はじめに
大熊町が出資する地域電力会社「大熊るるるん電力株式会社」の経営と運営を行っている片山朋宏さん。大阪、東京、ニューヨークと各地を回って辿り着いた大熊の地で、片山さんが目指す地域電力の未来とは。今後、大熊でどんなことをしていきたいのか、お話を伺いました。
大熊に移住した理由:地域電力を通じ、復興に貢献するため
私は約30年間エネルギーにかかわる仕事をしていました。大阪のガス会社で勤務し、東京、アメリカ・ニューヨークでの勤務経験を経て、大熊に移住しました。新電力最大手の電気事業も経験しました。移住した理由は、大熊町で新しく始まった地域電力の事業運営です。東京在住時の知己の方から声をかけられ、当時私も前職での業務に一段落感を感じていたため、新たな広がりを求めて、この地域電力事業に加わることを決意しました。
地域電力に携わるきっかけは、アメリカ滞在中に地域電力が盛んであることを見てきたからです。アメリカには約2000の地域電力が存在し、多くの田舎では電力供給の中心となっています。対して日本では、その数は約100程度には増えてきましたが、さらに地域電力が普及していくのではと見ています。また、大熊町が位置する福島県浜通り地域とアメリカ東北部の気候や生活環境が似ている点にも共感を覚え、地域電力を通じての地域活性化に貢献したいと考えました。
地域復興と新事業創出に向けて
現在大熊町では「ゼロカーボン」による復興を謳い、活動を進めています。大熊るるるん電力はその中心的な役割を担っており『創る、巡る、贈る るるる大熊』をキャッチフレーズに、電力小売業を軸に、今後は太陽光・バイオマス・小水力などの発電事業にも展開予定です。
https://ookuma-rururun.jp/about/
大熊るるるん電力は、まだ設立から4年しか経っていません。地域電力会社としてしっかりと基盤を整えていく必要があり、立ち上げ特有のやりがいがあります。また前職時代よりも風通しが良いです。特に大企業では意思決定までに多くの関係者に説明をしなければならず、時間がかかることが多いですが、現在はダイレクトに意見を伝えやすく、迅速な意思決定を行える点が魅力的です。
今後の目標として、地域電力事業を通して、各地の地域活性化に貢献したいと思っています。例えば、浜通り地域には多くの発電所が立地しているため、首都圏への送電網もあります。これを生かして、再生可能エネルギーの電気を都会に送れば、これまで地域外に電気代として流出していたお金が地域内で還元できます。特に電力事業は、制度が複雑で頻繁に変わっていきますので、そこに柔軟に対応しつつ、安定したビジネス基盤を築いていきたいと考えています。
また、個人的には新規事業も立ち上げたいと考えているので、大熊インキュベーションセンターの活動にも関わりながら、実証事業の誘致や立ち上げを、浜通りで行ってみたいと思っています。
福島・浜通りの自然や生活を満喫
大熊町に引っ越したのは、約9ヶ月前の2024年4月末です。町には、ジムがありますし、近隣のまちには温泉、図書館などの施設もあり、週末は、各地でイベントもあり楽しむことができます。JR大野駅前には、新しい図書館の開設も予定されていることも楽しみです。食生活については、夜はほとんどの店が開いておらず、近隣への買い物も車で数十分はかかるため、自炊を中心にしています。特に地元の魚介類が安く手に入ることは、このエリアの魅力で、浪江の漁港には、新鮮な魚を購入しに行くことがよくあります。
都会と比較して田舎ならではの人脈やネットワークにも興味がありますので、今後は移住者間のコミュニティにも参加していきたいと思っています。
移住を考えている方へのメッセージ
私はアメリカの生活も長かったですが、アメリカはマンハッタンなどの大都会を除けば、週1回で車で買い出しにいって自炊したり、地域が提供する住民用施設(ゴルフ場やスケート場などの施設が多数ある)を楽しむというのが生活スタイルでした。自炊や一人暮らしができる方なら、大熊での生活を楽しめるのではと思います。大熊町に対しては、移住者が楽しめる施設や取組が不足しているので、もっと増やして欲しいなと思います。
また、私は単身赴任で大熊に移住しているので、大熊町と家族がいる大阪を行き来するのですが、これまでと違う環境や人脈を広げるというのも、なかなかいいものです。40代、50代の方で、田舎暮らしも経験してみたい方、ぜひ大熊に足を運んでいただき、ここでの暮らしを想像してもらえればと思います。
※この記事は「おおくまStyle」より転載しております