齋藤精一(株式会社ライゾマティクス代表取締役)
建築デザインをコロンビア大学建築学科で学ぶ。
ロジカルな思考を基に、国内外でアート・コマーシャルの領域で活躍。
2020年ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザー。
佐野文彦(建築家/美術家)
京都にて数寄屋大工として修行後、設計事務所などを経て独立。
建築だけでなく領域横断的な活動を国内外で展開。
2016年度文化庁文化交流使。
2018年最後のミーティングツアーを12月4日、5日に行いました。
このプロジェクトは「友だちの友だち」くらいの距離感覚にいる方々に大分に来ていただくということを念頭に置いてゲストを迎えしていますが、今回のゲストは私にとっては「めちゃくちゃ近くにいる友だち」に大分に来て頂くことになりました。
その理由は後ほどとして、まずは12月のゲスト齋藤先生と佐野くんとの出会いを思い出してみようと思います。
齋藤先生とはもう10年以上前に、私が以前勤めていたギャラリーのオープニングに友人の紹介で来てもらったのが一番最初でした(齋藤先生曰く、違うそうですが)。この頃の私たちは30歳になったかならないかくらいで体力もかなりあったので、よく集っていました。週8回遊んでました(ほぼ毎晩+昼1回あっているとこの計算になるのです)。
海外にサロン作ろうとか、台湾でスケボー流行らせよう、とか、青森に車で行こうとか、とにかく思い立ったらすぐ全員集合して話して+即出発する。ドラえもんの中で、ジャイアンがのび太の家の下で「のび太〜、遊びに行こうぜ〜早く出てこいよ〜」というシーンがあったかと思いますが、まさにあれです。
佐野君とは日本で一番大きな美術の見本市「アートフェア東京」のオフィスで一緒でした。私は広報担当、佐野君は会場構成担当。お互いデスクが汚く(モノが多い)となりどうしだったので、よく周りのスタッフに「二人ともちゃんと机を片してくださいよー。」と怒られていたものです。
フットワークが軽く、ネットワークが広い佐野君ですからあまりオフィスにも居ないのですが、たまに夜遅くにオフィスでばったり会ったりするとすぐ「佐野君のみいこー」「ええよー」という流れになっていました。佐野君とも随分飲みに行きましたね。
このプロジェクトが始動した時、ずいぶん大分をリサーチしました。かつては大分の土地の魅力に引き寄せられた建築家もたくさんいたことでしょう、磯崎新の初期作品であるアートプラザ、藤森照信のラムネ温泉、坂茂のOPAM、黒川紀章の大分スポーツ公園総合競技場などはもちろんのこと、大分には素晴らしい建築物が多数あることがわかったので、建築を語れる二人は絶対ゲストとして呼びたい、と思っていました。
これは県外から見た一つの意見と思って欲しいのですが、大分は全体的に横串が刺さっていないというか、バラバラに都市計画が進んでいるかのようで、不自然なことにそれらの建築物が街の名所にはなっているものの街の機能に溶け込んでいないというか、しっくりきていない感じがすごくありました。建築を単体で考えている。そんなイメージでした。
ここで一つ十和田市の建築物の例を挙げましょう。
青森県十和田市に現代美術館ができたのは、もう10年ほど前でした。美術館ができたことによって街や通り、さらには人々の生活の仕方がガラッと変化しました。
この美術館は先に建物があるのではなく作品ありきで作られた美術館なので、作品のための住居という概念に近く、人と建物の距離が近いからでしょうか、美術館が街に置いてけぼりにされていない。浮いていない。住民も一緒に動いている感じがすごくします。いい建築物なんだと思います。
どうしたら広い視野で大分を見ることができるのだろうか。
こういった本質的な命題で話をして欲しいのは、やはり建築に愛があってきちんと理解できる人だな、と思い、先の二人をゲストにお呼びしました。
大分にも少なからずご縁があって(齋藤さんは日田のプロジェクト、佐野君はOPAMでのある展覧会での制作サポート)、大分をどのように見てくれるか、どうしたら大分が面白くなるか、世界中を飛び回っている二人からヒントを得たかった。そんな思いに、齋藤先生と佐野くんにおつきあいいただきました。
へー、こんな建物あるんだ。
自分の街にこんな建物があるんだ。こういう解釈ができるんだ。
など、いろんな感想を持たれるかもしれません。
ぜひ彼らがたどった道のりを、SNSと本編映像にて、ご覧下さい。
私の本編映像でのオススメは藤本壮介さん設計によるN邸です。
N邸はここのご夫婦の子供になりたかった。。。と思わせる邸宅です(一般のご家庭なので見学はできません)。
中津の風の丘葬祭場は全国からも見学者が多く、自分が最後のときを迎える場所を真剣に考えさせられる場所でした。
SNS映像では宇佐神宮を見学する二人に注目です。
おそらく日本で一番有名な宮大工・中村外次さんのところで修業されていた佐野くんの本領発揮。今回は特別に門の中まで入って見学させていただいたのでどんな感想を述べられるか、注目してください。
日田の井上酒造さんでは、代表の井上さんの人柄に全員がノックアウト。日田のイベントにもご協力いただきご縁がご縁を繋いだ見学となりました。蔵の2階は壮大な梁が。この梁が災害時には多くの人の心まで救ったというお話を聞くことができました。
2日かけて移動した総距離はなんと600キロ!(大分市内からだと静岡あたりに相当します。)
タフな二人だったからこそ、そして古くからの友人だからこそ、おつきあいいただける距離だったと思っています。
そしてこの大移動におつきあいいただいた合同タクシーの中島さんにも感謝。
ゲストやスタッフの心を鷲掴みにする気遣いの男・ザ・ドライバーの中島さんにもいつかこのブログに登場してもらわなくては。。。と思っています。
東京ではお互いに多忙でなかなか会えなくなってしまったけれど、せっかくだから大分で大事な話をしましょう、というのは「大分で会いましょう。」プロジェクトならではですね。
これからも二人の活躍にご注目ください。
きっと世界の大舞台にすぐ登場してくると思います。
そんな人が訪れた大分を、いろんな人に知ってもらえますように。
八幡総本宮 宇佐神宮
宇佐神宮の改築に携わってきた今岡武久さん(文化財建造物保存技術協会)による解説により、宮内を案内していただきました。
お祓いをしていただいた後特別に南中楼門を開いていただき、中を拝観することができました。
奈良出身の佐野くんは大神神社が氏神さまでした。宇佐神宮は元は山信仰なので大神神社と同じです。
意外なところで共通点が見つかりました。
日田に誰かを連れて行く時は必ず寶屋の「日田 きこりめし」 をご紹介します。牧野伊三夫さんが発案し、ヤブクグリで作り上げた、様々なメディアでも取り上げられ、全国にもファンが多いお弁当です。日田杉の間ばつ材を使ったわっぱは、開けた時にとても良い杉の香りが。
私のお気に入りは程よく甘く味付けされた栗と、薄醤油で煮付けられた鶏。味噌汁代わりに、と思って注文したミニちゃんぽんの大きさに一同びっくりしました。こちらも美味です。
大分県日田市元町13-1
HP:http://takarayahita.com/takaraya.asp
井上酒造
昨年末ライゾマティクス・アーキテクチャーが日田で行ったイベント(「日田の山と川と光と音」 )の時にテント出店していた、日田地元の酒蔵さん。会場であまりに美味しかったので一升瓶を買って飲んでしまいました。
市内から車で20分程行ったところに位置します。
井上酒造は主屋、煙突、木造蔵が国の登録有形文化財に指定されているそうです。
その中でも存在感のある梁は建物だけでなく、昔から多くの人の心の拠り所になっていた、というお話が印象的でした。
蔵主の井上百合さんは、4年前からこの酒蔵を守っているそうです。
元気はつらつなイメージですが毎日麹とお酒を守るための努力は想像もできないことだと思います。
だからこそ、美味しいお酒ができるのでしょうね。
大分県日田市大字大肥2220-1
HP:http://www.kakunoi.com/company/
大分県庁 流政之(彫刻家)作のレリーフ
・玄関前の作品→「石の滝」
・連絡通路のレリーフ「恋矢車」
佐野くんと私の共通の友人のお父さまが作者。
かなり巨大な壁面を覆っています。
どんな焼き方をしているのか、ディテールについて話していた二人が印象的でした。
大分県大分市大手町3-1-1
HP:http://www.pref.oita.jp
アートプラザ
磯崎新さんの初期作品。大分の建築を語る上では外せない建築物です。
細かい作り、壁の表情、反響音などにも興味を持っていた二人。
「傑作」以外の言葉が見当たらない、そんな雰囲気でした。
先日、20週年を迎えたそうです。
正面は紅い壁面、振り返ると緑の壁面。この作りもとてもにくい!
大分県大分市荷揚町3-31
HP:http://www.art-plaza.jp
HOUSE N
世界中をまたにかけている建築家藤本壮介さん設計による個人邸にお邪魔しました。
明らかに他の住宅とは違う!
全面ガラスではないのに光がたくさん入ってくる。
ここに住んでから、物が必要でなくなった、とお話しされていた家主さんが印象的でした。
※一般のご家庭なので見学はできません
(株)戸髙鉱業社
以前別の取材で見学させていただいた時にその壮大さと爆音に圧倒されました。
大分県南は、リアス式海岸と海沿いに走る石灰山により、海に大量のミネラルが流れることから魚が美味しく育ちます。
高山を見学してからこれまでその話はよく聞いていたけど実際に目にして心から納得できた。
スターウォーズに出てきそうな場所でした。
齋藤さんがいつかここを子供たちも見れるといいね、と話していたのが思い出されます。
大分県津久見市合ノ元町6-7
HP:http://www.todaka.co.jp/index.html
風の丘葬斎場
中津市の風の丘にある、建築家の槇文彦が設計した葬斎場。
自分の死はどこで迎えるのか。
考えさせられました。
大分県中津市相原3032-16
HP:https://www.kazenooka-nakatsu.jp