山口県光市で地域おこし協力隊になって10か月。

地元の山口新聞で2022年5月、6月に計8回、「東流西流」という社会面のコラムを書くことになりました。

許可をいただきましたので、紙面に掲載された、隊員活動の体験談や移住生活や悩み、課題などをNativMediaでも紹介します。

移住体験談:光市に移住しました(山口新聞:2022年5月6日付)

地域おこし協力隊 活動 体験談 瀬戸内海 山口 光市

「温泉おたくのち夫婦移住」というブログを書いています。

タイトルのとおり、温泉が好きで、中国・九州地方の田舎の温泉に10年通いました。

その中で、田舎暮らしに魅力を感じ、昨年7月、夫婦で広島市から光市に移住しました。

2年前に移住の検討をはじめた時は、すでにコロナ禍でした。

休日に外出もできませんでした。

自宅からインターネットで情報収集し、オンライン移住イベントに参加しながら、移住先を探しました。

昨年3月。移住先である光市室積の伊保木地区にはじめてきました。

市の東端、田布施町との境で、国道188号線からの周防灘の景色が素晴らしい場所です。

「海がきれい・仕事」と移住に求めた3つの条件を満たしたこと、地域の移住者を受け入れたいという熱意が決め手になりました。

そして今、移住して10か月になります。

夫婦の生活は大きく変わりました。

都会の会社員生活で大変だったクレーム対応、残業続きのストレスに悩むこともなくなりました。

自然豊かな静かな環境が自分には合っています。

一方コロナ禍で、地域おこし協力隊の活動が制限され、田舎ならではの規制に悩むこともあります。

つたない移住者・田舎暮らしの紹介になりますが、残り7回、どうぞお付き合いください。

地域おこし協力隊の活動:出会いが1番の財産(山口新聞:2022年5月13日付)

「すごく美味しいメンマだな」。

3年前、移住前の広島市で通ったラーメン屋のメンマが広島産に変わったときのことです。

深く考えたことがありませんでしたが、国内で消費されるメンマのほとんどは中国産です。

1年前。移住先の空き家の庭では、隣接する山から竹林が浸食していました。

地域全体でも竹が繁茂し、浸食が進み、昔の棚田が竹林になり、景観にも影響が出ています。

そこで隊員に着任後、竹林に関する活動ができないか調べ、動きました。

NPO法人山口バイオマス研究会、光市竹林会といった県内の竹林を整備している団体との出会いに恵まれました。

そのおかげで、今年度から地域の竹林を整備することになりました。

先週のGW。広島県の安芸高田市に、竹の塩漬けメンマづくりのワークショップに行きました。

3年前に食べたラーメンのメンマは、講師の先生が作ったメンマでした。

移住者として、一番の財産は出会いです。

進学、就職、結婚のような人生の転機と変わらないほどの出会いがあります。

「人は出会いによってしか変われない」。

サラリーマン時代に人生に悩み相談した人に、かけてもらった言葉が胸に残っています。

新米移住者として出会いを求めつつ、自分らしさを大切にしたいと思っています。

移住体験談:室積で感じた「暖かさ」(山口新聞:2022年5月20日付)


先週末、光市室積で普賢まつりが、3年ぶりに規模を縮小して開催されました。

江戸時代からの伝統あるお祭りです。

昨年7月に移住してはじめて、大勢が賑わう姿を見ることができました。

広島市から光市室積に移住して一番びっくりしたのは、温暖な気候です。11月下旬の午後、気温が16度もありました。

冬を通じて温かく、霜が一度もおりませんでした。90代のおばあちゃんが「ここは冬も暖かくて暮らしやすい」とにこにこしています。

線路がないため、美しい海岸線が残り、周防灘を遠くまで見渡せることも特徴です。

街の中心部は、空き家を活用したカフェや飲食店、イベントがここ数年で増えています。

古民家が続く街並みを引き立て、にぎわいが戻っています。

女性ならではのおしゃれな店や商品が多く、妻にもお気に入りの店ができました。

とても生活しやすい環境と、親切にしてくださる地域の人に感謝しています。

活動地の伊保木地区では、21日、22日の2日間、地域の窯元が中心となってつばき祭りが開催されます。

古くから皿や瓦などの焼物が作られた歴史を継承したイベントです。

天気が良ければ、瀬戸内海の景色も一緒に楽しめます。今週末、ぜひ、足を運んでいただけると嬉しいです。

地域おこし協力隊の活動:地域とつながる運転(山口新聞:2022年5月27日)

地域おこし協力隊 活動 山口 光市 風景
「これがあるから伊保木で暮らせるのよ」。

地域おこし協力隊の活動で、コミュニティ交通の運転手をしています

光市から自動車の貸与を受け、地域住民で結成した「いおき楽々会」が運営しています。

室積地区への通院や買い物支援をしています。

けわしい坂道が大半で、平均年齢は70歳。

免許を返納した一人暮らしの女性や支援が必要な高齢夫婦がたくさんいます。

送り迎えで「いつもありがとう」と、気持ちがこもった言葉にうれしくなります。

運転を通じ、地域とのつながりも増えています。

平成23年にはじまり、10年以上経つ事業ですが、運転手不足が課題です。

70歳未満の規定があり、確保が難しくなっています。

65歳定年かつ70歳まで働く時代です。

昭和40年代に、原則住宅建築ができない市街化調整区域となり、若い世代が極端に少ない背景もあります。

移住して10か月。

市街地に近く、車を運転できれば便利な環境は「田舎がいいけど不便は嫌」という移住者のニーズを満たした「移住適地」と思うようになりました。

兵庫県は、市街化調整区域に特区を設けて、空き家を利活用し、移住や関係人口の拡大に結び付ける条例の制定を目指しています。

時代の変化を信じたいと思います。

移住体験談:情報発信の失敗と学び(山口新聞:2022年6月3日)

昨年夏、光市へ移住後、様々な情報発信に取り組みました。

伊保木ぐるみ協議会のFacebookグループ「伊保木の里だより」で地域情報の発信。

個人ブログ「温泉おたくのち夫婦移住」の運営。

移住・関係人口メディアの「Nativ.Media」への寄稿。

Amazonの電子書籍「失敗しない!1年で地方移住・田舎暮らしする方法」の出版。

SNSの発信などです。

サラリーマン時代にはできなかったことを頑張ってみたいと思いました。

コロナ禍でなかなか人に会えないといった事情もありました。

やって良かったのですが、反省や失敗もたくさんしました。

メリットは、情報の受発信を通じた出会い、日々の思考を整理、記録できる、自分に足りないものに気付けるなどです。

移住してもうすぐ1年ですが、発信から生まれた縁も増えました。

デメリットは、うまくいかず悩んだり、時間が取られすぎることです。

今の自分に満足できない人、達成したい夢や目標がある人は、情報発信で新しい展開が生まれるかもしれません。

「情報発信なんて文章を書くのは苦手だ」という人も多いと思います。

コメントを入れ、やり取りの中でつながりを深めたり、自分にあったコミュニティを探すのもおすすめです。

地域おこし協力隊の取り組み:移住者としての想い(山口新聞:2022年6月10日)

先週末、ライフオーガナイザーの秋山陽子さんを講師に招いて、「片付けと終活」をテーマとしたセミナーを開催しました。

秋山さんは広島で、片付けサポートや、講師、執筆業で10年以上の実績をお持ちです。

妻の先輩で、広島市から光市は、車で2時間の近距離移住のため、実現できました。

地域おこし協力隊として、地域の方にも喜んでもらえた気がします。

今、都会からの地方移住が大きな流れになっています。

リモートワークの普及により、都会でなくても、オンラインで完結できる仕事が増えてい
ます。

移住に最も関心の高い世代は、20代との調査結果があります。

若い世代ほど「住みたい場所に住み」、田舎から最先端が生まれる時代です。

40代の私も正直、時代についていけてない部分もあります。

時代の先をいく平均年齢70歳の限界集落に移住して感じた最大の課題は、若年層が不足し
ていることです。

愛着ある地域の未来を考え、移住を促進することが、将来の地域を救うはずです。

山口県は、瀬戸内海、日本海、響灘と3方を海に囲まれた独特な自然環境や、土地や道路
事情に恵まれるなどたくさんのアピールポイントがあります。

その魅力が、多くの人に伝わることを願っています。

移住体験談:時代にあった施策を(山口新聞:2022年6月17日)

地域おこし協力隊 活動 移住 体験談 山口 光市 室積 伊保木海岸
「道の駅に出しよった漬物が出せなくなって、生きがいと現金収入がなくなった」

移住後にそんな話を聞きました。

食品営業施設の基準が変更された影響です。

活動する光市室積の伊保木地区は、すぐそばに海がありますが、貝類や海藻類は漁業権の問題で、住民が自宅で食べる程度の量を採ることも許されません。

ほかにも規制によって、田舎暮らしする人に、多くの課題がある現実を知りました。

団塊ジュニア世代である私は、社会に出た時からずっと右肩下がりの日本経済です。

最近も、円安、物価高がニュースに上がります。人口減少による国内消費の低迷や国際競争力低下の流れは、止まりそうにありません。

多くの国民がそれに気づき、「暮らしの豊かさ」に重きをおくようになっています。

その象徴が、地方移住、海外移住者の増加です。

もちろん、規制するための理由や背景は理解できます。

ただ、時代や状況の変化に応じた見直しや住民への説明が不十分に感じます。

地方の資源や人のつながりに目を向け、田舎に活躍の場を求める若者も増えています。

その目がより輝くための規制の緩和や仕組みづくりを望みます。

移住体験談:温泉から学んだ価値(山口新聞:2022年6月23日)

温泉の多面的機能の見直し望む
地域おこし協力隊 活動 移住体験談 山口 湯田温泉
コロナ禍となり2年以上。温泉ファンとして、つらい日が続きます。

コロナウイルスや原油価格高騰により、休業や営業時間の短縮に追い込まれた温泉施設も少なくありません。

山口県内の大半の温泉は、源泉を加温して営業しており、死活問題です。

温泉の楽しみ方は人それぞれです。

私の場合は、源泉かけ流しの泉質と、田舎の風景が何よりの好物です。

都会で長時間労働の激務に耐えてこれたのも温泉のおかげでした。

残念ながら、山口県内でも年々、源泉かけ流しの温泉が減っています。

温泉には、観光や文化、健康に寄与する側面があります。

欧州では、多くの国や地域で入湯行為に健康保険が適用されています。温泉療養が医療行為として認められています。

私も多くの温泉で、持病を抱え、投薬治療では治癒せず、すがる思いで湯治をする人に会ってきました。

そんな希少な源泉かけ流しの温泉こそ、未来に残すべき、遺産だと考えます。

また、地域の人と語り合いができる銭湯や、小さな温泉も減る一方です。

温浴施設には、地域の交流の場としての機能もあります。

温泉の多面的な価値が見直されることを望んでいます。

計8回、つたない移住者のコラムを読んでいただき、ありがとうございました。

【経歴】広島県生まれ。関西学院大学卒業後、新聞社や不動産管理会社に勤務。田舎の温泉に10年通うなかで田舎暮らしに魅力を感じ、2021年7月に、夫婦で山口県光市の限界集落に地方移住。Twitterや移住ブログ温泉おたくのち夫婦移住で移住や田舎暮らしに役立つリアルな情報を発信中。2022年2月電子書籍「失敗しない!1年で地方移住・田舎暮らしする方法」をAmazonKindle出版Twitter移住ブログは⇦それぞれ青字をクリックすると読めます