に残ったことがありました。
駐車場を歩いていると、こちらが誰なのかも分からないはずの社員の方が、ごく自然に声をかけてくださったのです。特別に指示されたわけでもなく、習慣として身についているような挨拶でした。
「多貴商運」という社名を見ると、多くの方はトラックや長距離輸送を思い浮かべるかもしれません。しかし今回、事務所の一室に集まっていただいた4名のキーパーソンたちが語る言葉は、そのイメージとは少し違う温度を持っていました。

今回は、常務取締役の大久保匡規さん、トランスポート事業部事業部長の戸田竜児さん、物品物流課 課長の矢倉悠嗣さん、一般輸送課 課長の花浦誠二郎さん。それぞれが異なる立場から語りながらも、伝えてくださることがあちこちで重なっていたのが印象的でした。今回もNativ.media編集部からお伝えしてまいります。
今回お話を伺った多貴商運で活躍する4人

大久保 匡規(おおくぼ まさのり)さん
常務取締役。運転手出身。現場から管理職へ。会社全般、特に運送部門の管理を担う。

戸田 竜児(とだ りゅうじ)さん
トランスポート事業部 事業部長。事故・トラブル対応から輸送全般の管理、営業まで幅広く担当。月の半分は外回り。約100名の現場スタッフのマネジメントを担う。

矢倉 悠嗣(やくら ゆうじ)さん
トランスポート事業部 部品流通課 課長。定期便輸送のメイン担当、ドライバー管理、面接・求人対応までを担う。

花浦 誠二郎(はなうら せいじろう)さん
トランスポート事業部 一般輸送課 課長。元長距離ドライバー。防災ドローンパイロットの資格を持ち、ドローン事業にメインで携わる。
それぞれの持ち場と、仕事の手触り
—— 本日はよろしくお願いします。まずは、皆さんが普段どのようなお仕事をされているのか教えてください。
大久保: 常務取締役として、会社全般、特に運送関係の管理者の動きを管理させていただいています。会社の雰囲気だったり、みんながどんな動きをしているかの把握が大きな仕事ですね。ただ、もともとは運転手上がりなんです。

—— 現場出身でいらっしゃるんですね。
大久保:そうなんです。正直に言うと、今でも現場のほうが好きなんですよ。もともと運転手上がりですので、デスクワークよりトラックに乗ったり、フォークリフト作業をしたりするほうが。率先してしれっと現場に出てきてしまう、というのが本音ですね(笑)
——みなさんも担当される業務の幅が広いとうかがいました。

戸田: 事故やトラブルの処置、運用・輸送の管理全般を見ています。事務的な部分と、営業やお客さん対応の外まわりと、月間通してほぼ半々ですね。自分で考えて仕事ができるというのがやりがいで、約100名の現場スタッフのマネジメントも含めて、自分の意思を入れながら動かせている感覚があります。
矢倉: 私の業務もかなり幅広くて、定期便輸送のメイン担当もしていますし、ドライバーの管理や求人関係もやります。やっていないことを探すほうが難しいかもしれません。電話は多い日で1日40〜50件、メールも100件近く来ることもあってひっきりなしですね……。
——それだけの業務量をこなすにあたって、何か工夫されていることはありますか。
矢倉: 寝たらリフレッシュされるような性格が功を奏しているのかもしれません。毎朝リセットした状態で臨めるから、こなせているんじゃないですかね。細かくなさすぎる性格が逆にいいのかもしれないです。優先度をつけて動く、気持ちの切り替えを無理やりでも毎日やっています。
——花浦さんの業務についてもお聞かせください。
花浦:私の場合は、一般輸送課で配車を担当しています。業務の内容としては、前日のうちに翌日の自社車両の段取りを組んでいくところから始まるんです。「Aさんは明日は鈴鹿から愛知県ですよ」というような指示書を作って、そこにまつわる注意事項なんかを付属の書類として添えて、どんどん指示を出していく。もちろん、その間にもお客さんから「この日にこういう運行をお願いしたい」という依頼が次々と入ります。それを配車表に転記して、配車を組みながら、ドライバーさんに指示を出して、同時にお客さんともやり取りをして……という感じです。
——リアルタイムでパズルを組んでいくようなお仕事ですね。突発的な対応も多いかと思いますが、いかがでしょうか。
花浦:そうですね。急に「今日、どこからどこまで行けないか」と言われることも多々あります。私は元々ずっと長距離の運転手をやっていたので、地理的な感覚や運ぶ商材の知識が自分のなかに経験値としてあるんですね。だから、急な依頼が来ても「あそこにうちのドライバーがいるから、あっちに回せばいけるな」といった判断がスムーズにできるんです。そういった自分の経験をベースにした突発的な対応も含めて、全体の効率を1日中意識しながらまわしています。
多貴商運の「アットホーム」について
—— 皆さんのお話を伺っていると、連携が取れていて社内の風通しが良いように感じます。多貴商運さんの社風や雰囲気について教えていただけますか。
戸田: 社員同士の距離感が近いんですよね。社長との距離感もそうですし、スタッフが声をかけやすい環境を作って、全員で取り組むという姿勢でやっています。私自身も、事務所を開けた時の社長との距離感はもちろん、極力、運転手や作業員の方とコミュニケーションを取るようにしていますね。
矢倉:雰囲気としては フレンドリーでフランクな会社だと思っています。業務中は口数が減りますけど、追われていない時はドライバーさんと30分ぐらい立ち話をしたりします。事務所の中でも外でも。ドライバーさんも、社長に対してタメ口で喋っていたりしますし(笑)。あんまり変なラインを引かずに、言いたいことは言えるような会社かなと思います。
大久保: ドライバーという職種柄、どうしても「一人の空間が好き」という方も多いんです。出勤してトラックに乗ってしまえば一人の世界ですからね。だからこそ、朝と夕方しか顔を合わせない時間帯の挨拶や声がけは、意識して増やしていくようにしています。たわいもない話でも大切だと考えています。
—— 素敵な雰囲気ですね。本日こちらに伺った際、社員の方が自然に挨拶してくださったのが印象に残りました。
戸田: ありがとうございます。でも特段、挨拶の教育をビシッとやっているわけではないんですよ。声かけは意識していますが、私が意識しているというより……気づいたら根付いていた、という感じですかね。そう言っていただけると、私も嬉しいです。私たちには見えていないところで、ちゃんと伝わっているんだなと思いました。
——福利厚生面でも、独自の取り組みをされているとうかがいました。
大久保: 結婚記念日に休暇が取れたり、お子さんの誕生日にお祝いがあったり。昨年、社長の発案でいくつか作らせていただきました。まだ浸透しきっていない部分もありますが、知っている方には率先して活用したいと言っていただいています。
戸田: 社内のフィットネスジムも、今年から福利厚生のひとつとして位置づけています。やっぱりドライバーさんは長時間同じ姿勢でいることが多いですから、健康管理という意味でも活用してほしいですね。

「個性を潰さず、伸ばす。」根付いた文化
——採用や教育、評価についてお聞きします。多貴商運で活躍できるのはどんな人でしょうか?
戸田: 周りが見えて、アグレッシブに動ける人ですね。ドライバーはトラックに乗っている一人の時間が長い分、人とコミュニケーションが取れる方は、お客さんからもすごく受けがいいんです。一方で、人は十人十色ですから、その人の適性に合わせて活かし方を考えています。個性を認め入り口を広く構え、働き手に沿った業務提案をしていくのが私の念頭にある教育ですね。
花浦: 私はやっぱりガッツがある方だと思います。精神論に聞こえるかもしれませんが(笑)、できないことは誰しもあるんです。でもそこで折れずに「やる姿勢」が大事だと考えています。やりたいという気持ちさえあれば、弊社の中で何かしら活躍できる道を見つけていけるんじゃないかと思いますね。
大久保: 評価という面では、独創性を持って仕事に向き合ってくれる人は活躍しますね。与えられた仕事をするのは当然として、例えば既存の業務に対して「こういう荷物の縛り方をしたら崩れないですよ」などと自分でアレンジして提案してくれる人。あとは「土曜日、僕空いてるんでなんか仕事ないですか?」と言ってきてくれるような前のめりで協力的な姿勢は、本当にありがたいですし、しっかり評価に繋げています。
——年功序列ではなく、実力が評価される会社という印象を受けますが、いかがでしょうか。
矢倉: まさにその通りだと思います。うちは年齢や学歴関係なく、実力を見てくれる会社です。昇格の時も堅苦しい話ではなく「お願いできる?」とライトな感じで任せてもらえて。
——若い方でも裁量を持てる環境があるということでしょうか。

矢倉: 僕も花浦も、係長もみんな38歳で同じ世代なんですけど、社長・部長世代の次が、我々になっています。実力さえあれば、年齢関係なく上がれる会社だと思います。
戸田: 働き手の個性を、広い目線で見てですね。その人の個性を活かして、その方向に伸ばしていける。それが結果として、会社としても伸びていくプラスの要素になると思っています。なかなか難しいケースもありますが、個々の良さをできるだけ引き出していきたいと考えています。
花浦: できないことは誰にでもあると思うんですよ。でも、やる姿勢があるかどうかというのは大切だと感じています。やろうとしたけどできなかった、じゃあ次はこれを試してみようという提案を、こちらからもできますから。同じミスをしなければいい。どんどんチャレンジして、みんなが切磋琢磨できる会社になればいいなと思っています。
——最近では女性ドライバーの方も活躍されていると伺いました。
矢倉: そうなんです。うちの20代前半の女性ドライバーは、実は愛知県からわざわざアパートを借りて移住してきてくれたんです。
—— 移住まで!すごい熱量ですね。
矢倉:ハローワークではなく、うちのInstagramを見て「会社の雰囲気がいいから」と。SNSを見てそこまで行動してくれた子が来てくれたのは、本当に嬉しかったですね。
花浦: その方も最初は緊張していましたけど、経験するとやっぱり楽しいですね、って言ってくれていて。最近は大型トラックで遠いところに行ってもらったりしています。やっぱり「やってみる」環境があるのは大きいと思いますね。最初から自分でストップさせずに、前のめりでいてくれる方に来てほしいです。
運送会社にとどまらない多角化経営
——前回までの記事で東出社長にもお聞きしたのですが、多貴商運さんでは運送業にとどまらず、フィットネやランドリー事業、さらにはドローン事業まで、多角的な取り組みをされていますよね。
大久保: 会社を大きくしていくために、運送だけでは全く手が届かないという考えが根本にあるんです。フィットネス事業もランドリー事業も、今はまだ赤字のものもあります。でも、いろんなことに取り組んでいく。その中で、例えば「運送には興味があるけどドライバーはちょっと」という方がいれば、こういう仕事もありますよ、という受け皿になれると思っています。
——花浦さんは、ドローンサッカー(*)の活動にも携わっていらっしゃるそうですね。

花浦: はい。毎週日曜日、活動しています。もともとサバイバルゲームやラジコン、ゲームが好きで。社長も私が“オタク気質”なのを知っていて、「やってみないか」と声をかけてくれたんです(笑)。韓国のワールドカップにも出場しました。
(*)ドローンサッカー…球体型の保護フレームにドローンを内包し、空中でサッカーのようにゴールを競うスポーツ。韓国発祥で、ワールドカップも開催されている新競技。
——防災ドローンパイロット(*)としての活動についても、お聞かせいただけますか。
花浦: 離島への救援物資をドローンで輸送するテストや、津波を想定した避難訓練でドローンを飛ばして被害状況をリアルタイムで本部に送る、という活動もしています。お客さんに話すと「すごいですね」という反応をいただけますし、運送会社としてこういう可能性があるんだなと感じています。
(*)防災パイロット…ドローンを活用した防災・災害対応活動に従事するオペレーター。有事の際の物資輸送や被害状況の空撮・中継などを担う。)
—— 会社が用意した枠に入るのではなく、自分のやりたいことが新しい事業のフィールドになる可能性がある、ということですね。
大久保: そうですね。さらに会社を大きくしていくためには、運送だけでは全く手が足りません。だからフィットネス事業もやるし、ランドリー事業もやる。もし求職者の中で「就職したいけど、運送はちょっとハードルが高いな」という方がいれば、ぜひ「私はこういうことがしたいので入社したいです」と逆に提案してほしいんです。
戸田: 入口は広く構えています。体験乗車もできますし、面接でも「残業したくない」「この時間帯で働きたい」という個別の希望を丁寧に聞いた上で、その方に沿った業務提案をさせていただいています。経験者でなくても、まずは来ていただける環境を整えています。
迷っているあなたにこそ来てほしい、その理由。
—— 最後に、この記事をご覧いただいている求職者の方へ、メッセージをいただけますか。

大久保: 運送だけにとらわれず、様々な事業を展開しています。「これがやりたい」という声があれば、会社としても新しい事業として応援する準備があります。自分の可能性を限定せず、飛び込んできてください。
戸田: トラックを扱う業界ならではの「門の叩きにくさ」はあるかもしれません。未経験の方も、異業種からの転換を考えている方も、まずは体験しに来ていただければと思います。トラックに乗っていただいて、こういう仕事だよと実際に見ていただいて、その上で決めてもらえればいいです。来やすい環境は、こちらで整えますので。
矢倉: 経験者が優遇されるイメージが強い業界だと思うんですが、うちは本当に免許取り立ての方も、トラックに一度も乗ったことがない50代の方も採用実績があります。運転して1週間で「1人で行ってこい」なんて絶対に言いません(笑) 最後の最後まで、従業員も管理者も「安心して送り出せる」と思える状態になるまで、一からしっかりご一緒します。やったことがない人こそ、うちを訪ねてください。
花浦: 管理する側として、柔軟に考えています。こういうことをやってみたい、というアイデアや意見が言える雰囲気づくりは、私たちがしていくつもりです。やる気さえあれば、何かしら一緒に模索して見つけていける会社だと思っています。
—— 皆様、本日は貴重なお話をありがとうございました!
【編集後記】
今回の座談会で印象に残ったのは、今回お話を伺った4名の言葉があちこちで重なっていたことでした。
示し合わせていないのに、言葉が重なる。
役職も立場も違うのに、価値観が揃っている。
「声かけを大事にしている」「個性に合わせて伸ばす」「入口を広く構えている」それぞれが自分の持ち場で、同じ価値観を自分の言葉として持っていることが、話を聞くほどに伝わってきました。トップダウンで統一された言葉ではなく、日々の仕事の中から自然と生まれてきたものだと感じます。
記事の中でもご紹介した通り今回多貴商運様に伺った際に社員の方が自然に挨拶をしてくださった話をお伝えすると、「特別に指導したわけではないんですよ」という言葉が返ってきました。それがこの会社の日常なのだろうと、改めて感じました。
「来た人が活躍できる環境を整える」。その言葉が単なる建前ではなく、日常の振る舞いそのものに表れていると感じました。この経営陣のもとであれば、どんな個性を持った方でも、必ず自分らしく活躍できるフィールドを見つけることができるはずです。多貴商運が提供しているのは、単なる運送の仕事ではなく、ドローンも、SNSも、営業も……さまざまな可能性と、信頼できる人たちと働ける環境の両方です。少しでも興味を持った方、ぜひ一度足を運んでみることを心からおすすめします。
文責:Nativ.media編集部 室井優花






