「ワーケーションに興味はあるけれど、子どもの預け先が不安……」
そんな悩みを持つ子育て世代に向けて、北海道富良野市が実施している「親子ワーケーション」。
豊かな自然に囲まれた保育所に子どもを預けながら、親はリモートワーク、終業後は親子で北海道の自然を満喫できる取り組みです。
実際に約1ヶ月間滞在したご家族、受け入れた保育士、そして施策を進める市役所——それぞれの声から、富良野市ならではの魅力と可能性に迫ります。
今回の取り組みと富良野市の背景
なぜ今、「預け先」のある親子ワーケーションなのか?
近年、働き方の多様化に伴い「子どもと一緒に地方に滞在しながら働く」ワーケーションへの注目が高まっています。
しかし、多くの親御さんが直面するのが「滞在中の子どもの預け先」という高いハードルです。
富良野市では、「将来的な移住・二地域居住」や「関係人口の創出」も見据えた子育て世代向けワーケーションの受け入れを行っています。
市街地の保育施設だけでなく、豊かな自然に囲まれた郊外のへき地保育所である「山部(やまべ)保育所」などを滞在中の受け入れ先として連携しているのも、その一環です。
「仕事があるから家族の時間をあきらめる」のではなく、「働きながら、自然の中で子どもの生きる力を育む」という新しい暮らしの選択肢を提案しています。

【参加者の声】東京から1ヶ月滞在!「夏の過ごし方の悩み」から始まった特別な挑戦
東京都内から、お母さんの有賀さんとお子さん2人の計3名が、7月28日から8月27日までの約1ヶ月間、富良野市での親子ワーケーションに参加されました。
市長への表敬訪問で語られた「滞在中のリアルな体験談」や「子どもたちの変化」から、富良野での親子ワーケーションの魅力に迫ります。
■ 参加のきっかけ:東京での「夏の過ごし方」の悩みと、富良野との縁
有賀さんにとって富良野は、小学5年生の頃に家族で訪れて以来の思い出の地。
7年前にご友人が富良野へ移住した縁もあり、ご家族でも何度か訪れていた親しみのある場所でした。
今回の参加の背景には、都市部で子育てをする親ならではの「夏の過ごし方」の悩みがありました。
有賀さん(参加者):
「普段子どもたちは幼稚園に通っているのですが、夏の過ごし方に悩んでいた際、『保育園留学』や富良野市の親子ワーケーション推進を知り、問い合わせて今回滞在する運びとなりました。
夫はリモートワークができない職業のため、今回は私と子ども2人の3人での滞在です」
■ 1ヶ月の滞在でみえた子どもの変化:緊張から「保育所に行きたい!」へ
滞在3日目から、郊外にある山部保育所への通所がスタート。
初めての環境に最初は緊張していた子どもたちですが、富良野の自然やまちに触れる中で、少しずつ変化が生まれていきました。
有賀さん(参加者):
「最初は緊張していましたが、公園や施設で遊ぶうちに『行きたい!』と楽しむようになりました。2週目になると『いつまで居るんだっけ?』と少しホームシックになりかけましたが、保育所のお友達の名前を覚えたりして慣れていきました。
車で1時間走らせるだけで、南北さまざまな場所に行けるのが思っていた以上に便利で楽しかったです。
土日は旭川市科学館サイパルや三笠市立博物館など子どもの好きなスポットへ遠出したり、富良野市博物館にも行き、子どもたちが動物や農業、雪などに強い関心を示すようになりました」
お盆の時期にはご実家の家族も合流し、幼少期以来となる親族での富良野旅が実現したそうです。
「カンパーナ六花亭で時間を気にせず芝生でゆっくり過ごしたり、ふらのワインハウスでの食事を通じ、地元食材や農業について子どもたちと話すとても良い機会になりました」と、ゆったりとした時間を振り返りました。
▼有賀さんご家族の詳しい体験談や滞在中の様子は、こちらからご覧いただけます!

【保育士の声】少人数だから、その子のペースで大丈夫。山部保育所が受け入れた1ヶ月の親子ワーケーション
子どもたちの受け入れ先となったのは、富良野市街地から車で20分ほど離れた場所にある「山部保育所」。
短期の一時入所として有賀さんご家族を迎えた実際の様子や、都市部からのワーケーション受け入れにおいて大切にしたアプローチについて、保育士の橋本先生に話を伺いました。

■ 最初はドキドキ。子ども同士の順応力と柔軟な「慣らし」
都市部から新しいお友達がやってくると聞いた時、園の子どもたちも対面時にはドキドキした様子を見せていました。
橋本先生(山部保育所):
「『新しいお友達が来たよ』と伝えた時は、みんなワクワクした表情を見せていましたね。お兄ちゃんは恐竜が好きなんですが、園の年長さんにも大の恐竜好きがいて、お互いの服の柄を見せ合いながらすぐ意気投合していました。
連日、シャワーを浴びたかのように汗だくになりながら鬼ごっこを楽しんでいましたね。
一方で、弟さんは最初お兄ちゃんと離れるのが少し不安そうだったので、上の子の後を追って一緒に遊ぶなど、無理なく安心できる過ごし方からスタートしました」
また、普段東京の幼稚園に通っているお子さんにとって、保育所特有の「お昼寝」はひとつのハードルでした。
ここでも、保護者との密なコミュニケーションによる柔軟な対応が行われました。
橋本先生(山部保育所):
「お昼寝の習慣がないので、最初は『寝るのが嫌だ』となったんです。そこでお母さんの有賀さんと相談して、『今日はお昼寝なしで昼に帰る日』と『チャレンジする日』を交互に作って、ゆっくり慣らしていきました。
環境に慣れていくにつれて『今日はお昼寝あり?なし?』って聞いても、すんなり受け入れて遊びに入っていけるようになって。子どもの持つ柔軟さや順応力には、私たち保育士も本当に驚かされました」
■ 親子ワーケーションを検討しているご家庭へ
最後に、地方でのワーケーションや一時入園を迷っている親御さんへ向けて、橋本先生は温かいエールを送ります。
橋本先生(山部保育所):
「初めての場所に飛び込むのは大人も子どもも身構えてしまうと思いますが、心配しすぎる必要はありません。打ち解けるスピードも遊び方も、成長のペースは一人ひとり違います。
焦らずその子のペースに合わせて一歩ずつ環境に馴染んでいけるよう、私たちがしっかりサポートします。
地域の人々や豊かな自然と出会い、親子でこの土地ならではの魅力を感じていただきながら、新しい繋がりや風が生まれていくことを心から楽しみにしています」
【行政の声】「まちぐるみ」で応援!市長表敬訪問で見えたフットワークの軽さと温かなサポート

滞在22日目、有賀さんご家族は富良野市役所を訪れ、北 猛俊 市長に向けて、表敬訪問を行いました。
約1ヶ月間の滞在報告を行う中で見えてきたのは、都市部では得られない子どものたくましい成長と、それを温かく受け止める富良野市の親身な姿勢でした。
■ 子どもの成長をともに喜ぶ、表敬訪問でのアットホームな対話
懇談の中では、富良野の日常に親しんだ後半だからこそ出てきた、子どもたちの「新たな変化」や、滞在の思い出について笑顔で報告が行われました。
自然豊かな環境の中で、子どもたちの好奇心は日々広がっていったそうです。
虫捕りが大好きなお子さんたちは、たくさんの昆虫に囲まれる中で「捕る」から「観察する」へと関心が深まっていったと言います。
有賀さん:
「富良野の食べ物で一番気に入ったものは牛乳・乳製品です!飲み比べをしたり、パンにチーズやバターを乗せて食べたりして満喫しました(笑)。
後半になると、ただ過ごすだけでなく、子どもたちから農作業について具体的な質問が出てきたりと、滞在を通じて食や地域の産業への興味がどんどん深まっていったのがとても印象的でした。
(最終週に向けて)山部盆踊り大会への参加や、週末には夫が友人を連れてやってくる予定です。私は今『北の国から』を観て復習しているところです(笑)」
近内教育長:
「今の時期はちょうど玉ねぎなどの大収穫期で、まちのあちこちで大型トラクターや収穫機が活発に動いていますからね。
こうして普段と違う環境の中で生き物や食に触れ、自分の頭で考えて生活できたこの1ヶ月間の経験は、お子様たちにとっても将来の大きな財産になるはずです」
■ 四季折々の魅力と、これからの繋がりに向けて
有賀さんの「『北の国から』で復習している」という言葉を受けて、懇談の締めくくりには、夏の滞在にとどまらない「これからの繋がり」に向けた温かい言葉が送られました。
北 猛俊 市長:
「『北の国から』を全部観終わる頃には、ちょうど雪が降ってくる季節になります(笑)。
ぜひ冬の富良野にも続けてお越しいただければ幸いです」
近内教育長:
「富良野には夏だけでなく、冬の厳しくも美しい景色など四季を通じて多様な魅力があります。
今回の滞在をきっかけに生まれた縁が長く続き、将来的には小中学校の体験入学などでまたこの街に戻ってきてくれたら嬉しいですね。親子ワーケーションをご検討中のみなさまも、ぜひ不安がらずに富良野の懐に飛び込んできてください。市役所スタッフや地域住民が一体となって、特別な滞在を温かくサポートいたします」

編集後記
見知らぬ土地での長期滞在。一歩踏み出す前は親にとっても大きな挑戦ですが、富良野には子どもの「知りたい・やってみたい」をまち全体で受け止める温かい土壌があります。
大自然の中でのびのび過ごし、地域の人々と触れ合う1ヶ月間は、親の働き方を豊かにするだけでなく、子どもの心に一生残るたくましさと自信を育んでくれたのではないでしょうか?
「仕事をしながら、子どもに豊かな体験をさせたい」――そんな悩みを抱える子育て世代にこそ、ぜひ富良野の温かな懐へ飛び込んでみてほしいと感じる取材となりました!
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