宮崎県出身の中尾真梨さんが、伯方島での生活をスタートさせたのは2022年6月。「コロナ禍でなかなか会えていなかった姉家族のところへ行こう!」と思い立ち、しまなみ海道にある伯方島へと長期休暇を使って遊びに来たのは移住する2ヵ月ほど前のこと。その後、伯方島での暮らしを選んだ中尾さんと、同じく伯方島に住むお姉さん夫婦に、移住したきっかけや現在の暮らしについてお話をお聞きしました。
大好きな姉や甥っ子姪っ子に会いたい!それが伯方島を訪れた一番の理由です。
2022年春、それまで勤めていた会社を退職することになった中尾さんは、3週間ほどの休暇を利用して旅行を計画。「ちょうどその1年前に、義兄が伯方島へと転勤になり、家族で伯方島に引っ越してきていたんです。甥っ子、姪っ子ともずいぶん会えていないし、子守がてらしまなみ旅行をするのも良さそうと思って遊びに来たんです」。訪れたのはゴールデンウイーク前。穏やかな海に囲まれ、ゆったりと時間が流れているようなのどかな島で、甥姪とともに過ごす時間はとても楽しかったという中尾さん。
もともとお姉さんの山本百里さんとは、大の仲良し。新型コロナウイルス感染拡大の影響でしばらく会えていなかったものの、以前は必ず年に数回は会っていたのだとか。甥や姪も小さい頃から中尾さんに懐いており、コロナ禍で県外移動を自粛していた期間も毎日のようにテレビ電話で話をしていたほど。しばらくぶりに会った姉妹の話は尽きず、3週間の滞在はあっという間に過ぎていったと顔を合わせて微笑みます。
島での滞在期間中に、これからのことも決めようという気持ちもあったという中尾さん。ちょうどそれまで住んでいたアパートの更新時期が近づいていたこともあって、引き続き住み慣れた宮崎で仕事を探そうか、どうしようか…と悩んでいた中尾さんに、「伯方島に来たら?」と百里さんから提案が。義兄の山本恵資さんからもぜひと言われ、迷いながらもいったん宮崎に戻りました。
偶然アパートが空いているとお聞きしたことが、島暮らしスタートを後押ししてくれた。
伯方島で新たな生活をスタートさせることに惹かれてはいたものの、島には単身者向けの物件が少なく、賃貸情報なども載っていないと聞いていたため、「すぐにでも行きたい気持ちはあったんですが、住むところを探すのが大変そうだなと思っていました」。そんな折、恵資さんから「地域の方からアパートが1室空いているので、活用してくれる人を探しているという話をお聞きした」という連絡が。まだ新しく女性ひとりでも安心な物件だということ、初めての土地でも姉家族がいる安心感などもあって、伯方島への引っ越しを決めたそう。「とは言っても、移住しようというような強い決意があったわけではないんです。甥っ子や姪っ子とも会えるし、島での暮らしも面白そうだなという、気楽な感じで引っ越してきました」。現在は、島で仕事をしながら、子育てに奮闘する姉夫婦をサポートする生活です。
今の生活は、島へと遊びに来た時の延長のような感覚だという中尾さん。そのフットワークの軽さは、単身ならではかもと笑います。「島を訪れて、こんな場所に住んでみたいな、と思っている人もたくさんいると思うんです。でも住むところがないから無理だなって。単身でも生活しやすい物件がたくさんあれば、選択肢も広がるし、身軽に動ける若い人たちがもっと増えるのにと思いますね」
姉家族とともに「今」しかできないことを大切にしながら、島暮らしを満喫中。
「妹が来てくれて、子どもたちも嬉しそうですし、私たちも本当に助かっているんです」と話すのは、百里さんと恵資さん。転勤で実家と義実家のどちらとも離れた場所で、9歳・3歳・2歳の子育て中とあって、手助けしてくれる存在がいることが本当に心強いと言います。もちろん中尾さんばかりが助ける側ということではありません。恵資さんは、せっかくしまなみにいるのだからと、週末になると中尾さんも誘って家族とともに大島や大三島、広島方面など、あちこち出かけてくれるそう。子どもたちを連れて、島の集会所「鎮守の杜」で行われている活動に出かける際に、中尾さんも一緒に参加することもあります。「コミュニティへの参加ができると交友関係も広がりますが、きっかけがないとなかなか地域の方と関わる機会も少なく、地域に溶け込みにくいと思うんです。甥っ子姪っ子のおかげで顔見知りの方が増えてきました」。姉家族を通じたつながりに加え、最近では仕事先で常連のお客さんから話かけられることも増え、少しずつ伯方島での生活にも慣れてきたそうです。
今後についてはまだまだ未定だという中尾さん。「正直、不便だなと思うことはありますが、その分、ゆったりと自分らしく過ごせているような気がします。なにより、コロナ禍でずっと一緒に遊べていなかった、大好きな甥っ子や姪っ子と毎日過ごせる、貴重な時間を今は大切にしたいですね」。自分と家族の「今」を大切にした暮らしは、これからも続きます。